第7話
この前のサプライズ、割と成功したんじゃないか?めっちゃ笑ってたし!
そんな事を考えながら歩くと、すれ違う人にガン見される。そりゃあそうだ。1人でニヤニヤしながら歩く人間なんて、気持ち悪いだろう。
でも止められない。
今日は7週目の仕事。前回が成功したおかげで今日は足が軽い。そのせいで予定よりも早く来てしまった。
扉を開け、またあの可愛い笑顔が見られて。
いつものように談笑する。
今日は彼女から質問があった。
「ねぇ、シロはさ、私みたいな悩みとかある?」
「ん?」
「だから、その…私みたいな身体の性質…とか、病気とか…そういう悩みとかないの?」
「……」
「あ、いや言いたくないなら言わなくていいから。」
「いや、言うよ。彩沙さんだって苦しんでる事を言ってくれてるのに、僕が僕の弱さを出さずに一方的に聞くのって、なんかフェアじゃないよね。」
「…うん。」
「…僕ね、昔から水と抑制剤が無くても問題がないんだ。」
「…ぇ」
やっぱり、言うべきじゃないか?でも、これが僕の弱さなんだ。
「僕は、感情を出しても暴走する事はないし、そのおかげで水分を消費することも無い。」
「…………」
「でもね、僕昔から感情が顔に出なくて、薬も水も要らないくせにお前はなんで感情がないんだって気味悪がられて、みんなから距離を置かれてたんだ。」
「…そっか。水も薬も要らなくても、君は、ずっと苦しかったんだね。」
…彼女の顔が見れない。思い出したくなかった記憶を思い起こして、初めて誰かに話した。
今きっとひどい顔をしてる。
「…私はさ、最初、君が薬も水が要らないって聞いて正直羨ましかった。なんで苦しい思いを一切せずに生きられるんだろうって。でも、話してくれてありがとう。」
彼女は僕を抱き寄せてこう続けた。
「私たちは、みんな悩みを持ってる。どうしようも無い。幸せになりたいってどれだけ足掻いても、神様は私たちを無視することがある。
でもさ、今こうして私たちが出会えて、話せて、笑いあえて。それだけで、いいと思わない?」
ギュッと力を込めて、涙声で彼女は続ける。
「私、今幸せだよ。だから、私が君を私と同じくらい幸せにするから。一人じゃないから。」
そう言って、彼女はずっと泣いていた。
僕は、堪えてたものが溢れていることに気付かないまま、
「ぅん…うんっ…ありがとう…。」
自分の声が震えている事で自分が泣いていることに気付いた。
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