第465話
「そう言う冒険者は一定数いるからな。はっきり言うと私としては国王に会って欲しい。」
「何故ですか?」
国王に会うなんて面倒な事が起こりそうな気がする事はしたくはない。けれど、会う理由は聞いておかないと不味いだろう。
「Sランク冒険者に国から推薦してもらう為だよ。Sランク冒険者の数は少ない。なるべくならSランクになって欲しい。」
「それですか。冒険者ギルドだけの評価だけじゃSランクには成れませんか?推薦状もありますけど。」
「それには幾つかの国の冒険者ギルドに認められる必要がある。それよりも国から推薦して貰う方が早くSランクになれる。それでどうする?」
今のAランクの特権でも充分だと思うけど、Sランクになれば貴族関係の面倒はどうにでも出来る可能性があるし、本当にどうしたもんかな。
『Aランク冒険者でも充分ですからね。Sランク冒険者を目指すのかはハルトに任せます。それに国王と会うのならマナーも必要になるとは思いますが、冒険者が相手なのですからそこまでとやかく言われないと思いますよ。』
ナビィに念話を送って相談するが、ナビィからはハルトに任せると言う事だった。
「やっぱり国王に会うのは止めておきます。面倒な事態になるかも知れないですから。」
「そう、か。それは残念だ。」
「話はこれで終わりですか?」
「いやまだある。こちらは必ず受けて欲しい依頼だ。受けない場合はペナルティがあると思ってくれ。」
また王族や貴族に関係する事になる話なのかと内心で嫌な気分になるが、続いて告げられた事に意識を変える事になる。
「魔境の一つラマーリャ山脈を知っているね。」
「知っています。かなり大きな魔境ですよね。」
最初に暮らしていた町から見えていた大きく一年中真っ白に染まっていた山脈がラマーリャ山脈だ。
ナビィから聞いた情報によると氷点下が普通にマイナスになるほどに低い気温の魔境だと聞いている。
「そのラマーリャ山脈がどうしたんですか?」
「スタンピードが起こる。ラマーリャ山脈は大きいからね。倒すモンスターの数が少ないとスタンピードがすぐに起きるんだ。」
「そんなに起きるんですか?」
国自体が対処しないといけない問題だろう。そんなにスタンピードが起こるのなら。一体、どれくらいの規模と頻度でスタンピードが起こるのだろうか?
「五年に一度のペースで起こる。ギルドだけじゃなく、国でも対策してこの頻度なんだ。既にスタンピードの兆候もあり、今年の十二月か来年の一月が終わるまでの間に起こると予測されている。」
対策して五年に一度なのか。もし対策していなかったのなら、どれくらいの頻度で起こるんだ。
「規模を聞いても?」
「最低でも一万匹はいると思ってくれ。強さは最高でもAランクのモンスターであるブリザードワイバーンだな。アースドラゴンを倒せるのなら問題はないだろう。」
「(ナビィ、ブリザードワイバーンはどれくらいの強さだ?)」
『レベルにもよりますが、ハルトたちなら簡単に倒せる雑魚モンスターですよ。』
「(まあ、今の俺たちが倒せない様な、それほど強いモンスターが早々に現れる訳がないか。)」
ナビィが言うのならブリザードワイバーンがどれだけ居ても倒せるモンスターなんだろう。
それならこの依頼で一番の問題は寒さだな。寒さの対策をしっかりとしておく必要はありそうだ。
「分かりました。その依頼を受けます。それで、十二月になるまでにたどり着ける場所なんですか?」
「イガルマから王都まで来た手段を使えば問題なくたどり着ける。今回の依頼の依頼書を作成するから、今回の依頼に向かう町と周囲の情報を覚えてくれ。」
そう言ってガンナからラマーリャ山脈の情報とスタンピードの被害に遭う町クロームの情報が書かれた資料を受け取った。
ハルトは受け取った資料を読みながらナビィと相談をしていく。
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