それがどうしてこうなるんだろう
結局、私は隆宏といっしょにセントーサ島に遊びに来てしまった。
島と言ってもここは市街地からほど近くて、モノレールで二十分とかからない。橋がかかっていて、陸続きになっているのだ。隆宏がここで過ごすのに一泊するのを提案してきて、私がびっくりしたのにはこういった理由がある。というわけで、冷静な話し合いの末、私たちはこうして日帰りで遊びに来ているのだ。
セントーサ島にある水族館は世界でも有数の大きさで、多くの人が訪れる観光名所だ。巨大な水槽の中で泳ぐジンベエザメ。優雅に水中を漂うマンタ。大空を飛ぶ鳥のように、悠々と泳いでいるエイ。ただでさえ珍しい魚がたくさんいて飽きさせないのに、いろいろな生き物と出会えるような趣向が凝らされている。子どもも大人もみんな夢中になって、海の生き物の世界を堪能できるのだ。
そして隆宏にとって重要なことは、この水族館はクラゲのコレクションで有名だ。
「わぁ、見て! すごく大きい!」
大きな水槽の中を泳ぐ巨大なマンボウのような魚を眺めながら私は叫ぶ。
向こうの巨大な水槽の中には数え切れないほどのたくさんの小さなクラゲが漂っていて幻想的な世界が広がっている。隆宏は水槽を指さしながら私にクラゲの説明を始める。
隆宏の声が心地よい響きになって私に伝わる。
「あそこにいるのが傘の大きさが10cmくらいの小型のヤツがミズクラゲです。それから、あっちのは6cmほどあってちょっと大きくて珍しいですね、アンドンクラゲです。それで向こうのやつは―――」
クラゲの話をしているときの隆宏の顔は輝いている。本当にクラゲが好きなんだとわかる。とても楽しそうに話している。
「へぇー。そうなんですか」
私は感心して聞いている。
ふいに隆宏の手が私の手に重なった。隆宏の手が熱い。私もドキドキしている。
二人で手を繋いでいるけれど、周りには誰もいない。でもちょっと恥ずかしい。私はまわりの様子を気にしている。
「ねえヒロ君、あなたはどうしてそんなにクラゲに詳しいの」
「僕は昔からクラゲが好きだったんですよ。小学校の頃なんかクラゲを飼ったりもしました」
「そうなの! じゃあクラゲの研究者になりたいとか思ったことはないのかしら」
「ああ、それは。仕事となれば話は別で」
「そうかしら。好きなことを仕事にできれば幸せだと思うけれど」
「うーん。カナさん、クラゲの研究でどうやって食べていけばいいのか僕にはわからなかったんですよ」
「そうか。まぁそうなのかしら」
「はい。好きだけでは仕事にはなりません」
水族館の近くで遅いランチを食べる。食事を味わうのもそこそこに、私と隆宏は二人とも無言で立ち上がって歩き始めた。それが当然のことみたいに、手をつないで歩いて行く。
行き先は、近くにあるホテルの一室。ベッドがあって、シャワーもあって、休憩することもできる場所。
ドアの鍵を閉めると、私は隆宏に抱きついて唇にキスをして舌を入れた。隆宏は私の舌の動きに応えるように優しく応えてくれる。私達は何度も角度を変えて、お互いに舌を絡ませ合う。お互いの唾液が混じり合い、口から溢れ出す。
あの雨宿りの日のプラトニックなキスは、数週間もたたないうちに、こんなにも激しいものになっていた。
「ヒロ君……」
言葉にならない吐息を漏らす。私はもう一度、隆宏の唇に自分の唇を押しつける。
隆宏の手が私の胸に伸びる。彼が服の上から私の胸の膨らみを確かめるように触れる。手つきがいやらしい。
「ちょっと待って。服、脱ぐから」
私はそう言うと、ブラウスのボタンを外して胸元をはだけさせる。
黒いレースのハーフカップブラ。私の重たいバストを下から持ち上げるように支えている。
われながら美しい胸元だ。色はほどよく白く、張りのある形の良い乳房はつややかで、鈍く柔らかく揺れている。
隆宏の目は私の乳房に釘付けになっている。隆宏に喜んでもらいたくて、この高価でデリケートな下着を今日も私は身につけている。
「いいのよ、触っても。遠慮しないで」
隆宏は無言でうなずくと、まず確かめるように私の左胸に手を置いて、そっと触れる。それから、左手で右胸を包むように軽く握る。そうやって、しばらくやわらかさを味わった後、今度は両手を両方の胸の下に置いて、支えるようにして持ち上げる。
ゆっくりとした動きで胸の形が変わる。
「どう?重たいでしょ」
隆宏は返事をせずに、私の胸の重みと柔らかさを手のひらに感じて、ただじっと手の中の感触を楽しんでいる。
「そのままキスして」
言われるままに隆宏はデコルテに軽くキスをして、それから私の胸の谷間に顔を埋める。隆宏の荒い呼吸が肌をくすぐる。
隆宏は胸の匂いを嗅いでいる。谷間に鼻を近づけて顔を埋めたまま動かなくなる。私は隆宏の頭を抱いて、ペットの頭を撫でるように、やさしく髪を撫でる。
私は隆宏が愛おしくてたまらない。もっと甘えさせてあげたくなる。
隆宏の頭をぎゅっと抱きしめると、私は隆宏を仰向けに寝かせて馬乗りになる。隆宏の着ている白いシャツを胸の上までまくり上げると、隆宏の胸板に自分の胸のふくらみを当てる。隆宏の鼓動が速いのがわかる。
私は隆宏のズボンのベルトに手をかける。隆宏は目を閉じて、かすかに震えている。
手を使って愛撫すると、ものの数回で隆宏は果てた。私は隆宏の吐き出したものをタオルで拭きとる。
隆宏は仰向けに寝転んでいる。目隠しをするように顔に腕を当てて、上の方を向いたまま動かない。肩がわずかに上下している。恥ずかしいのだろうか。彼はこちらの方を向くことなく、私が拭くのに任せている。
私たちはどうして、ただほっぺにキスしているだけではいられないんだろう。タオルについた粘液を見て、これは隆宏が流した涙なのかもしれないと私は思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます