第3話

今日は彼女との初めての仕事だ。正直凄く不安。だってペットボトル投げつけられたし。

だってペットボトル投げつけられたし!!

不安を織り交ぜながら部屋の扉を開けると、彼女の姿がない。

「あれ…どこいったんだ…?」

看護師さんに聞いても分からないと言われ、仕事を投げ出す訳にもいかないので、院内を探し回った。

まったく見つけられないので、もう放棄しちゃおう。と思い、屋上へ風に当たりに行くと、立ち入り禁止の文字と、半開きのドア。

あ、これ誰かが定期的に入ってるやつだ…

と思いつつ、自分も入っていく。すると、緩くウェーブのかかった髪が風になびいていた。

彩沙さんだ…ここで何してるんだ…声をかけようとしたとき、彩沙さんが手すりに手を掛けて、身を乗り出した。僕は思わず言った。

「死ぬの?」

彩沙さんは、濁った水のような眼でこちらを向いた。

「…だめ?」

「…え。」

「だから、だめなの?死んじゃだめ?生きてる方が苦しいのに」

「…いや、だめじゃないよ。」

僕に「だめ」と言われると思っていただろう彩沙さんは少し目を見開いた。

「…いいよね。君は。私みたいに薬と機械に囲まれずに生きれて。不自由なく暮らせるでしょ。」

「……彩沙さんに何がわかるって言うの。」

彩沙さんははっとしたように口を抑えてヘラッと笑い、

「ごめんね、こうゆう性格なんだ。でも安心してよ。もうちょっとで君の前から居なくなるから。」

「ちょっと待ってよ!!」

「え、なに。」

「勿体なくない!?」

少し間が空いて、

「…は?」

と彩沙さんは混乱していた。

「えっと、なに?」

「だから、勿体ないよ!彩沙さんはまだ1回も暴走してないでしょ?彩沙さんはこの世界に不満を持ってるのに、大人しく死んでいくの?

それ、ほんっっとうに不憫じゃない!?」

ポカンとしていた彩沙さんは、ふっと笑いだし、

「あははっ!君、意味わからんけど、面白い人だね!確かに、1回くらい暴れないと勿体ないよね!」

この前ペットボトルを投げつけた時の氷のような冷たい目とはちがい、弾けるように笑った笑顔と青空がマッチしすぎて、思わず惚れてしまいそうになった。これがギャップ萌えか。

そんな僕の考えをよそに、彼女はキラキラした笑顔で

「じゃあ、一緒に計画してよ。」

「え」

「″え″て。そっちから言い出したんだから、一緒に計画しなよね。これで共犯だから。」

…言わなきゃよかった。

一回目の仕事、テロの計画を誘導してしまうが、依頼主の自殺は阻止。

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