唄と詩希
次の日の放課後
私花風唄と小宮野さんは旧校舎の音楽室にいた。
私と小柳くんが授業を抜け出した日の放課後は、先生に見つかった時すごく怒られてしまった。
話を戻して今なぜこの部屋にいるかというと理由は音楽の授業の時にあった。
「えー皆さん知っての通り11月11日に
音楽祭があります
そのため音楽祭が終わるまでは音楽の授業の時間は合唱練習です」
は〜最悪だ 苦手な歌を音楽の時間でもやるなんて....
俺 小柳響は思った。
「あっそうそうこのクラス伴奏者と指揮者決
めたのかしら?」
先生がそう言った瞬間少しざわついてからすぐに静かになった。
「えーと 伴奏者は....宮野だよな?」
「あっあぁ 宮野しかいない....」
「宮野さんがんばれー....」
「詩希ちゃんならいけるよ....」
クラス全員は宮野をちょっと引きぎ身で
推薦した。
まぁ理由は宮野が単純に怖いやつだからだ。
「宮野さんしかこのクラスピアノ弾けない
もんね」
先生はこの空気を何も分かってないのか 笑顔でそう言った。
「....じゃあ やります」
宮野も了承の返事をした。
....春風もピアノ弾けるのにな....
「先生、花風さんはどうするんですか?」
男子が言った。
「えっ?花風さん?」
「先生知らないの?花風さんが失声症なの」
「あっ そうなの 知らなかったわ
ごめんなさいね〜」
先生はまるで悪気がないように言った。
花風は知らなかったと言う言葉を聞いた 瞬間うつむいた。
ショックだったのだろうか?
合唱練習が始まった
「男子!ここ音違う!」
「ごめん〜」
「女子は声小さい!」
「男子より人数少ないんだからしょうがない
じゃない!」
「ここズレてる!」
「やる気あんの?」
「あるよ(怒)」
「もーやだー」
「これじゃあ1位取れないね〜」
合唱練習は地獄だ。
なぜならケンカが始まるからだ。
このクラスは合唱は苦手だ。
でも音楽祭へのやる気だけはどのクラス よりもすごい。
だが1人1人の音楽へのあり方が違う。
「おい 響」
「なんだよ」
「お前今歌ってたか?」
男子のパートリーダの 小山田 音 に言われ
ギクッとした。
俺は歌が苦手と言うより歌えない。
だからいつも口パクだった。
歌えるところは少し歌ってたけど....
「うん.... 歌ってたよ 」
「じゃあ今1人でここの音階歌ってみろよ」
うっやばい、ここは音も高くて俺じゃあ 歌えない。
でもやるしか..
「ア⤴︎︎︎ア⤵︎ ︎ア⤵︎ ︎ア⤴︎︎︎ア⤵︎ ︎ア⤴︎︎︎ア⤵︎ ︎」
歌った後辺りはしんっとなった。
「....お前やる気あんのか?」
うっ.... 小山田に言われ言い返せなくなってしまった。
色んなところから小さな笑い声が聞こえる。
「それに声も小さい 」
「....」
「まあまあ落ち着いて まだ時間もあるし」
先生がフォローしたが今この状況で言うのは空気が読めてない。
「私教室戻るね」
突然この状況を見ていた宮野が言った。
「おっおい」
1人の男子が声をかけたが無意味だった。
そして練習に参加できなくて隅に座って いた花風も出ていってしまった。
授業の終了チャイムがなった
みんなは無言で音楽室を出て先生も無言で外を見ていた。
私 花風唄は廊下を走っていた。
本当は廊下走っちゃいけないけど今だけ 許して!
私は宮野さんを追いかけていた。
理由は私にも分からない。
でも追いかけていた。
数十秒走ったところで宮野さんの姿を見つけた。
待って! と言いたいところだが声が出ないから肩を叩くしかない!
やっとのところで肩を叩いた。
宮野さんはびっくりして後ろを 振り返った。
「どうして あなたがここに!?」
謝りたかった
私はノートにそう書いた
「何の謝り?」
昨日のこと
「ふん 今更いいわよ.....」
どうして
「ドレミから追い出されたの」
私のせいだよね
「....そうね」
今までの宮野さんとは違った。
今は私のことが嫌いな人達サイドだ....。
なんで音楽室から出てったの?
「合唱練習嫌いなの....」
それは嘘だ と私は思った。
宮野さんは合唱嫌いじゃないよね
「嫌いよ 合唱」
嘘だよ
「なんでよ?」
だって自分で好きって言ってたじゃん!
