第311話

 猛る牛の草原の魔力の源泉に拠点を作り過ごすこと、一週間ほど経った日。


 ハルトたちはその日もミルクカウを探しに拠点を中心に探していると、猛る牛の草原を探索してから始めてみる牛系モンスターと遭遇することになった。


 その牛系モンスターが現れたのは突然だった。いきなりハルトたちの前に魔力が集中して集まり出すと、かなりの濃度になった濃密な魔力が一カ所に集まって牛の形に変わって行く。


 そして、集まった牛の形の魔力が一瞬だけ光を放つと、そこに白と黒のホルスタイン柄の毛皮をした牛系モンスターが現れた。


 『珍しい現象です。モンスターが生成されるところを見れるとは、それにこのモンスターがミルクカウですよ。ハルト。』


 「これがミルクカウなのか。ヒスイ、プルン。水属性魔法の拘束でミルクカウを拘束してくれ。」


 『うん!わかった!』


 『うごけなくするよー!』


 ヒスイとプルンが協力して水属性魔法を発動すると、生成されたばかりで何も分からないミルクカウは全身を水の粘液に包まれる。


 頭だけを出した状態のミルクカウは、いきなりの拘束に驚きモーモーと鳴いているが、ヒスイとプルンが協力して発動した拘束を解くことは出来ない様子だった。


 『ハルト、今のうちに契約を!』


 「これからミルクカウと契約をするから、それまでの間は三匹で警戒をしておいてくれ。」


 三匹に周囲の契約を頼むと、ハルトは世界樹の棒に魔力を込めて行き、そしてミルクカウとの契約を行なった。


 ミルクカウを従魔にする為の契約には、それほどの時間も掛からずに行なうことが出来た。


 「お前の名前はミルクだ。それでいいか?」


 「もー!」


 『それで良いそうですよ。ハルト。これで牛乳飲み放題です!』


 新しく仲間になったミルクカウに名前を付けて、ハルトはヒスイたちにミルクの拘束を解くように言った。


 「ヒスイ、プルン。契約は終わったから拘束は解いてくれ。」


 『おわったの?じゃあ、こうそくおわるね!』


 『といちゃうよー!』


 ミルクを包み込んでいた水属性魔法の拘束が解かれると、ハルトたちはミルクを連れて拠点に帰る。


 『モンスターが来ますよ。攻撃準備をしてください。ミルクのことを気付いたのでしょうから。』


 「ミルクはさっき生まれたばかりだろう?それなのにこんなに早く気が付く物なのか?」


 『猛る牛の草原特有の物でしょう。ですけど、牛系モンスターたちはミルクの奪還をする為に襲ってきます。次の猛る牛の草原の主候補の一匹でしょうから。』


 「拠点に帰るまでの間、それなりにモンスターと戦いそうだな。ミルクを中央にして守りながら進むぞ。」


 ミルクを奪う為に周囲から集まる牛系モンスターたちを倒しながら進み、ハルトたちは拠点に到着した。


 『私はしばらくの間、この魔力の源泉での修行を提案します。』


 「構わないけど、どうしてだ?」


 『魔力の濃度が濃い場所の方がスキルの取得にもレベルアップにも良いですからね。』


 「それは知ってるぞ。ああ、だから今のうちにミルクのスキル取得をこの場所で済ませるってことか。」


 『はい、そうです。必要最低限のスキルの取得をしてから、次の町に向かいましょう。そこでミルクの従魔登録をしないといけませんから。』


 「ミルクには頑張って貰うか。」


 「もー?」


 ホルスタイン柄の毛皮を撫で、それからハルトとヒスイ、プルンは倒した牛系モンスターの解体を始め、コッコロとミルクはスキル取得やスキルのレベルアップの修行を開始した。


 解体や修行を夕食まで行なうと、夕食を全員で食べることになる。


 ミルクはどうやら肉類も食べられるようで、今日倒したばかりの牛系モンスターのお肉も薬草や野菜、果物と一緒に食べていた。


 ミルクはまだ念話を使えない為、ナビィに美味しいかを聞いたところ、特に霊草系の薬草が美味しかったそうだ。

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