第10話
気が付くと、白い天井を見ていた。
え、…どこ?
頭では思うが、体が起きようとしない。
いや、起きれない。
すると、見知らぬ誰かが覗き込んできた。
「起きたようですね。」
起きたようですけど。誰ですか。
「私たちずっと君の事を探してたんですよ。逃げ出した馬鹿が君の事を匿っていたようですが。」
え、なんで…。逃げ出した馬鹿って…先生?
いや確かに先生は馬鹿だけど。
「覚えてませんか?まぁ無理はない。生まれて間もない時だったからな。」
どういう事だ。段々意識がはっきりしてきた。
大方こいつらが薬か何か打ち込んだのだろう。
生憎僕も彩沙さんと同じ薬が効きにくい体質だ。
逃げるなら、こいつらが入ってきた様な左の扉。恐らく外からロックできるものだろう。
今を逃せばずっと閉じ込められるかもしれない。
逃げなきゃ。
変な奴らが振り返り、部屋を出ていこうとした時、背中をそのまま思い切り蹴飛ばし、扉へ一目散に走り抜け、扉を閉めてロックをかけた。
「ふぅっ…ふっ…。なんなんだよっ!!」
訳が分からない状況のまま逃げなくてはいけないという考えが重なり頭がバンクしそうだ。
右の通路からは足音や話し声が聞こえる。
とりあえず見つからないように出口を探すしかない。
それにしても、どこもかしこも白い。病院や研究施設のような、どこか異様な雰囲気だ。
そして、窓がない。
不気味すぎる。
…まぁいい。早く出なくては。
「おい!被検体が脱走してるぞ!!」
くそ、見つかった!てか、僕の事を被検体って…。
とりあえず走るしかない。
…まずい。結構走ったが、エレベーターやら階段が見つからない。このまま走るといずれ突き当たりに着く。
ふと、横にダッシュボードの様なものが見えた。
「衣服以外入れるな」という張り紙もある。
これは…ここにいる奴らの服を回収するためのものか?考えてる暇もなく、迷いなくそこに突っ込む。下へ落ちると、大きいカゴのような所へ落ちた。クッションがあり、自分の身が安全だということに一安心した。
しかし、息をついてる暇はない。ここは洗濯場のようだ。そして辺りを見回すと、1つ窓があった。外に少し出られるようだ。大きいので、恐らく洗ったものを干すためのものだろう。
好都合だ。
チャンスは一度。大きな音を一回でも出せば気付かれるだろう。
後ろへ大きく下がり、助走を付け、思い切り飛び込む。一応割れたが、破片が腕に刺さり、頬にかすり、血が滲む。痛いが、音を出してしまってるので、立ち止まれない。
二階から一階へ落ちた時の足の痛みは一生忘れないだろう。
走らなくては。
この森を抜けるまで。
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