第306話

 モーカウの町での情報収集から翌日になると、ハルトたちは魔境の猛る牛の草原へと向かって行く。


 モーカウの町から徒歩一時間ほどの場所にある猛る牛の草原に着いて、魔境の中を外から覗いて見ると点々としているが、牛系モンスターは群れを作って草を食べているようだった。


 『マザーミルクカウは一週間ほど前に、既に冒険者パーティーによって倒されているそうなので、主が居たであろう魔力の源泉に向かいましょう。』


 「ミルクカウが出現するのも魔境の奥の方らしいしな。じゃあ、出発しよう。」


 魔境猛る牛の草原に入る前に送還していた従魔たちを全員の召喚すると、ハルトたちは猛る牛の草原の探索を開始した。


 魔境との境界線に入ると、ハルトたちの入った場所から50メートルほどの猛る牛の草原に出現する牛系モンスターたちが一斉に食事を止めて、ハルトたちの方を見てきた。


 「これって気付かれてるな。」


 『広く視界が良いですしね。それでも近付かなければ襲われませんよ。ハルトたちがミルクカウを襲えば集まって来るでしょうが。』


 「まずは一番近くの群れと戦うか。牛系モンスターたちはレベルが格下だから、コッコロは閃光と爆音の卵を頼むぞ。肉が傷付くから威力は無しだからな。」


 『分かったわぁ。でもぉ、当たればバラバラになる威力の爆発を起こしたいわねぇ。』


 「食用や素材がいらないモンスターの時にそれはしてくれ。ヒスイは牛系モンスターの拘束を、プルンは剣でも魔法でも良いから動けない牛系モンスターのトドメを刺してくれ。」


 『うん!わかった!』


 『ザシュッと、きるよー!』


 事前にどうのような戦闘を行なう予定なのかを話すと、一番ハルトたちに近い牛系モンスターの群れと距離が近付いてきた。


 『あれは暴れ牛ですね。走るスピードはそれほど早くありませんが、力は強いので注意してください。』


 「分かった。じゃあ、コッコロ、卵を投げてくれ。」


 『分かったわぁ。そーれぇ!』


 ハルトたちの接近に気が付いて、一斉にハルトたちを観察していた暴れ牛の群れの前に卵が投げられると、暴れ牛たちの視界に入るタイミングで卵は破裂して周囲に閃光と爆音が起こった。


 「次はヒスイだ。俺も拘束するから、気を付けてくれ!プルンは拘束したら、急いでトドメを頼む!」


 『うん!』


 『わかったー!』


 次に卵から発生した閃光と爆音により混乱している暴れ牛たちを、ハルトとヒスイが魔法を使って拘束していく。


 ハルトが行なった暴れ牛の拘束は木属性魔法による拘束だった。


 地面から生えた蔓や蔦が牛の四肢や胴体に首や頭に絡まって拘束を行なった。


 ヒスイの場合は、アイテムボックスから取り出した砂珠の杖という土属性魔法を強化する杖を使って、地面から生えた土の腕で暴れ牛たちの四肢を掴んで拘束を行なう。


 ハルトとヒスイの魔法の拘束を受けた暴れ牛は我を失ったように暴れようとするが、拘束のせいで身動きを取れなかった。


 そんな身動きの取れない暴れ牛の群れにプルンはハルトたちよりも一足お先に向かっており、暴れ牛の首を切り落とし、頭部を貫通する威力の光属性と聖属性の複合魔法の光線でトドメを刺していった。


 「プルンが全匹倒し終わる前に合流して、俺たちも暴れ牛を倒しに向かうぞ!」


 『ヒスイもたおすよ!』


 『仕方ありませんねぇ。卵を使わずに倒しますぅ。』


 ハルトたちは、次々と暴れ牛にトドメを刺しているプルンの元へと急いで駆け出した。


 そして、ハルトたちがプルンと合流した頃には十四匹も居た暴れ牛の群れは、片手で数えられるほどだった。


 その為、合流してからハルトたちが倒した暴れ牛の数は暴れ牛一匹を倒すだけになった。


 暴れ牛は、どの個体も身体が大きいが全員のアイテムボックスに暴れ牛を収納していくようにハルトは指示を出した。

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