第12話 意味わかんないんだけど

 次の日の朝、佐々木結愛から連絡が来て彩と話すことになった。彩から、結愛と何かあったのかといった内容の連絡もあったが、それも含めて会ったときに話すとメッセージを送った。


 1限から6限まで彩が俺に話しかけてくることはなかった。調子に関しては幾分かまともに振舞っているような印象を持ったが、あまりじろじろと見ることも憚られたので意識して視線は外していた。


 昼休みに、『放課後、駅まで一緒に帰ろう』とメッセージを送ると、『付き合ってた時にもそう言ってほしかったな』というメッセージが届いた。それに関しては素直に申し訳なさを感じた。


 放課後、俺は彼女が一人になったタイミングで彼女の元へ行き、行こう、と声をかけた。彼女は少し頷くと俺の隣を歩いた。


「あのさー、昨日結愛となんかあったの?結愛はヒナタから聞いてくれって言って何も話してくれないし、意味わかんないんだけど」


 廊下を出てからしばらくはお互いに無言だった。昇降口を降りて、高校の正門を出て数十メートル歩いたあたりで彼女がそう話しかけてきた。


「ああ、昨日彼女に呼び出されて少し話したんだ」


「結愛が?なんで?」


「……君のことが心配だったらしい。俺と会ったことを話したんだろう?だから俺に話を聞きたかったんだと言ってた」


 少しだけ間を開けて彼女にそう言った。彼女に佐々木のことを正直に話してしまってよいのか一瞬躊躇したが、嘘をつくとややこしくなると判断して正直に答えるべきだと判断した。


「何それ、意味わかんない」


 彩は不機嫌そうに少しそっぽを向いた。親友とヤリチン疑惑のある元カレが二人でいたことに何か思うことでもあるのだろう。それは彼女の立場で考えてみれば順当だと思った。


「彩はわかりやすいからな。この前会った後から明らかに調子が悪かっただろ」


「ああ、やっぱりばれてたのね。私、ほんと態度に出るからなー、自分が嫌になるわ」


 彼女の態度は、彼氏へのそれではなく友人へのそれに変化しているように感じられた。俺にとっては新鮮に感じられてよかったし、かえって話しやすい気がした。


「まあ、遠めに見てわかる程度にはな」


 そう言った後、彼女はふてくされたのか小さく口を膨らませた。俺と彼女はしばらく無言で歩いた。だが、沈黙はさほど苦痛ではなかった。


「で、どこ行く?」


 駅に着いたタイミングで彼女が俺にそう声をかけた。そういえば行き先を何も決めていなかったことを思い出した。


「俺はどこでもいいけど」


 気の利いたスポットが思いつくはずもなく、俺は彼女に判断を任せることにした。


「だったらさ、あたしの家の近くでもいい?」


 彩はすこし考えたそぶりを見せた後にそう言った。


「別に構わないが、何かあるのか?」


「何もないよ。早く帰りたい気分ってだけ」


 彼女の提案は俺にとって意外なものであったが、何も問題がなかったため快く承諾した。電車の到着を待つ間、彼女は単語帳を取り出して勉強を始めた。俺は黙ってスマホを取り出して、適当なSNSを確認した。電車に乗り込んで席に座っても、その状況は変わらなかった。


 彼女の最寄り駅は学校からみて俺の自宅の二つ手前の駅である。町の雰囲気としては、自分の住んでいる場所とさして変わらない平凡な住宅街だ。強いて言えばほんの少しだけこちらの町のほうが規模が大きいか。その程度だ。駅から少し坂を上ると、住宅地の空いたスペースにポツンとある小さな公園についた。


 公園は小さな滑り台とベンチがポツンとあるだけで、他に何もない。人もいない。俺と彼女はベンチに腰掛けた。公園自体は初めてであったものの、俺は彼女と交際していた時期にこの辺りを数回訪れたことがあり、彼女の家はこの公園からもう少し坂を上った場所にあったと記憶していた。


「……で、写真の子について、私の納得いく説明をしてくれるのね?」


 彼女がそう口にしたのはベンチに腰掛けて十数秒の空白の後だった。


「ああ、あれは俺だ。姉に頼まれて女装した。恥ずかしくて言えなかったんだ。すまない」


「…………」


 長い沈黙が走る。俺は隣にいる彩の顔を見ることができなかった。あまりに無言が続いたため、俺はおそるおそる彼女の方に横目を向けた。


 彩は例の写真と俺を交互に見比べては目をパチパチさせていた。


「えーーー!?」


 住宅街に彼女の声がこだました。




______


あとがき


 まず、ここまで読んでくださりありがとうございます。

 これから大学が始まるので更新が少し遅くなるかもしれませんが、気長に待っていただけると幸いです。(ここまでが授業開始前に書き溜めていた分でここからは未来の自分次第です)

 また、応援、コメント、星、フォローなどを頂けると大変励みになります。なにとぞよろしくお願いいたします。


 (書いてる途中にあらすじからずれてるような気がしたけどこっちのほうが面白そうだからいいかと思って書いてたら自分から告白する展開になってしまいました。ごめんなさい!!これからも読んでくれると嬉しいです。)


追記 タイトルとあらすじ変えました。



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