第20話 高く舞う

 曇天の昼は蒸し暑く汗がにじみ出る。巨大な処刑装置は木製の平衡錘投石機(トレビュシェット)で、城の中に石を打ち込める。元は攻城用の兵器で、今は処刑に使われる。私が捕らわれた時のドレスのままで投石用の台に乗る。死刑執行人が合図を待っている。


 死刑には様々な方法がある、石を投げる、首を切る、肉体を痛めつけて血を流させて殺す。一番ポピュラーなものは水死と墜落死だ。道具もいらないので簡単に死ぬ。敵国に捕らわれた私は見せしめで殺される。


 籠城している兵士に自分たちの姫が泣き叫び死ぬシーンを見せて戦意が無くなるか、逆に姫を助けるために門を開けるかもしれない。自暴自棄(じぼうじき)の兵士は倒すのは楽だ。


「発射! 」


 敵国の将軍が命令をすると、とてつもない勢いで私は空中に投げ出された。今こそ踊りで鍛えた私の妙技を見せられる、踊り方は宮廷の先生から習った。


「空を飛ぶように、まるで鳥のように」


 両手の縄は衝撃で切れたのか今は自由だ、くるくると立体的に回りながら美しい舞を見せる。味方も敵も見惚れたように投げ出された少女を凝視する。誰もがその踊りに感動した。


「良い舞だ……」


 王は弓をつがえると空高く舞う姫を射殺(いころ)した。王の命令で門が開けられると精密な舞のような陣形を使いながら敵を抹殺する。姫の舞はその国の宝として伝えられている。

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