第46話

 治癒の木から葉っぱの採取が取り終わりこの場所から離れようとした時後ろの方から錆びついたナイフを持ったゴブリンが茂みから飛び出してきた。飛び出したゴブリンは奇声をあげながら真っ直ぐにこちらに向かってくる


 「ッ……!」


 いきなりゴブリンに襲われて驚き叫びそうになったが気配感知を使用しながら警戒はしていたのでゴブリンのナイフでの刺突を避ける事はできた


 ゴブリンは勢いそのままに治癒の木に衝突して木をナイフや体当たりで傷つけたがゴブリン自体にそれ程の怪我はない


 そんなゴブリンに治癒の木の近くにいたヒスイが身体を伸ばし鞭の様にしながらゴブリンを叩く。叩かれたゴブリンからは身体を叩かれる音と酸で身体が溶ける音の両方が聞こえてきた


 ヒスイからの攻撃でゴブリンは身体の痛みで唸りヒスイを睨みつけた。自身に攻撃を仕掛けてきたスライムを睨みつけたゴブリンは手に持つ錆びたナイフを握りしめヒスイに襲い掛かりコアに向けてナイフを突き刺そうとした


 ゴブリンがヒスイに注意を向けている間に体勢を整え持っている世界樹の棒を硬化させてヒスイに狙いを集中させているゴブリンの頭目掛けて勢いよく振り抜く


 ゴブリンの頭が割れる音がしてゴブリンはそのまま弾かれる様に倒れ込んだ。頭が潰れたゴブリンに近づき棒で突くとゴブリンは死んだ様だ


 「ふぅ……いきなりで驚いたけど所詮はゴブリンだったな」


 『油断は駄目ですよ、ハルト。ゴブリン自体は上位種でもなければ弱いですけど集団で襲われたら今のハルト一人では余裕を持っての戦闘は出来ないと思いますよ』


 「油断はしないよ。それにしてもヒスイの攻撃はよかったな。ヒスイは物理での攻撃は得意じゃないのにゴブリンにそれなりのダメージを与えていたな。これもナビィが?」


 『はい、酸と合わせればダメージを上げる事が出来ますからね』


 話しながら俺はゴブリンの解体を行ないながら辺りの警戒をする。ヒスイも周りを警戒しているのか身体から触手を伸ばして俺の近くにいる


 『それで、ハルト。解体が終わったら傷ついた治癒の木を治してあげて欲しいのです。ここは魔境ですから何もしなくても回復していくとは思いますけど枯れる可能性がありますから』


 「木魔法でも使うのか?」


 『はい、少し生命属性の魔力も使いますが木魔法をメインに使います。魔力消費も世界樹の棒を使えばそこまでの消費はありませんからね』


 「魔力消費が少ないなら大丈夫そうだな。解体も終わったしやろうか」


 汚れを浄化魔法で綺麗にしてから治癒の木に向けて世界樹の棒を突きつける。治癒の木の傷が治っていくイメージをすると魔力を放出変換して魔法を使う


 魔力が治癒の木に流れ込み折れた場所やナイフが刺さり傷ついた場所が治っていく。刺された傷は埋まり折れた場所はそこから新しい枝が生え採取した葉っぱも新しく生えてきて白い花が咲いた


 「結構魔力を使っちゃったな」


 『ハルト!魔力の使いすぎです!そこまでの魔力は使わなくても治せましたよ』


 「どれくらい使えばいいのかわからなかったからな」


 『今のハルトの魔力量だったら一割くらいでよかったのに三割も使ったから花まで咲いているじゃないですか!』


 「まあ、それには驚いたけどなんで花が咲いたんだ?ナビィはわかるか」


 『わかりますよ、ハルトは治すイメージをする他にきっと成長するイメージをしてしまったからこんな風になったんでしょうね。そのままハルトがもっと魔力を注いでいたら果実も実ったでしょうからね。魔力はもう使っては駄目ですからね!』


