試験運用は大事
死亡フラグと言われたが、別に今は物語の中ではなく現実に生活している。その中で自然と出た言葉だ。フラグ回収ってのは起こらないと思う。少し不安はあるがこういう事は気にしたら負けだ。忘れよう。
エレナがドラゴンを一撃で葬った結果、竜殺しの異名を得た。いや、称号か?何にせよゲイツ団長が遊び半分で付けた俺のあだ名より遥かにカッコいい名前を手に入れた。因みにドラゴンの呼び方は竜でもドラゴンでも通用する。なんか音読みと訓読みみたいな物らしいどっちがどっちってのは良く分からない。
冒険者達はエレナとその仲間達を一目置いている様だ。お陰で報酬の高い仕事も受けられる様になった。
キース「シリウスさん!ちゃんと教えて下さいよ!死にたくありませんからね!」
ザック「そうだぞ!何かあったらタダじゃおかないからな!」
何かあったら皆んな死んだ後だろう?それでどうタダじゃおかない状況に持ち込むんだ?
俺「大丈夫だよ。そんな事には滅多にならないから。」
キース&ザック「たまにあるって事じゃないか!」
あ!ヤベ!余計な事を言ってしまった。
俺「お、俺が見てるから大丈夫だって。」
トリッシュ「あんた達、仲良いわね。は!そういう趣味?」
俺「違う!」
トリッシュ「冗談よ。それに人の趣味まで干渉しないわ。」
俺「俺さっき否定したけど聞いてた?」
シャノン「そんな事よりそろそろじゃありませんか?気を引き締めて下さい。」
え!俺が怒られてる?何で?
エレナ「さぁ!始めるぞ!」
色々言いたい事が山積みだけどとりあえず今回の依頼の話だ。近くにオークが住み着いたという事で調査と討伐の依頼を受けた。調べに来てビックリ、小さいけど集落が出来ていた。何もせずひっそり山の恵みだけで生活するなら良いが、人を見つけると襲って来る。そんな奴等を野放しには出来ないという事で集落を丸々叩き潰す事になった。
例によってエレナがオリジナル魔法で片付けるらしいが、技名を聞いてもどんな魔法かイマイチ分からない。だからキース達は戦々恐々と言った心境の様だ。俺も何となく想像出来るかな?って位だからエレナにどんな魔法か聞いた。
エレナ「それは見てのお楽しみだ。」
笑顔で言う。いや、身の安全だとかそういう観点から聞いたのにサプライズ的な感じで隠されるとこっちは怖くて何も出来ないんだけど。因みに技名はPressfieldだそうだ。プレスだから圧力、フィールドって事は領域かな?圧力領域、場に重力か何かの圧力をかけて押し潰すみたいな技だと思うけど違ったら困るな。
エレナ「皆んな退がれ!Pressfield!」
オークは重力波の所為でその場から動けずにいる。そして弱い個体のオークが次々と重さに耐えきれず潰れていく。文字通りにぐしゃりと。次々と気持ちの悪い音を立て潰れていくし、当然ながら異臭まで放つ。
エグい。多少血生臭い状況には慣れたから大丈夫だが、戦場で慣れる前にこれ見てたら気絶してるな。しかし流石にトリッシュも気持ち悪そうにしているし、キースも口を抑えている。ザックはただ静かに黙祷を捧げてる。
シャノン「神よ。我等の罪をお許し下さい。」
シャノンは必死に神に祈りを捧げ、赦しを願い出した。魔法を使った当の本人。エレナはと言うと
エレナ「・・・・・。」
あまりの惨状に絶句していた。何なら術を使いながら気絶してるんじゃないかと思う程無言だった。というか今日初めて使ったのか?ぶっつけ本番で良くオリジナルの新技使う気になったな。
皆んな思い思いの恐怖と罪の意識に駆られながら立ち尽くしていたが、オーク達の中に未だ無事の個体が3体程いた。
ザック「ありゃハイオークだな。多分。見た目がほぼ同じだから分かりにくいがな。」
