第14話

人の声と激しく揺さぶられてる振動で目が覚めた。

僕は確かまた施設の奴らに襲われて…

ここは、誰の車?

前にアイツらが乗ってる。外を見ているようだ。それにつられ、僕も見てみる。

すると、巨大な何かが暴れていた。

水が子供の時に見る悪夢のような顔をした巨大な男の像を浮かべて暴れているのだ。

「あれは…彩沙さん…?」

ロックを解除して車の外に出た。

「おい!まて!」

後ろから追いかけてくるが、捕まっていられない。

すると、水の巨人の手が後ろの追っ手を潰した。正確に言えば水の中に入り、溺れさせていた。

あぁ、彼女の受けた苦しみもこんなもんじゃなかったんだろうな。

そんなことを考えながらも、走る。病院へ、彼女の元へ一直線に。

坂道へ差し掛かると、先生が立っていた巨大な大砲?のようなものを横に置いて。

少し嫌な予感がする。

「おう!来たか!よかった、説明するから早くこん中入れ!」

「え、え、?」

僕の命日は今日かもしれない。

「いいか、よく聞け。暴走したやつの対処方法は何がいいか知ってるか?」

「え、えと、よく見るのは火槍とか、火を使って水を少しずつ減らしてるけど…」

「いいか、一番手っ取り早い方法は″本体″を取り除くことだ!水の化け物ったって急所はある!

そこにいるんだ!」

「ちょっとまてよ!!!!僕、これでうち飛ばされるの!!?死ぬよね!これ、死ぬよね!」

「大丈夫だ!たぶん死なない程度の火薬だから!落ちないように紐も足に括りつけといたから!」

おわった。

「行ってこおおぉぉぉおおおおい!!!!!」

「死にたくなああぁぁああぁああああい!!!」

ドンッッ!!!!

「ぎゃああぁぁぁぁぁああああああ」

打ち飛ばされ、一瞬気を失いそうになったけど、なんとか気を保てた。

急所はどこだ。水…人型…

人間が確実に致命傷になる所…一番大事なところ…

心臓?

心臓の方を探してみると、

いた。

彩沙さんはうずくまって水の中にいる。

まってて。彩沙さん。

ひとりにしない。

「彩沙さん!!!!!」

ビクッと肩を震わせ、こちらを見る。

「夕大…!」

勢いよく水の中へ飛び込む。

彩沙さんの方へ手を伸ばす。

「きて!!」

「……っ!」

手を取り合った瞬間、足の紐が引っ張られ、水の中からずるっと抜ける。

彼女のからだと共に水飛沫が飛び、青空に反射した。

その瞬間、

人型を保っていた水が一斉に流れ落ちた。

「夕大!夕大!!怖かった、二度と会えないって思ってっ、ずっと、怖かったっ…」

「大丈夫…ずっとそばに居る…っひとりにしない。僕達は一人じゃない!」

彼女が落ちないように抱えながら紐に掴まる。

倒れた鉄骨に引っかかり、その反動でビルの中へと突っ込んでいく。


僕らは、なんとか生き延びた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る