第301話

 ハルトたちがキングライオンの縄張りに侵入してから進んで行く。だが、その間にモンスターと一匹も遭遇することは無かった。


 「なぁ、モンスターと遭遇しないんだけど、可笑しくないか?」


 『そうですね。キングライオンの周りにはサバンナライオンの群れが居るので、ここまで静かなことは無い筈なのですが……。』


 周囲にモンスターが隠れ潜む気配すら無い中で、ハルトたちは魔境の獣王の縄張りの魔力の源泉がある地面から突き出た岩の丘を目指して進んで行く。


 「これは……。」


 『キングライオンではありませんね。』


 『あのくろいの、すごくつよいよ!』


 『ダンジョンのー、ボスくらいつよそー!』


 『爆破のしがいのあるモンスターですねぇ。』


 目指していた魔力の源泉のある岩の丘の頂上に真っ黒い毛皮を持つモンスターが佇み、ハルトたちを睨み付けていた。


 「グォオオオオオオオオオオ!!!!!」


 まだ相当距離が離れているのに聞こえる黒いモンスターの咆哮がハルトたちに聞こえて来た。


 『聞いてください!あれはブラックキングライオン。キングライオンの亜種モンスターです!キングライオンとの違いは群れや仲間を得ずに一匹で居ることです。ですが、能力はキングライオンを上回ります!レベルは62ですよ!』


 ナビィがあの黒いモンスターの説明をしている間に、ブラックキングライオンは岩の丘を飛び降りて、ハルトたちに向かって来る。


 「近付かれる前に少しでもダメージを与える!全員、遠距離攻撃開始だ!!」


 ブラックキングライオンの姿を見てすぐに戦闘準備を済ませていたハルトたちは、駆け寄り接近するブラックキングライオンに向かって一斉に遠距離攻撃を行なった。


 地面から突き出る木の根、高濃度の酸弾、複合魔法の光線、爆発と共に様々な効果を発揮する卵、二機のゴーレムから放たれる闇属性の光線。


 これらの攻撃をブラックキングライオンは魔力を含んだ咆哮を行ない、上体を起こして地面に魔力を込めた両足を思い切り叩き付けることで防いでみせた。


 咆哮と叩き付けた際に起こる振動はハルトたちの元にも届く中で、もう一度ブラックキングライオンにハルトたちは遠距離攻撃を行なった。


 続け様に行なわれた遠距離攻撃は見事にブラックキングライオンに命中する。


 だが、ブラックキングライオンの毛皮はキングライオンよりも魔法にも物理にも高い耐性があった為か、それほどダメージを受けている様子は無かった。


 『流石に同格なだけあってほとんど効きませんか。ここから接近戦になります!常にブラックキングライオンから意識を離さないようにしてください!』


 ハルトたちの遠距離攻撃が終わった後に、身体を震わせているブラックキングライオンを見ながら、ナビィの言う通りにブラックキングライオンを警戒しながら次の攻撃を行なえるように準備を行なう。


 ブラックキングライオンが接近戦をする距離に近寄る前に再度遠距離攻撃を行なえたがやはり、それほど大きなダメージをブラックキングライオンには与えられなかった。


 そして、いよいよブラックキングライオンとの接近戦が始まった。


 最初に先制攻撃を行なったのは、やはりブラックキングライオンの方だった。


 一番大きく目立つゴーレム三号機を狙ってブラックキングライオンは飛び掛かり押し倒そうとして来た。


 そんなブラックキングライオンを三号機サイズの大盾を使い、大盾を押し出すようにブラックキングライオンにぶつける。


 大盾がブラックキングライオンにぶつかると、すごい音が起こるが、そのあとすぐに金属を引っ掻く音が起こった。


 『大盾に爪痕の穴が空いてしまいましたか、これからは上手く使わないと駄目ですね。』


 そんなナビィの独り言だと思われる念話が聞こえたその後に、三号機は片手で大盾を持ち横に振るいブラックキングライオンを叩くと、空いたもう一方の腕を振るってブラックキングライオンの顔面を殴った。

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