第30話 朝なのに、夕暮れの匂いがした。#ストーリーの種
外は暗い、雨が降る外は朝なのに、夕暮れの匂いがした。雷が鳴ると異臭が漂う。轟々と雨が降り続く、小屋の中も薄暗いままだ。昨日の獲物は足を伸ばして動かない。
「かなり暴れたな、傷だらけだ」
男は腕を見る。赤くミミズ腫れが出来ていた。男は野盗で襲えそうな小屋を見つけて楽しむことにした。彼は押し込み強盗だ。家人がいれば殺して金目の物を盗るが、山奥の小屋にあるわけもない。
「小娘は死んだか? 」
小屋には一人の娘しかいない、生きていれば売れると考えたが、連れて歩くのも難しい。情け容赦なく殺す事にした。小屋の中を探しても食い物は無い。腹を減らしながら外にも出られずに、雨が降り止むのを待つ。
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翌日も、その翌日も雨と雷が続いた。雨水だけでは腹が減る、野盗は娘の腕をつかむと鉈で切り落とした。もちろん食べるためだ。薪は大量にあるので、煮るのに不便は無い。娘の体を細かく刻んで全て鍋に入れた。腹もくちくなると眠くなる、野盗はそのまま炉端で横たわる。
戸が叩かれる音で目が覚めた、体を起こして引き戸を開けると男が立っている、人相が悪い男は宿を貸してくれと頼む。外は大雨だ、ずぶ濡れの男に突き飛ばされる。
野盗は炉端に転がる、自分の体に力が入らない。腕を見ると白くまるで少女のようだ、野盗は自分の着物の中を探る。愕然とする野盗に、外から来た男が襲いかかる。必死に抵抗するが首を絞められて暗闇の中に落ちた。
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「おとなしくしていれば…………命は助けてやったのに」
野盗が少女を見下ろす、もう息をしていない体をそのままにして、鍋の残りを食い始めた。外の雨は降り止まない、いつまでも降り続ける。
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