 「流石にしないよ。せっかく葉っぱも新しく生えてきたしまた採取しようかな」


 『ゴブリンの死体を収納して浄化魔法で辺りの血の臭いを消してからにしてください。モンスターが近づいてきますからね。採取は花も採取してください』


 「わかった」


 急ぎ浄化魔法を使い辺りから血の臭いを消して解体したゴブリンを収納する。その後に治癒の木の葉っぱや花を丁寧に採取していく


 「これで最後だな。でもこんなに採取して大丈夫なのか?」


 『大丈夫ですよ。一週間くらいでまたそれなりの数を採取できるようになりますから』


 その場所から離れお腹が空くまで魔境の探索を続けていく。お腹が空いてきたら川に向かい魔境を出てから昼食の時間にする


 昼食は昨日買ってきた屋台のソーセージや串焼き、パンを牛乳を飲みながら食べていく


 「この牛乳も冷たい方が美味しいだろうな。ナビィ、冷やす魔法ってあるのか?」


 『ありますよ。それは氷魔法ですね。時間を掛ければ取得できると思います。冬場ならもっと早く取得できるでしょうね』


 「氷魔法か……それの取得も頑張らないとな」

 

 『そうですね』


 昼食を食べ終わり隣で先ほど採取した治癒の葉っぱなどの薬草を食べていたヒスイに警戒を頼むと午前中に倒したモンスターの解体を始めた。解体もだいぶ慣れてきたのか初めの頃に比べて解体の速度も上がり前よりも早く解体を終わらせた


 「もう少し魔境の探索をしてから今日は帰ろうか」


 『早くないですか?』


 「取得したい魔法がまだあるから優先はそっちをしたいからな。今の解体した物を売っても宿代くらいにはなるからな」


 ゴブリン森林を探索していき魔境の入った入り口まで着いて町に帰る。まだ太陽が沈む時間帯ではないからか冒険者たちの姿が見える


 町に近づく前に解体した物を入れた袋を収納から出して背負いかなりの量だから重くゆっくりと進んで町に入り解体場に向かう。この時間帯は待つ事なく順番が回ってきて直ぐにハンコが押された依頼書や買い取って貰った代金を貰い冒険者ギルドに向かう


 冒険者ギルドのセシリアのいる受け付けに向かい依頼書を渡して依頼報酬を受け取ると昨日はどうだったのかを聞いてきたので訓練所で訓練をした話をすることになった


 「なるほど訓練所を使っていたから昨日は依頼を受けていなかったんですね」

 

 「はい、今後は訓練所を使っての訓練をする日を増やそうかと思います」

 

 「ハルトさんは登録から毎日、依頼を受けたましたからね。休む日も作るといいと思いますよ」


 「大丈夫ですよ。健康ですから身体の疲れも直ぐに取れますから」


 後ろに人が並ぶまでの間セシリアと話をしてから冒険者ギルドを出て大熊亭に帰る。四の鐘が大熊亭に入る頃に鳴る中大熊亭に入り受け付けにいたサーシャに部屋の鍵を渡してもらい部屋に戻る


 浄化魔法を使い防具や身体を綺麗にして手入れしてから収納して椅子に座り一休みしているとヒスイがテーブルに飛び乗りプルプルと震えている


 『ヒスイは水魔法の練習をするそうですよ』


 「なら桶を出すか。どのサイズを出せばいい?」


 『中サイズの桶がいいそうです。私もヒスイにアドバイスでもしますかね』


 桶を出すとさっそくヒスイは中に入り魔力を水属性の魔力に変換して水魔法を使って水を出し始める


 その様子を魔力感知を使い観察していると魔力が水属性だけではなく生命属性の魔力も使っているのがわかったが何をしているのかはわからない


 「ヒスイは何をしているんだ、ナビィ」


 『傷の回復効果がある水を作り出そうとしています。上手くできれば少しの間ですが傷を治す水が出来ますね。ヒスイの今の能力ですと作ったら直ぐに使わないと効果はないでしょうしその効果も初級回復ポーションよりも効果はないですけどね』


 「水魔法も生命魔法も両方鍛えているのか、ヒスイは」


 『そうです』


 「休憩を終わりにして俺もやる事をやるか」


 俺は今日、採取した薬草の下処理を開始した。余った茎はヒスイの食事用にする為に収納してペーストを作っていく。生命草の下処理が全部終わりナビィに治癒の葉っぱについて聞く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る