第35話 会員制の粉雪
「会員制の粉雪よ」
「何の会員?」
「君と僕……」
深夜の初詣に、粉雪がひらひらと舞い落ちる。自分の事を僕という口癖は昔から変わらない。シュートヘアの少女は、見る角度で男の子に女の子にも見える。
「ひさしぶりね」
「仕事がいそがしくてね」
「約束を覚えている?」
子供の頃に雪山で迷った事がある。膝の深さまである新雪は、粉雪で真っ白だった。その新雪を踏み分けて歩くのが楽しかった、いつしか風が強くなると視界が無くなる。
「ここどこ……」
「どこの子?」
「神社の近くに住んでる」
真っ白な着物の子供は防寒もしていないのに寒そうには見えない。俺を家まで送ってくれた。その時に約束した、誓いの言葉。
「なつかしいね」
「君が迷っていた場所」
「すぐ人里だったんだ」
少女はあの時の年齢と変わらない、白い着物は真冬には似つかわしくない薄く白くまるで……
「もういいのね」
「もう疲れたからね」
「なら抱いてあげる」
朝日がキラキラと輝く平原で、都会から来た男が氷の柱を抱いている。顔は粉雪で真っ白だけど幸せそうだ。
「わたしをだきしめて」
氷の柱がつぶやいた気がする。
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