第18話 メガネ冠婚葬祭 (タイトル縛り枠)

 俺は暗闇に落ちる、無限に続く落下を体感しながら落ちる先に光が見える。出口だ。


「元気な男の子ですよ」

 俺は無難な人生を歩んでいる、郊外の一軒屋で二階に部屋を与えられた、メガネをかけた俺は、日本のどこにでもいる子供。虐待もされない、いじめも受けない、生活に困らないだけの給料を貰う両親は、いそがしいが俺を愛していた。


「A君は真面目よね」

 B子は俺が好きなのか、よく会話をした。幼なじみの彼女とは大学まで一緒に過ごし同棲をする。何も問題は無い。


 俺には悪い癖がある、殺人衝動だ。同棲中でSEXも不自由も無いが、獲物を狙いたくなる。だから帰宅中のOLを襲って殺した。逮捕されるまで、七人は殺した。刑事は不思議そうな顔をして、尋問する。


「なにが不満なんだ? 」

「――俺は俺なんだよ」


 俺にだって判らない。ブザーが鳴ると俺は覚醒する、処刑台の上で俺は身動きは取れない。


「冠婚葬祭メガネでも変わりませんか?」

「人生を何度でもやり直せるバーチャル催眠装置でも、彼は変化しません。百回は試しました」


 刑務官と科学者が俺を見ている。科学者が死刑囚の俺を見てニヤリと笑う。


「新しいダイブ体験があります、八大地獄です」

「どうせ死刑だ、自由にしてくれ」


 俺のつけているメガネが黒く濁る、暗闇の彼方に黒い炎が見えた………

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