第19話 闇遍路
「闇遍路って怖いよ」
お遍路は修行。神社仏閣を回り功徳を得る。闇遍路は逆だ、呪い打ちと呼ばれる恐ろしい儀式。凶悪な犯罪が行われた場所や呪われた塚を巡る。
「あいつは許さない! 」
怨嗟と呪いの言葉で恋人の裏切りを罵る。心変わりは仕方がない、二股も許そう、だが私が別れようとすると引き留めた、土下座をして泣いた。私をいつまでも縛る。貴重な時間が失われた、許さない。私はネットで調べた呪いの方法を試す。
その日から休日に闇遍路の場所を探す。グーグルマップで場所を特定して、そこの霊場まで、実際に行くとお願いする。
「彼を殺して」
呪う心は行動することで解消される、単純な話だ。私は何か月もかけて呪うことで気分は解消していた。
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「もういいかな? 」
「もしもし、俺なんだけど……よりを戻そうよ」
電話が来るとまた一緒に住みたいとか言い出す、呆れる以前に彼への愛情が戻っていた、彼への呪う心が浄化されていた、私は迎えの車が来ると乗ってしまう。
「本当に、ごめんよ」
「別にいいわ、それで相手はどうしたの? 」
しばらく彼は黙ったまま運転する、いつのまにか人里離れた場所だ、近くに湖が見える、ダムだ。彼は静かに停車させる。
「俺は怖いんだ……別れると言ったら闇遍路で呪うと脅された……」
私は一瞬、どきりとする。
「そんなことはさせたくない……だから……死ね! 」
助手席の私の首をしめる、殺してダムに落とす気だ。彼は私の行動をどこかで知ると、呪う相手を殺す事に決めた。
「た……たすけ…」
首をしめられながら窓の外を見ると、お遍路が車の中を見ている、一人ではない。何十人もいる。いきなりドアが開くと彼は外に連れ出されて……
「あ、ありがとう」
「わたしらは、どこにでもいるからね」
気が付くと、どこもお遍路だらけだ。日本で事件や事故が起きない場所は無い、闇の遍路からは逃げられない。
「彼氏を殺したからね、今度はあんたが誰かの願いをかなえるんだ」
私の手首をつかむ、私は泣き叫び、力の限り抵抗したが、強い呪いからは逃げられない。ずるずると闇に引きずり込まれる……
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