第12話 願い

「うるせええな」

酒場で飲みながら外を見ると、なにやら宗教らしい。平和の祈りをしている。人が気分良く酒を飲んでいるのに辛気くさい。床にツバを吐く。


「そろそろ戦争だぞ、鎧の金具が大量に必要だ」

酒場では国から金が出るらしいと噂が立つ。みなが儲けようと必死だ。誰もが気分を高揚させる。敵を蹴散らしてやると笑う。誰もが平和なんて願っても意味が無い事を知っている。戦争が始まれば全員一丸となって戦えば勝てる。


「敵が来たぞ」

用意した武器を手に取ると勇んで村の前で準備をした。酒を飲む奴やカードでゲームする奴もいる。男達はゲームが好きだ。良い手札が来れば喜んだ。黒く禍々しい鎧の兵士が到来をすると男達は恐怖を感じる。勝てるわけがない。机上の敵を倒す行為とはまったく違う。対等なわけがない。力は数だ。


村にはもう誰も居ない。死骸を食う虫が這い回る。頭蓋骨に残っている肉を見つけると集まって食べ始めた。

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