第9話
少し早く着いてしまった。
一緒に病院から行けばいいのに、なぜか8時に神社の入口で集合することになった。
そわそわしながら待っていると、目の前に女の子が、彩沙さんが立っていた。
「ごめんね、ちょっと待たせた。」
…吃驚した…。病気のこともあるし、普通の服で来ると思ってた。
だけど、僕の目の前にはちょっとレトロだけど華やかな花柄の浴衣を着てメイクをした彼女が立っていた。
「……ぁ」
息をするのも忘れて見惚れてしまっていた。
「全然待ってないよ…ほんと、待ってない…。」
口篭る僕を彼女が至近距離で覗き込む。
やめてくれ、オーバーキルだから…。
「…変かな。」
「!!全然!めっちゃ似合ってるよ!!か…わいぃと思うよ…。」
しまった、口が滑った。
暫くの沈黙の後、何とか口を開いた。
「行こっか…始まっちゃう。」
「あ、うん。そだね。」
暫く歩き、神社を抜けると川沿いに出た。
どこも人がいっぱいで身動きが取りにくい。
「ごめん、今日はいつもより人が…」
疲れているだろうと彼女の方を向くと、星を見るかのようなキラキラした目をしていた。
「彩沙さん、疲れてないの?」
「え?疲れないよ!人がこんなにいるのもこんなに賑やかなのも初めて見た!今までこうゆう場所来たこと無かったから…!」
そうか、刺激を受けやすいから今までこんな場所来たことなかったんだな…。
先生が彩沙さん用に作った効きやすい薬もあるし、一応僕もいるし、今日は大丈夫だろう。
「いつ始まるかなぁ〜!」
子供のようにワクワクしてる彩沙さんが可愛い過ぎて悶える僕。かなりシュール。
『…本日はお越し頂き、ありがとうございます。
間もなく花火大会を開始致します。…』
放送が終わると同時に花火が打ち上がった。
夜空に一斉に咲く花々はとても綺麗で儚く散る姿も美しく、見惚れていた。
時間を忘れてずっと空を見つめていた。
(ずっと夢見ていた。こんな綺麗な花火をこんなに間近で見れる日を…)
私は1つ叶えられた夢と、夜空の花をうっとりと見ていた。
『…これにて、花火大会を終了致します。…』
あっという間に終わってしまった。
でも、とても満足だ。
「楽しかったね。」
そう言おうとして横に振り向くと、
彼の姿は無かった。
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