第492話

 洞窟の坑道内と広場を土魔法を使用して固める事で落盤や崩落の予防が終わると、ハルトたちは魔法で発見した採掘ポイントで採掘を始めた。


 幾つも採掘ポイントがある為、採掘用のゴーレムを総動員するだけでなく、ヒスイたちにも魔法を使用してもらい採掘を行なっていく。


 そうして採掘を開始して一時間ほどで、この洞窟内の採掘ポイントは全て掘り終えた。


 この洞窟内の採掘ポイントで採掘した素材は、ラマーリャ山脈特有の鉱石はなかったが、それでも気温の低く氷属性魔力が豊富な場所でしか採掘出来ない素材も集まり、ハルトは他の洞窟も探しに向かう事にする。


 出来ればラマーリャ山脈特有の素材がないかと、それから幾つもの洞窟を周り、洞窟を棲家にしていたモンスターを倒し、採取可能な素材を採取して、採掘ポイントで採掘を行なっていく。


 そんな生活を一週間ほど行なった頃には、雪崩で露出していた洞窟の大半が積もった雪で姿を隠しており、ハルトたちもラマーリャ山脈特有の素材も幾つか手に入れる事が出来ていた。


 「じゃあ明日はアイシクルドラゴンを倒しに行こうか。」


 「分かりました。アイシクルドラゴンの説明をしますか?」


 「そうしてくれ。情報があった方が素材を傷付けずにアイシクルドラゴンを倒せるかも知れないからな。」


 整えられた拠点でナビィからアイシクルドラゴンの情報を説明してもらう。


 アイシクルドラゴンは氷属性のドラゴン系モンスターだ。攻撃方法は体当たり、爪撃、噛み付き、尾撃、氷柱ブレス、飛行して広範囲氷柱ブレス、翼を羽ばたき雪を撒き散らして目隠しなどを行なってくる。


 弱点属性は火属性と雷属性が弱点になっており、アイシクルドラゴンに良く効くが、火属性攻撃をアイシクルドラゴンに行なう場合は素材の価値を下がるので使用は厳禁だそうだ。


 他にもアイシクルドラゴンが行なって来ることのある行動パターンなどを、ナビィから教えて貰い、この日は眠るまでアイシクルドラゴン戦の作戦会議を行なった。


 そして翌日、ハルトたちは雪山の麓を目指してミルクに騎乗して一気に雪山の急勾配を急降下して行く。


 アイシクルドラゴンの棲家のある小高い雪山を目指して進み、道中で現れるモンスターを倒しながら、ハルトたちは目的のアイシクルドラゴンが棲む洞窟の近くまでやって来る。


 「まずは誘き寄せるところからだな。俺は準備をするから辺りの警戒はみんなに任せたぞ。」


 ハルトは辺りの警戒を全て従魔のヒスイたちやナビィに任せると、事前に昨夜から準備をしていた物をアイテムボックスから取り出していく。


 食欲が湧くように加工された大量の肉を準備すると、ハルトは洞窟内へと煙や匂いが向かう様に肉を仕掛ける。


 「みんな、肉を焼いていくぞ。他のモンスターがこっちに来ない様にするけど、モンスターが万が一向かって来たら、アイシクルドラゴンとの戦いに邪魔になるからすぐに倒してくれ。」


 全員に確認を取ってから、ハルトは大量の肉の塊に向かって火魔法で肉を焼いていく。


 煙や食欲の湧く匂いが立つが、その匂いや煙を拡散させない様に魔法でしながら、全ての匂いや煙をアイシクルドラゴンの棲家の中へ向けて流し込んで行った。


 そうしてアイシクルドラゴンの棲家に肉の匂いや煙を送ってから数分後、洞窟内から物音が立ち始めて来る。


 「向かって来ているな。」


 「もう良いでしょう。肉は処分して匂いを浄化魔法で綺麗にしましょう。」


 「そうだな。みんな、移動の準備をしてくれ。」


 ハルトは匂いや煙を魔法を操作して一部の場所に止めて拡散しない様にしながら、匂いの元である肉を処分する。


 これでもう肉から匂いが放たれる事はなくなったタイミングで、下り坂の洞窟内からアイシクルドラゴンがこちらへと向かって来ているのが視認出来た。



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