第494話

 上からはナビィの大斧の一撃がアイシクルドラゴンの首に振り下ろされ、下からはプルンが大量の剣から繰り出す斬撃がアイシクルドラゴンの首を切り刻んでいく。


 そしてアイシクルドラゴンの首はナビィとプルンの攻撃により切り落とされると、両断された首から大量の血液が雨の様に雪原に降り注ぎ、雪原に積もっていた雪は赤く染まって行った。


 「血がもったいない!ヒスイ!!」


 『落ちる前に回収するね!!』


 世界樹の棒に注いだ魔力を使用して降り注いでいるアイシクルドラゴンの血液を魔法で回収しながら、手伝いにヒスイの名前を呼んでアイシクルドラゴンの血液の回収を手伝ってもらう。


 そうして魔法で集めたアイシクルドラゴンの血液を完全に凍り付く前にアイテムボックスの中に収納した。


 表面が凍っていたから思ったよりも簡単にアイテムボックスに収納出来たな。


 未だに血液が両断された首から出ていたアイシクルドラゴンをハルトはアイテムボックスに回収すると、散らばった鱗などの回収を全員に指示を出して回収していく。


 そうして一通り回収するべき物を回収すると、ハルトたちはアイシクルドラゴンが棲家にしていた洞窟前で合流する。


 「洞窟の中に入るぞ。アイシクルドラゴンが棲家にしていたから、他のモンスターは居ないだろうが、それでも警戒してくれ。」


 「光源は私が魔法で出します。」


 「頼む、ナビィ。」


 ハルトも一応新鮮な空気の確保を魔法を使って行ないながらアイシクルドラゴンの棲家の洞窟へと入って行った。


 洞窟内に入ると、この洞窟には氷結晶が洞窟の壁や天井に大量に生えており、どの氷結晶もナビィが言うには高品質の物ばかりだと言う。


 他にも採掘ポイントや冷気の中で育つ植物の回収をしながら、アイシクルドラゴンが寝床にしているだろう大きな広場にたどり着く。


 五十メートルサイズのアイシクルドラゴンが寝れる場所だからか、この広場は半径二百メートルはあるだろう。


 しかも大量の氷結晶が生えており、光源に照らされて青色に光り輝いてとても綺麗だ。


 あの小高い丘の下にはこんな幻想的な場所が広がっていたのかと思うと同時に、この場所の魔力濃度は魔力の源泉がこの場所だからか物凄く濃い。


 流石に世界樹の迷宮の深層には及ばないがそれでも五十階層のボス部屋くらいの魔力濃度の場所だろう。


 一先ずハルトたちはこの場所を拠点として今後活動する事を決めると、全員で拠点作りを行なっていく。


 一時間ほどで拠点を作り上げると、この場所を調べる為にナビィの指示の元で全員がバラバラに動き出した。


 周りに影響を及ぼさずに採集可能な素材はその場でアイテムボックスに回収し、採掘ポイントの目星を付けながらアイシクルドラゴンの寝床を探索していると、ナビィから全員に向かって念話が届いた。


 「ナビィ、何があった。一体、どうしたんだ?」


 「ミルクが凄い物を発見しました。それを皆さんに見て貰おうと思い呼んだんです。」


 ミルクがスキル魔力腕を使用して抱えている大きな卵がナビィが見せたい物なのだろう。


 「その大きな卵のことだろう?それは何なんだ?」


 予想ではこの場所を棲家にしていてモンスターであるアイシクルドラゴンの卵だと思うのだが、それで正解なのだろうか?


 「これはアイシクルドラゴンの卵です。それも受精卵ですよ。鑑定で調べた事ですが、産まれるまであと一週間と言うところですね。」


 「一週間……それでその卵はどうするんだ?俺と契約させるのか?」


 「そのつもりです。ドラゴン系モンスターですから強くなりますよ。」


 今のハルトたちなら簡単に倒すことが出来たアイシクルドラゴンだったが、世界樹の迷宮を攻略する前だったのなら倒すのも気温や地形などもあって不可能に近かっただろう。


 そのアイシクルドラゴンの子供ならきっと強くなるはずだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る