「あなた....なんで....知ってるの....?」
宮野さんは驚いた顔で私を見た。
あっしまった!!と私は思った。
理由は放課後に小柳くんと会う少し前に
遡る。
私の家は 「静かに」が教訓の家だ。
うるさいことが嫌いな家族。
私以外は....
そのためピアノを弾くとうるさいと怒られてしまう。
そのため私は小学生の頃からピアノ教室で大好きなピアノを弾いていた。
しかし中学生の夏の終わりに引っ越すことが決まりピアノ教室をやめなければいけなかった。
でも家ではピアノを弾けない。
だから引っ越してからはこの中学校で 放課後ピアノを弾いている。
でもちょっと複雑な理由であまりみんなにピアノを弾けることがバレたくなかった。
だから変装をして....変装っていっても
前の学校の制服を着て髪型を変えてメイク するくらいだけど....
放課後空き教室にあるピアノを弾くことだけが私の楽しみだった。
ある日の放課後いつも通り空き教室に行くと誰かがいた。
私はサッと物陰の後ろに隠れた後その正体を見た。
私は目を見開いた。
そこに居たのはあの宮野さんだったからだ。
宮野さんってピアノ弾けたんだ....
「ねぇあなたそこで何してるの?」
突然宮野さんから声をかけられてビクッとしながらもちょっと顔を出した。
「あなた誰?」
当然だが私は変装?をしてたので宮野さんは私が誰か分からない。
でも声が出せないから何も言えない。
しばらくして
「はぁ〜 答える気がないんでしょ
まぁドレミのメンバーじゃなさそうだから
いっか」
....ドレミ? 何それ?
私は疑問符を浮かべながらもまあいっか
という結論になりそのまま突っ立っていた。
「で?なんの用かしら」
「....」
宮野さんのこんな怖い目を見たのは初めてだ。
いや....私以外にはこんな目をしていた気がする。
「....あなたピアノ弾きに来たの?」
「!」
私の目で分かったのかな?
私はめっちゃ頷いた。
「そう..じゃあ私はどくからいいわよ
弾いて」
「....」
私は行かないでという目をした。
「はぁ〜ここにいるわよ」
宮野さんはため息しながらも少し笑って 言った。
私がピアノを弾いた後宮野さんは少し 微笑んでから空き教室をあとにした。
次の日から私は空き教室に行くと毎日 宮野さんがいた。
何日か経つうちに私と宮野さんはお互いの演奏を聴きあうという関係になった。
そんなある日
「ねぇあなた名前は?」
私は答えられなかった。
宮野さんに本当の名前を言えるはずがない。
私は少し考えた後思いきって黒板に
『 ピクシー』
と書いて宮野さんの方を見て微笑んだ。
「そう」
宮野さんは何も質問せずに返答した。
意外だな....何も質問してこないなんて
私はそう思いながらピアノの椅子に座った。
宮野さんの演奏も聴いたあとふと私は思った。
私は宮野さんの曲を毎日聴いていたけど そういえばいつも同じ曲。
毎日テンポやリズムを変えてくるけど曲は同じ。
なんで?
そんなことを考えていると突然
「ねぇ あなたは合唱好き?」
宮野さんからの質問に私は何も答えられなかった。
だって歌えないから....
小学生の頃合唱する時はいつも口パクだった。
伴奏や指揮者という選択肢もあるが 指揮者はみんなの歌を合わせる 、
伴奏はみんなの基となるような演奏をしなければならない。
そんなの到底私には無理だ。
でもみんなの歌声を聴くのは好き。
だから合唱が好きなのか嫌いなのか分からない。
「私は好きよ」
そう言った宮野さんの目はとてもキラキラしていた。
そっか 私は心の中で笑顔で言った。
外は調度キラキラした太陽が沈むところ だった。
「これ 私たちだけの秘密だよ」
なんで隠すのかよく分からなかったが とりあえず頷いておいた。
という感じで宮野さんが合唱が好きということを知ったのだがここでボロを出してしますとは....
宮野さんは怪訝そうな顔で私を見ていた。
どうしよう....
私は思いきって本当のことを言おうといた時「おーい」と言う聞きなれた声が聞こえた。小柳くんだ。
タイミングは最悪。
私は何としても放課後のことを宮野さんに話さなければいけないと思い小柳くんを無視して宮野さんの手を引っ張って旧校舎の音楽室まで連れて行った。
ごめんと思いつつ小柳くんの声を無視して歩いた。
そんな3人の姿を有井菜々子は物陰から見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます