第4話

あれから一週間がたったな。あの日のことを忘れててくれないかな…。いや、ないか。

ゆっくり扉を開けて入っていくと、彼女と目が合う。不覚にもその時の笑顔にドキッとしてしまう。

「おはようございます。」

「おはよー…てかこんにちはじゃない?お昼だし」

「あ、そっか」

「てか、敬語もなし!この前はめっちゃタメ口だったじゃん!これからはタメ口ね!敬語言ったら罰金だから!」

「…わかったよ。」

「今日は何するの?暴走計画始めちゃう?」

「…まぁそれは一旦置いといて…。僕の仕事は一応カウンセリングだから…。」

「あ〜そっか。」

(やっべ。カウンセリングとか言ったけどなに話せばいいか分かんねー…)

「えっと…悩みとか…ある…の?」

「なにそれwこの間のやり取りからしてこの世界に不満持ってるの一目瞭然じゃんw」

「えと…それ以外は…?」

「ん〜…。そうだなぁ、親とか?」

「え、まさかお母さん?」

「違う違う、お父さん。私、小さい時虐待されてたんだ。だから、基本的にお母さん以外の大人は嫌い。自分の理由でなんでもかんでも押し付けて。本当に嫌いだよ。」

だから他のカウンセラーにも心を開かなかったのか…

「あれ、でも最初僕にペットボトル投げつけたよね。同世代の人も苦手?」

「いや、あれはただ…。ムカついただけ。」

「え」

「私みたいに恵まれないことなんかないんだろうなって思ったら無意識に投げてた…。ごめん。」

「僕も、恵まれてなかったよ。」

彩沙さんがこちらに向き直して、じっと目を見る

「僕…親に捨てられたんだ。行く場所もなくて、孤児院にたどり着いた。でも、そこの環境も最悪で、ずっと虐められてた。そしたら運良く先生が引き取ってくれたんだ。″助手″が欲しかったとか最悪な理由だったけどね」

「…ごめん。屋上の時。不自由ないとか。無神経なこと言ってた。」

「いいんだよ。辛かったって事は分かるから。」

「…っ優しすぎ!きもい!」

とがばっと布団に潜り込んでしまった。

優しすぎるときもいと思われるのか。なるほどなるほど…泣いた。

しかし、他のカウンセラーには心を開いてなかったのに、親の話を聞けたのは心を開いてるってことかな…。じゃあ、順調って事だな!!

2回目の仕事、心は開いてくれたようだが、きもい発言を夜中思い出し、枕を濡らした。

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