第11話
彼は、どうして私の前からいなくなったの?
考えても分からない。私の浴衣、メイクを見て可愛いって。照れながらも言ってくれた。
水族館にも行ったことない私を想って、
魚のオブジェクトで私に見せてくれた。
自暴自棄になって、この世を去ろうとしても彼は止めてくれた。
なのに、なんで?
私が何かした?いや、何もしてないでしょ。
おかしい。
一人で病院へ戻った。誰もいない。暗い。
さみしい。
どうして、私の力になるって、一緒にいるって
言ったくせに。
病室へ戻ると、電気が点いていた。そして見覚えのある男性がいた。あれは確か、シロが言ってた″先生″?
「君!シロと一緒じゃなかったのか!?」
「え、えと…途中から居なくなって…。」
「消えたのか!?」
「は、はい。」
何を焦っているんだろう。
「くそっ。油断した!電話にも出ない!!」
急いで″先生″が出ていこうとするので、咄嗟に聞いた。
「あのっ!シロは、彼はどうしたんですか!」
ピタッと一瞬止まり、
「…シロは研究施設に誘拐された。」
そう言い残し、足早に出ていった。
どういう事…。誘拐って…研究施設って…。
一人取り残された私は、数値が上がりすぎていることに気付かず、異常な上がり具合で気絶していた。
くそっ!くそくそっ!!失態だ、油断した!
俺がもっと上手く隠していれば!
もっと早く帰るように言い聞かせてれいれば!
今あいつが施設に戻ったのなら、もう実験台にされているかもしれない。
なぜばれた。赤子の顔と成長した顔なんて見分けが付きにくいだろう。
くそっ!
昔の記憶を頼りに森の中を進んでいく。
あぁ、思い出す。あの子を抱えて逃げてきた
あの時を。
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