メインイベント2

俺がこの『世界』に来て16歳。後、数日で17歳になろうとしてる。地球で言うと高校2年生だ。予定だとそろそろジンとエレナが戦争に巻き込まれる頃で、その準備として仲間を鍛えてきた。

エレナ以外の皆んなも強くなり、それぞれあだ名まで付いている。この場合は二つ名の方が良いかな?

因みに今日は冒険者組合の支部長、いわゆるギルドマスターに呼び出しを受けていた。別にやましい事はしていない。怖れる事は何も無い。と思っていても、偉い人からの呼び出しと聞くと堂々と出来ない。俺が純粋に小市民だからか、何もしていなくても次の瞬間には何かしたかな?あれは違うよな?それともあっちかな?と考え、終いには関係の無い事が原因ではないかと考える。

人間だから色々考えるのは仕方ないかも知れないが、色々考え続けると疲れる。そんな事を思いながら俺は今その支部長の部屋にいる。


支部長「よ!待たせたな。」


部屋の主が入って来る。


支部長「そういやまだちゃんと自己紹介もしてなかったな。俺はハンスだ」


そんな名前だったのか。


俺「知ってると思うけどシリウスだ。」


ハンス「最近ご活躍だな。」


俺「俺を呼んだのは?依頼だよな?てか何で俺?エレナを呼べよ。」


ハンス「ん?纏め役はお前だろ?」


俺「え?エレナだけど?」


ハンス「あいつは魔法使いとしては優秀だが、人を率いるとなると向いてないだろう?となるとお前しかいないと思うが?」


俺「いや他にもいるだろう。第一俺はこの国じゃ扱いが軽い傭兵だぞ。」


ハンス「確かに傭兵だがウチの冒険者連中にはお前達の中ではお前が中心だって事で周知されてるぞ。」


俺「え!そうなの?そんなつもりかけらも無いけど?」


ハンス「さっきも言ったが竜殺しは戦闘能力は良いが他の事はあまり考えてないだろう。」


何でいきなりあだ名で言い出したか分からないけど前に説明した通り竜殺しはエレナだ。


ハンス「閃光の狩人は視野は良いが竜殺しの事は止められないだろ?」


閃光の狩人はトリッシュだ。腕を上げたトリッシュは索敵も一流で、隠れた敵すら射抜く様になった。まぁエレナのあだ名よりインパクトは弱い。エレナとは良い友達だと思うが、それでも行き過ぎたら注意して止めてると思う。


ハンス「祈りの聖女様は回復は一流というか特級って感じだが流石に纏め役は出来ないだろう?」


言わなくても分かるかも知れないが祈りの聖女はシャノンだ。祈りの部分はエレナがオリジナル魔法でやらかし、惨状が出来上がる度に祈りを捧げ赦しを願うからで。人が見ると魔物の為に慈悲で祈っている様に見えたそうだ。そして聖女に関してはさっきの話にある祈りの回数が多いお陰か回復魔法の威力が上がったのだ。これぞ怪我の功名という所かも知れない。確かに人を率いるって考えると彼女には出来ないかな?


ハンス「銀槍の貴公子は実力は申し分ないが嬢ちゃん達の腰巾着だろ?」


銀槍の貴公子ってのはキースだ。別に腰巾着じゃない。女性陣が怖いから少し引き気味になっているだけだ。他人からは分からないだろうけど。


ハンス「破砕の旋風王は貫禄はあるが、王というだけあって戦闘以外は何もしてないだろ?」


破砕の旋風王は残ったザックだ。何と最近ザックは3人目の子供が出来たらしい。お陰で他の事が手につかない状態だ。戦闘の時は流石に切り替えて協力してくれてるが、それ以外は家の方が気になっているらしい。皆んなも気を遣ってるから偉そうに見えてるのか。そもそも3人目が出来る前から奥さんに節約する様に言われてるおっさんは、その事で悩んでいたからあまり他の事に気が回らない状態だった。

