第363話
ハルトたちが五十階層での修行を始めてから十ヶ月経った頃、この五十階層にハルト以外の冒険者たちが現れた。
その冒険者たちを見たのは、長い間走って行動出来るように多くのモンスターに追いかけ回されながらも、五十階層中を走り回っている最中に遠目で見たのが最初だ。
まさか他にも冒険者が、それも百人は超えていると思われる団体が居るとは思わず、このまま大勢のモンスターたちを連れて行けば不味いと思い、ハルトたちはモンスターたちを片付けていく。
大勢のモンスターと戦うハルトたちの様子は威力の高い派手な魔法や爆発もあり、その冒険者たちもハルトたちに気付いて、モンスターたちとの戦闘が終わりアイテムボックスに収納している頃に、団体の中から少人数だけでハルトたちの元に冒険者たちはやって来た。
「素材を回収しているところ悪いが、ちょっと今良いか?」
「構いませんよ。(全員、警戒はしておけ。ナビィ、コイツらの強さはどれくらいだと思う。)」
『ハルトたちよりも格下ですね。それでもハルトに話しかけて来た男は最低でもレベル80はありますよ。』
年齢にして三十歳は行ってないこの獣人の男があの冒険者たちの団体では分からなくても、この少人数の中では一番強い冒険者のようだ。
他の冒険者たちも視界に入れて警戒をしながら、ハルトは会話をしていく。
「俺たちはクラン獣牙戦闘団の者です。俺は獣牙戦闘団一番隊隊長ムオール、Aランク冒険者だ。違うでしょうが、貴方に聞きたいのはモンスタートレインを我々に起こそうとしたのですか?それが俺たちは聞きたい。」
まあ、確かにあれだけのモンスターを引き連れて走っていれば、そう思われても仕方のないことなのかも知れない。
「いや、違うよ。(まあ、俺もあれだけのモンスターを引き連れていたら、そう疑うもんな。)」
「まあ、そうだろうね。遠目だろうと俺たちのことを見た後すぐにモンスターを倒し始めていたしね。それで君の名前は?」
「Aランク冒険者ハルトだ。」
それから少しの間、この獣牙戦闘団一番一番隊隊長ムオールと話しをしていく。
話す内容は何故お互い五十階層に居るのかと言う話になり、獣牙戦闘団はどうやら五十階層のボスモンスターであるアースドラゴンを倒しに来たようだ。
「アースドラゴンを倒せる算段が付いているのか?ここ数百年倒した記録が無いだろう?」
「それはあるさ!そうじゃなきゃ、ここまで来ないからね。」
自信満々に言うムオールにアースドラゴンを倒す手段とは一体どんな手段なのか気になるが、聞いても教えてはくれないだろう。
「(ナビィはどんな手段があると思う?)」
『分かりませんね。実際にその手段を見れれば分かると思いますが。』
「(まあ、流石に話を聞いてるだけじゃ分からないよな。)」
ムオールが詳しくアースドラゴンを倒す手段の方法を教えてくれるのなら、ナビィなら話を聞いただけで分かるかも知れないけど。
「それでハルトはなんで五十階層に居るんだい?他にも仲間が居るのかい?」
「強くなる為の修行だな。仲間は従魔たちが俺の仲間だ。」
「そうか。ハルトもそうだけど、ハルトの従魔たちも強そうだね。アースドラゴンとの戦いハルトも参加しないかい?」
笑顔でムオールにアースドラゴン戦に参加しないかを誘われる。
「(ナビィ、これどう思う?)」
『参加しない方が良いと思います。ハルトたちの強さを当てにしているようにも思われますから。』
「(そうだよな。囮にしたりとかはしない可能性もあるけど。もし、アースドラゴンを倒しても素材や宝箱のアイテムのこともあるし断ろう。)止めておくよ。」
「そうか。それは残念だ。まあ、戦うのはアースドラゴンだからな。仕方ない。」
ムオールたちと別れたハルトたちは倒したモンスターをすべて回収して、この場を離れて警戒しながら遠回りをして拠点に帰り始める。
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