空飛ぶ円盤は虚実をないまぜに呑み込む

~日本の「語り継がれるふしぎ」を書き換えよう~というテーマに、このような応え方が存在すると誰が想像できただろう。

「天狗といえば空飛ぶ円盤であることは説明するまでもないだろう。」
という奇妙な一節で始まるこの小説は、読めば読むほどにその独特の奇妙さを増してゆき、異質な世界に取り残された孤独感さえ感じさせられるほどに我々を置き去りにする。

UFOという言葉と天狗という存在が入れ替わった奇妙なパラレルワールドのオカルト記事という体でつづられる文章は、時に完全なる嘘、時に歴史的な事実、時に事実に立脚した嘘……と、変幻自在にリアリティラインを変えながら、押し寄せてくるような独特の読みごたえがある。