そういった事情を俺達チームメイトは知っている。だが赤の他人にはわざわざ話さない。それで誤解されたのだろうと思う。

というかそんな家庭の事情を見ず知らずの人にいきなり話し始めたり、他人に聞こえる様に話したりするのも変だろう。

それにおっさんのプライベートの話を俺が勝手に話すのは筋違いだし。


ハンス「となると後は瞬撃の狂犬しかいないって事になるだろ?」


うん?聞いた事の無い名前が出た。というかそんな奴ウチにいたか?ただ消去法で行くと思い当たるのは1人だけだ。恐る恐る聞く事にした。


俺「な、なぁ、その瞬撃の狂犬って?」


ハンス「は?お前の事に決まってるだろ。誰彼構わず喧嘩を売ってりゃそうなるさ。」


いつ決まった?俺はそんなの了承した覚えが無いぞ。せめて俺に反対票ぐらい入れさせて欲しかった。


ハンス「どうした?手で顔を隠して。」


俺「俺は今凄く悔やんでいるんだ。そもそもそんなに喧嘩なんか売ってない。」


ハンス「んな事より依頼の話だ。」


俺としてはかなりの重要案件なんだが他人からすると気にならない様だ。悲しい。


キース「それでどんな依頼なんですか?」


俺「護衛だとさ。・・・俺そんなに狂犬?」


トリッシュ「私達が初めて会った時、いきなり人を殴ってたわ。」


シャノン「はい。確かに相手が悪いとは思いますが、話もせずにいきなり殴ったのはシリウスさんです。」


ザック「フッ、正に"瞬撃"で"狂犬"だな。」


笑いながら言うな!団長の剣聖魔人の方が可愛いく思える。


キース「そんな事より依頼の詳しい内容は?ちゃんと情報を共有していただかないと。」


そんな事?俺としてはかなり大事な話なんだけど?まぁ、仕事も大事だから確かに共有はしないとな。はぁ〜、落ち込むのはこのくらいでやめて気持ちを切り替えよう。


俺「騎士学校の坊ちゃん達の護衛だよ。ある遺跡の調査と訓練をするからその為の護衛さ。人手がいるから他にも冒険者はいるけど、俺達にはどうしても参加して欲しいってそういう依頼が来たんだそうだ。そう言えばキースって学校行かなくて良いの?」


キース「ああ、僕はある程度の教養は既に学び終えていますから、それに兄が家督を継ぐ以上僕にはこれ以上の学びは必要ありませんよ。」


俺「でも言っちゃ悪いが、貴族なんだからキースはある意味、兄貴の代わりの側面もあるだろ?ある程度くらいの学びじゃ駄目じゃないか?」


トリッシュ「あんたも相変わらず遠慮が無いわね。」


キース「いえ、大丈夫ですよ。確かにそういった事もありますが、兄は簡単には亡くなりませんよ。」


俺「何?相当屈強なのか?」


キース「兄はどちらかと言うと臆病な人ですよ。臆病だからこそ自分が生き残る為に最大の力を発揮するんです。」


含みのある言い方だな。色々思う所があるからだろうけど。


俺「ふ〜ん。話をそらして悪かった。とりあえず護衛の依頼があったって話さ。」


シャノン「それにしても私達は必要なんですか?玄人の冒険者達もいるんですよね?」


俺「まぁ、"竜殺し"の名前が効いてるんじゃないか?」


心当たりはある。なにしろ依頼主がアイリスだからだ。要するにこの依頼はエレナじゃなくて俺に対する依頼って事だ。


エレナ「なぁ、もしかしてその騎士学校ってジンが行った所か?」


俺「ああ、そうだ。」


エレナ「やっぱりか!ジンに会えるかな?」


俺「ああ、今回の遺跡調査チームの中いる筈だ。」


何しろ今回のはゲームでいうと本編、メインイベントだ。ちょっと重要で、同行する遺跡に聖剣があってそれをジンが手に入れて、あいつ勇者じゃないのか?って事で本格的に主人公として物語が進んで行く。

シュミレーション通りならだけど。

一応ジンは勇者としてレコードに登録されてるだろうけど。若干のズレが起きているのを考えると少し怖い。まぁ、聖剣は大陸に点在する他の遺跡にもあるからその剣にこだわる必要は無いと思う。ただあれがきっかけと言うのも事実だ。手に入れられると良いけど。

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