ハイオークかどうしよう?ふと思うがこの重力波の中で無事だとしても動けないとなると今ならどんな攻撃でも外れ無いのでは?でも飛び道具や魔法じゃ途中で重力に潰されるか。フィールドに少し手を近付けてみる。
俺「うぉ!」
手が思いっ切り下に引かれ肩が外れるかと思った。
キース「何してるんですか!」
トリッシュ「あんた死にたいの!」
ザック「中のオーク共見たろ!下手したらひき肉だぞ!」
シャノン「神よ。我等を救い給え。」
3人は必死に俺を止めてくれた。シャノンは余程ショックだったのかまだ祈りを捧げている。
話は変わるが多分この重力波は海底と同じ要領で行けば潰されず中を移動できる気がする。海底はその深さゆえ凄い圧力、水圧が常にかかってる。地上の気圧は基本1気圧だ。その気圧を増やす。というか[気]を使い身体が破裂しないようにしつつ体内に大量の空気を入れ重力波に潰れない力を加えれば何とかなるかも?ぶっつけ本番だけどやってみるか。
ん?さっき似たような事があった気がするけど。まぁ、良いや。分からない事を気にしても時間の無駄だ。とっととやろう。
俺は居合い抜きの構えをしながら深呼吸をする。全身に意識を向け[気]を流し、身体の強度を上げながら空気を入れる。
ザック「ん?何してんだ?」
トリッシュ「ちょっと!ここから斬撃飛ばしても当たらないわよ!」
キース「シリウスさん?聞いてるんですか?」
何か話し声が聞こえる。とにかく今は[気]に集中する。走力も上げるため足の筋力にも働きかける。よし!行くか!俺は駆け出す。何か声がしたけど気のせいだろう。
今はそれよりハイオークだ。いい具合に3体共バラけて立っている。先ず真ん中で一番手前に立っているオークを居合い抜きで腹から切断して返す刀で奴の左肩から右脇に刀を走らせる。
俺は最初のオークを斬り、3体いたオークの左側のオークに向かう。両足を右から振り抜く形で断ち斬り、首に左から一太刀入れ落とす。最後に残ったハイオークは流石と言うべきかこっちを向く事だけは出来た様だ。たがそれだけで反撃などする余裕も無い様子だった。俺は構わず軽くジャンプして頭から兜割りで断ち斬る。だがいい加減身体への負担が酷い。
急いで重力場から脱出し、体内の空気を吐き出しつつ身体の力を抜く。いや〜上手くいって良かった。何気なく皆んなの顔を見ると何故かエレナはドヤ顔でいた。しかしそれより不可解なのがそれ以外の面々だ。目を丸くして酷く驚いた顔をしている。俺は振り返るが背後には何もいない。あれ?皆んな俺見て驚いてる?
トリッシュ「エレナは相当ヤバいと思ってたけど、あんたに比べたら割と普通だったのね。」
は?
シャノン「正に化け・・いえ、超人でしたね。」
おい!今、化け物って言おうとしなかったか?
キース「はぁ、もう何でも良いですよ。」
何その投げやりな感じ。
ザック「あんな見た事も無い魔法の中に突っ込むってだけで変なのに、それどころか無事に帰ってくるとはヤバい奴と関わっちまったな。」
え?どういう意味?
エレナ「フフッ、皆んなはまだ甘いな。シリウスはあの程度普通に出来る。あれくらいで驚くなんて意味ないぞ。シリウスについてあれこれ考えるなんて無駄無駄。ただ私達は受け入れれば良い。」
エレナの発言はもう俺に関して一切気にしないと言っている事になるが、え?俺そんなに変な事したか?
俺は魔法が使えないただの人だったはずだが、気が付くとパーティメンバーから魔物より恐い存在と思われる様になっていた。
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