炎天
ケー/恵陽
炎天
夏の暑さにうんざりする。燦々と降り注ぐ日差しは凄まじいとしか言い様がない。
年々凶悪になっていく気候にどうすりゃいいんだ、と神も仏もいないのか、と呻る。
でも――、
「でも、そう言いながら外に出るんだよなあ」
「夏なんだから、外に出ないともったいないじゃん」
「あたしは家の中、冷房の中でゆっくりしてるのも好きだよ」
涼しい家の中でアイスを食べながらのんびり音楽を聴いたり、本を読んだりするのも楽しいものだ。
「そうだな。かき氷をかっこんで頭がキーンとなる、とかな」
そうそう。あれも夏だ。
「でもな、夏なんだからやっぱり日差しを浴びたいんだよ。暑いし、死にそう、とか思ってもいるけど、やっぱ出ないと、こう、なんか……!」
わきわきと手を動かす彼に、あたしは笑うしかない。
「夏だからね」
「そ、そう! 夏だからさ!」
「夏大好きだもんね」
夏というだけでテンションが上がる彼は眩しい。夏の太陽のように底抜けに明るくて、こちらの体力を奪っていく。けれどそれが夏だ。そして彼なのだ。
暑苦しくて、でもなくなると物足りない。暑さが過ぎれば心地よくも感じるものだ。
そうだ、夏が来たのだ。
炎天 ケー/恵陽 @ke_yo_
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