第38話 黒いオルゴール

「黒いオルゴールがあるの」

「どんなオルゴール?」

「小さくて、真っ黒なの……」


 小さなオルゴールを開くと、美しくきれいな曲がかなでられる。


「先生、これあげる」

「あ……ありがとね」


 手製のオルゴールは、どこか歪んだ印象がある。そして黒い色をしていた。


 都市伝説でよくある怪奇現象が起きる話で、黒いオルゴールを聴いていると精神を失調して最後は……ありがちな話だ。


 生徒達が工作の授業でオルゴールを作り、生徒は自分の作品を持ち帰る。だけど一つだけ余っていた。誰が作ったのかもわからない。


(……まさかね)


 しばらく忘れていた。自分の部屋で見つけたのも偶然で、開くと曲が流れるが……曲が変調する。


(壊れてる……)


 閉じようとすると声が聞こえた。オルゴールがしゃべっている。


「○○先生はね、△△先生とね……」


 不倫の詳細を延々と語り出す。途中で気持ち悪くなり閉じた。不思議な事に、開くたびに別の話を聞ける、いつしかオルゴールを聴くのが楽しみになる。


「□□先生はね、生徒の××と……」


 私は警察に通報した。□□先生は捕まり私は満足する。生徒を守るのは先生の責任。だから今日もオルゴールを開く。


 ニュースで、あの先生が死んだ事を知る。自殺だった。


「かわいそうな先生」


 罪の意識なんて感じない、私はオルゴールを開くと


「□□先生はね、今あなたの後ろに……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る