第328話

 「プルン、行くぞ!」


 『ハルトおにいちゃん!置いてかないでねー!』


 全身の身体能力を強化するスキルをすべて制御することが可能な限界まで発動したハルトは、プルンと足並みを揃えて鉄拳猿武へと向かって行く。


 ハルトとプルンが鉄拳猿武へと接近しようと走り移動している間、ヒスイとコッコロにミルクの三匹と護衛のゴーレム二機から遠距離攻撃が鉄拳猿武へと放たれる。


 「ウッキィーーーーー!!!!!!!」


 ヒスイの水属性魔法の水弾、コッコロの卵爆弾、ミルクの石弾、二機のゴーレムが放った闇属性魔力の光線が鉄拳猿武を襲う。


 だが、鉄拳猿武の全身に濃密な魔力が溢れると、ガントレットのような腕に魔力が集まって行き、迫って来る攻撃の数々を受け流してしまう。


 それでも鉄拳猿武の足元を狙って投擲された卵爆弾が命中する。その瞬間に卵爆弾を蹴り返そうと鉄拳猿武は卵爆弾に足が触れると、すぐに卵爆弾は爆発を起こした。


 爆風はそこそこだったが、爆発と共に発生した雷撃の威力は鉄拳猿武を感電させて痺れさせる威力はあった。


 「ウギギギィィイ!!!!」


 「はぁああ!!!!!」


 感電して全身が痺れて動きが鈍っている鉄拳猿武にハルトは世界樹の棒に魔力を注ぎ、攻撃力と重量の増した一撃を鉄拳猿武に振るう。


 鉄拳猿武も痺れているものの硬い腕でハルトの一撃を防ごうとする。


 ゴガンッと硬い物同士がぶつかり合う音がして鉄拳猿武の頭部を狙った一撃は防がれてしまったが、ハルトが狙っていた本命は鉄拳猿武が防がせて、その腕に浸透して破壊する一撃を食らわせた。


 「ガァァァァアアアアア!!!!!!!」


 ハルトが入れた浸透する一撃は鉄拳猿武の腕に多大なダメージを与えた。


 『すきありだー!!』


 両腕をガードに使ったせいで腕の内部にダメージを受けて隙が出来た鉄拳猿武にプルンは接近して、使用する剣の数を四つに減らしたプルンの斬撃が鉄拳猿武を襲う。


 鉄拳猿武もそんなプルンの攻撃に気が付いている為、ダメージを多く受けている腕を使い三太刀は防げたが、残りの一太刀を足に受けて三分の一ほどザックリと切り裂いた。


 その際にハルトも世界樹の棒の先端を尖らせて鉄拳猿武の太ももに突き刺して足にダメージを与える。


 『ハルト、プルン。ヒスイたちの用意が出来たそうです。その場所から離れてください!』


 「分かった。プルン、離れるぞ!」


 『うん!あたったら、いたいもんねー!』


 プルンと一緒にハルトは鉄拳猿武から距離を取る。鉄拳猿武もそんな自身から距離を取り離れるハルトたちを見て、この場所に居たら危険だと思ったのか移動しようとするが、両足に受けたダメージのせいでいつもよりもタイミングが少し遅かった。


 そのせいで鉄拳猿武の足元から作り出された土と木の根が混じった物で拘束足を拘束され、頭上から落ちて来た複数の卵爆弾を頭部に受ける。


 頭部に落下した卵爆弾が爆発すると鉄拳猿武は雷撃と氷結の攻撃で身体の動きが止められる。


 それでも鉄拳猿武は自身の前に腕を交差させて次に自身に放たれる攻撃を防御する構えを取る。


 『これがヒスイのさいだいいりょくだよ!くらえぇぇ!!!!!!』


 ヒスイは砂珠の杖を掲げて、水属性魔法と土属性魔法を同時に発動すると、砂珠の杖の先端から粒子状の金属が混じったウォータージェットが行なわれ、ウォーターカッターが鉄拳猿武を襲った。


 コッコロとミルクの攻撃により動きが止められた鉄拳猿武に、ヒスイの放ったウォーターカッターは回避することは出来ず、鉄拳猿武は両腕をを真っ二つに両断され、更に身体を切り裂かれる。


 だが、両腕での防御もあったからか、鉄拳猿武は辛うじて生き残った。けれど、それも瀕死の状態でいつ死んでも可笑しくないダメージを鉄拳猿武は受けている。

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