第462話

 「はぁ、ナビィ、俺は冒険者ギルドにこの事を伝えるから冒険者ギルドの前で待っていてくれ。」


 「分かりました。」


 なんでこうも相手の強さも分からない馬鹿な連中に絡まれないと行けないのか。そんな風に思いながらハルトは冒険者ギルドの受け付けで先ほどあった事を伝えると、冒険者ギルドの前で待たせていたナビィたちと合流して従魔も泊まれる宿屋へと向かった。


 向かった宿屋は前回も泊まった大樹の枝と言う宿屋だ。丁度部屋に空きがあったので、その部屋を借りる事にした。


 そして翌日、ハルトは一人で冒険者ギルドへと向かい、冒険者ギルドの中に入る。すると、冒険者ギルド内に居た冒険者たちから視線が向けられたのを感じる。


 なんだと思って周りを見渡すと、こちらを見ていたと思われる冒険者たちは視線を突如晒し始めた。


 そんな反応の冒険者たちに疑問を持ちながらも、ハルトは今回の目的を果たす為に二階の受け付けに向かう。


 「依頼の事で来たんだけど、何処に向かえば良いんだ?」


 「ギルド長室に向かいます。行きましょう、ハルトさん。」


 昨日の受け付けを担当してくれた受付嬢のイリーアに連れられてハルトはギルド長室へと案内される。


 「それにしても昨日は大変だったんですよ!」


 「ん?何がだ?」


 「何がって!あれだけ失禁や脱糞している冒険者が居たんですよ!片付けもしないで逃げる漏らした冒険者がどれだけ居た事か!!あれを片付けるのに冒険者ギルドの職員だって手伝わされたのに!!」


 「ああ、あれか。」


 昨日のナビィと宿屋に向かう前に絡んで来た弱い冒険者たちの事を言われて思い出す。


 「それを俺に言われても困るぞ。絡んで来たから威圧しただけであんな事になるほど弱い連中だとは思わなかった。」


 「はぁ、アースドラゴンを倒したハルトさんに敵う相手なんて居ませんよ!」


 それはそうだと納得する。でも加減した威圧スキルであんな風になるなんてどれだけ弱い冒険者だったのだろうか。


 そんな風に話している間にギルド長室にたどり着き、今回の王都までアースドラゴンの素材を運ぶ依頼の話をする前に、ギルド長のガエルからもイリーアと同じ様な事をハルトは言われるのだった。


 「脱線してしまったの。それでは本命の依頼の話じゃ。」


 「それで、どのルートで運べば良いんだ?」


 この土属性の世界樹の木の周りにある都市イガルマからドワーフの国ガンミーアの王都まで行けるルートは複数ある。


 その内のどのルートを通るかに依って、色々と今後のスケジュールが変わって来るだろう。


 「王都まできちんと届けるのならどのルートでも構わん。だが、今年は雪が降るのも早くての。どのルートも雪が凄い事になっておる。」


 「そうか。まあ何とかなるとは思う。とにかく十一月が終わる前には王都まで届けられるよ。」


 「そうしてくれると冒険者ギルドとしては助かる。運んで貰うアースドラゴンの素材を持ってこよう。」


 そう言ってギルド長のガエルはギルド長室の中にある大きな金庫を操作して金庫の扉を開いた。


 開いた金庫の中から一つの袋を取り出したガエルは、その袋の中から昨日ハルトが納品したアースドラゴンの素材を取り出していく。


 どうやらあの袋は収納袋だった様だ。収納袋から取り出された梱包されたアースドラゴンの素材を、ハルトは自身のアイテムボックスの中に収納する。


 「では頼んだぞ。」


 「はい。王都まで無事に運びます。」


 冒険者ギルドで行なう事はこれで終わってギルド長室を出た。


 「ハルトさん、依頼頑張ってくださいね。」


 「もちろん頑張りますよ。イリーアさんも受け付け頑張ってくださいね。」


 二階の受け付けでイリーアと別れたハルトは冒険者ギルドに用はもう無いからと、また絡まれる前に足早に冒険者ギルドを後にするのだった。

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