第43話 アスベルの3分(以上かかる)クッキング

キッチンへと向かったアスベルは老婆から水色のエプロンを借りると早速調理を開始する。といっても料理未経験のアスベルは老婆から指示をされながら料理を進めていく。


「まずは野菜と肉を切っておくれ」


老婆は料理に使う野菜の名を言うとアスベルはそれにあわせて野菜の入った箱からそれらを取り出す。取り出したのは人参に似たキャロルテ、じゃがいもに似たカルトフェ、玉葱に似たオニョニア、にんにくに似たチスノイクという野菜である。そしてウィンナーを取り出す。

取り出した野菜とウィンナーを切り、細かくすると暖めていた鍋ににんにくとオリーブオイルを入れ、炒める。


「香りがたってきたね。それじゃあさっき切った野菜とウィンナーを入れなさい」


老婆の言葉にアスベルは素直に従い、調理を続けていく。それから老婆の指示を受けながら試行錯誤し、やっとのことでアスベル作のミネストローネが完成した。空腹を誘う匂いが鼻孔を通り抜け、アスベルは腹を鳴らす。


「それじゃあ食べようかね」


「はい! 」


アスベルは首を勢いよく振りながら返事すると近くの棚から食器を取り出す。人数分の食器とミネストローネが入った鍋を机に並べるとアスベルと老婆はそれぞれ座る。アスベルは皿にミネストローネを並々に注いでもらうと「いただきます」と唱え、食べ始めた。


「ん! 美味しい! 」


アスベルは自分で作ったものだと分かっていながらもあまりの美味しさに声をあげる。その様子に老婆も気になっている様子だった。


「どれどれ。……おや、確かに美味しいね。坊や、料理を作るのに向いているんじゃないかい」


「そうですか? でも今回はお婆さんがいてくれたお陰ですし……」


そんな会話を続けながらアスベルはミネストローネを食べ進めていく。この様子だとどうやら依頼のことなど忘れているようだ。

そんなアスベルに老婆が話を切り出す。


「そういえば坊や。あんた、この森に何しに来たんだい? 」


その言葉にアスベルのミネストローネを食べる手が止まる。するとみるみるうちに顔が青ざめ出した。老婆はアスベルの様子に首を傾げた。


「や、ばい……。偃月茸えんげつだけまだ見つけてないんだった……! 」


「偃月茸? 」


「半月みたいな形をした茸を探してて……。まずい、こうしちゃいられない! 」


アスベルは急いで立ち上がると老婆に頭をさげた。


「すみません、僕もう行きます! ミネストローネ、ご馳走さまでした! 」


そして偃月茸を探し、とっくに日の暮れた外へと飛び出そうとする。しかしそれを止めたのは老婆であった。


「ちょっと待ちなさい」


老婆の声が聞こえ、アスベルは立ち止まる。急いでいるがここで聞こえなかったフリはできない。


「はい、何でしょうか……!」


「偃月茸がほしいんだろ? だったらわしについてきな」


老婆の言葉にアスベルは戸惑ったがおとなしく老婆についていくことにした。

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