糸が切れる瞬間

「なんのつもり?」


宮野さんは私 花風唄に聞いた。

まぁ当然の質問....

私が無理やり連れてきちゃったんだからね....


私は宮野さんに言えることは全部話した。

宮野さんはそんな私をじっと見ていた。





俺 小柳響は廊下に突っ立っていた

あの花風が俺を無視して宮野とどこかに

行っちまったんだから!

俺なんかしたか?

考えても分からない。

俺嫌われたか?

俺何かしたか?

考えても分からない。

でも本人に聞くしか....

そう思い俺は花風達が走り去った方へ

向かった。




「............そうだったの」

うん

「心が開ける友達がやっとできたと

思ったのにな〜」


宮野さんの表情は笑っているが目が笑っていない。


「ねぇ 私の事騙してたの?」

違うよ

「私の事騙してて楽しかった?」


宮野さんは怒鳴りながら涙を流してた。


「....なんであなたはいつも冷静なの?

いつもなんで偽りの笑顔でいるの?

なんであの時変装なんかしてたの?」

「....」


もし声が出るならば全て話したい。



ガラガラガラ

その時教室のドアが開いた。

小柳くんがそこに居た。


「やっと見つけた」


小柳くんは嬉しそうにこっちに近づいてきた。

お願い!来ないで!

そう言おうとしたけど言えない。

涙が溢れてきた。


「大丈夫?」


小柳くんは心配そうに近づいてくる。

小柳くんの心配の声が嫌だ。

今まで感じたことのない憎悪。



私は近づいて来た小柳くんを突き飛ばしてしまった。

小柳くんは驚いた顔をしていたけどそんなの知らない。

私は今まで書いたことのない雑な字でこう書いた。


『 私に近づかないで』


涙を流しながら小柳くんの顔を睨んだ。


「ごめん」


小柳くんはそう言い残して部屋を出てってしまった。







しばらく私はその場にしゃがみこんで

泣いていた。

そんな私を宮野さんは無表情で私の顔を見て私の隣に座っていた。

どのくらい泣いていたのだろう。

外は真っ暗で大雨だった。

おそらくそろそろ先生達が見回りに

来てしまう。

完全下校も過ぎただろう。

なのに宮野さんは隣にいてくれた。


「泣き止んだ?」


宮野さんが私の顔を覗き込んで言った。

私はコクッと頷いて下を見た。


「かっこよかったよ」


えっ?私は宮野さんに言われた言葉に疑問を持ち顔を見つめた。


「だって花風さん大人しい性格だから

あんまり強いこと言えなそうじゃん」


確かにそうだ。

でも以前の私だったらそうかもしれない。


私はなんであの時小柳くんに憎悪を抱いたのだろう。

なんか思い出したくない。


私は宮野さんにお礼をしようとペンを

持った時、宮野さんは立ち上がって


「バイバイ」


と言って教室をあとにした。


私は暗い廊下を歩いていた。

誰かが近くに来た。

誰だろう?

暗くてよく見えない。


「初めまして。花風唄ちゃん」


私は誰かは分からなかったがペコッと

お辞儀をしてその場を離れようとした。

だがそれを引き止めて


「ねぇ 花風唄ちゃん。

私は有井菜々子。名前だけでも覚えて

おいてね。」


と自己紹介した。

有井菜々子さん?どこかで聞いたことのあるような名前。

でも思い出せない。

私はもう1回お辞儀をしてからそこから走り去った。


その時どこかでなにかの糸が切れた音が

聞こえた。


私の携帯には姉からの何通もの着信が

入っていたが無視していつもとは逆の方向から歩いて帰っていった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る