第459話
魔道具の効果でいきなりサイズの縮んだミルクに、この場のハルトたち以外の全員が驚きの声を上がる。
「これで問題ないですか?」
「あ、ああ。問題ない。だが、街中で大きなサイズにはなるなよ。問題になるからな。」
「分かりました。みんな、行くぞ。」
こうしてハルトたちは門を潜ってイガルマの中に入るのだった。
イガルマの中に入っても視線は何故かハルトたちに向いている。その事が疑問に思い、隣を歩くナビィに聞いているが分からないそうだ。
ガイアドラゴン戦で使った様な防具は誰も身に着けていないし、武器もそれぞれのアイテムボックスに収納しているので、それでもないだろう。
疑問に思う中、それでもハルトたちは遮ぎり止める者は現れない為、ハルトたちは冒険者ギルドまでたどり着く。
「ナビィ、ヒスイたちを頼むな。流石に中にまで連れて行けないから。」
「分かりました。馬車の停車場で待つ事にします。」
「ああ、分かった。」
ハルト一人で冒険者ギルドの中に入ると、Aランク冒険者専用の受け付けのある二階に移動する。
「本日はどの様なご用件でしょうか?」
「ギルド長に会いたい。これを鑑定してくれれば、会いたい要件が分かるはずだ。」
「分かりました。」
ハルトはアイテムボックスからアースドラゴンの鱗を取り出して受け付けに置いた。
それを見て受付嬢は疑問に思ったのか、言われた通りに鑑定の魔道具を取りに向かい、アースドラゴンの鑑定を始めた。
「え、なっ!本物ぉ?!」
鑑定結果が分かった受付嬢のリアクションが二階のフロアに響く。その結果、数人の冒険者が興味本位で覗き見する始末だ。
「それでギルド長に会える様にしてくれるか?出来るのなら今すぐに。」
「わ、分かりました!!」
慌しく受け付けから離れる受付嬢を見送ると、ハルトはアイテムボックスの中にアースドラゴンの鱗を収納した。
「おい、お前!イリーアちゃんに何をしたんだよ!?」
「ん?さっきの受付嬢の人にギルド長との話が出来る様にして貰っただけだぞ。」
「うるせぇ!俺は冒険者クラン獣牙戦闘団の一員なんだぞ!?あんな驚き方は普通じゃねぇ!何をしたんだよ!!」
変な獣人の冒険者に絡まれたな。これがモンスターなら殺せば良いのに、人類だと殺したら問題になるからな。
早く受付嬢のイリーア?さんには、早く来てもらいたいところだ。こんな奴の相手はしたくない。
隣で騒ぎ散らす存在が鬱陶しくなり始めると、ハルトは自身の周りに結界を張った。これでうるさい冒険者の声を聞く必要はないと思っていると、その冒険者が腰に吊るした鞘から剣を振り抜いて結界を切り付けて来たのだ。
「はぁ、やっぱり頭の可笑しい奴だったか。本当に関わりたくないな。」
何度も何度も冒険者はハルトの張った結界を切り付けるが、結界にはそれほど大きなダメージはない。
騒ぎを見ていた他の冒険者もこの非常識な冒険者の行動に慌てた様子で止めに入るが、その冒険者が剣を振り回して威嚇している。
その為、不用意に近付けない状態で怒りと興奮で結界を切り付ける冒険者に誰も近寄らない。
そうして冒険者が一人で暴れていると、警備担当の職員が現れて男の周りを囲み始めた。
「強さ的には冒険者の方が警備員たちよりも上だな。取り押さえられるのか?」
そう思っていると、二階の階段から数人の冒険者たちが上がって来るのが見えた。
その冒険者たちの姿を見た職員たちが喜んでいるのを見ると、この意味の分からない冒険者よりも格上の冒険者なのだろう。
現にこの冒険者たちが現れてからは暴れていた冒険の尻尾が股の間に収まっている。
これで一件落着だなと思うが、まだ問題を起こした冒険者が近くに居る為、ハルトは結界を解く事なく騒動が収まるのを待った。
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