第329話

 「このまま待っていても鉄拳猿武は死ぬだろうけど、ここはミルクの経験値にでもなって貰うか。ミルク、鉄拳猿武を動けないように拘束するから鉄拳猿武を倒しちゃってくれ。」


 『僕が倒すのかモー!?良いのかモー?』


 「一番ミルクが弱いからな。強くなる為に倒してくれ。みんなも良いだろう?」


 『いいよ!』


 『ぼくもいいよー!』


 『構わないわぁ。』


 『じゃあ、僕が鉄拳猿武を倒すモー!ハルト様、拘束をお願いするモー!』


 「分かった。ナビィ、瀕死の鉄拳猿武が死なないように拘束するサポートを頼む。」


 『分かりました。動けないよう、死なないようにちょうど良く拘束しますね。』


 ハルトはナビィのサポートを受けて発動した木属性魔法の拘束は、未だに辛うじて生きているだけの鉄拳猿武を拘束していく。


 「ミルク、拘束が終わった。突撃してそのまま倒しちゃってくれ。」


 『行ってくるモー!!』


 ミルクは頷き地面を蹴ると、これからどんな目に遭わされるのかが分かった様子の拘束された鉄拳猿武へと突撃する。


 そして、ミルクは鉄拳猿武へと向かうと、そのまま鉄拳猿武に突撃を食らわして弾き吹き飛ばしていく。


 突撃を受けた影響で壊れた拘束から転がり落ちた鉄拳猿武は一切の身動きをしていなかった。


 「倒せたみたいだな。宝箱も現れたし。ミルク!宝箱の前に集合だ!!」


 鉄拳猿武を必ず倒す為か、勢いが良すぎたせいでハルトたちとの距離が大きく開いたミルクにハルトは聞こえるように声を上げると、ハルトたちは現れた宝箱へと移動を始めた。


 宝箱への移動の途中で落ちていた鉄拳猿武の両腕と鉄拳猿武の本体をアイテムボックスに仕舞うと、宝箱の前でミルクと合流した。


 『ハルト様!階段を見つけましたモー!』


 「ミルクが行き過ぎた先にあったのか!探さなくて良くなったな。ありがとう、ミルク。」


 「モー。」


 お礼を言って撫でると、ミルクは気持ちよさそうに念話を使わずに鳴き声をあげた。


 『ハルト!はやくたからばこをあけようよ!』


 『ぼくもー!なにがはいってるのかー!きになるなー!』


 ヒスイとプルンが急かすように宝箱を開けるように言う為、ミルクを撫でるのを止めて宝箱を開ける為、宝箱の蓋に手を掛ける。


 それからハルトたちは二十階層ボスの鉄拳猿武を倒した報酬の宝箱を開けて中を確かめる。


 宝箱の中に入っていたのはツルハシが一本入っていま。


 「ナビィ、これは?」


 『石破壊のツルハシですね。土や石などの物を破壊する際に効果を発揮するツルハシです。土や石以外には突き刺さることはありませんが、その代わりに簡単に土や石を掘ることが出来ますよ。今後の採掘に役に立ちますね!』


 「それならミスリル鉱石を集めるのに使えそうだな!これは売らずに取って置こう。」


 『そうですね!もし売るのならかなりの値段で取り引きされる品物ですよ。一応は使う際には気を付けておくのが良さそうです。』


 「そうするよ。ミルク、階段に案内してくれ。」


 『分かったモー。こっちだモー!』


 アイテムボックスに石破壊のツルハシを収納したハルトは、ミルクに二十一階層に続く階段のある場所まで案内して貰った。


 そして、ハルトたちは二十一階層へと向かって階段を降りて行き、二十一階層に着くとその場所は岩がゴロゴロとある山の中にハルトたちは到着した。


 『あの山の中腹に階段があります。この階層にはドラゴン系モンスターのワイバーンが現れますから気を付けてくださいね。』


 「空からの攻撃には注意しないとな。ワイバーンは火の玉を吐いたりするらしいし。」


 『突撃にも注意が必要ですよ。それに尻尾には毒の棘がありますから、それにも注意です。』


 そんな話をしていると、遠くの空に何かが飛んでいるのが見えた。その何かはワイバーンだろう。そんなワイバーンの影はハルトたちの方ではなく別の方向へと飛んで行くのが見えるのだった。

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