スクルド

アイリーン「ちゃんと生きて帰ってこいよ。」


エレナ「手紙待ってるぞ。」


俺「分かってるよ。じゃあ元気で。行ってくる。」


2人に別れを告げ、南の砦を目指す。

王国の領土の思いっ切り反対側で中々の距離だ。馬車とか移動手段も考えよう。ジンを見送ってからも修行を続け今年で10歳、これから2年後か3年後で例の襲撃事件が起き町が壊滅する。

残りの2年間で実戦経験を積んで今より強くならねば!そう思いながらこれからどうするか考える。冒険者としては12歳で登録出来るらしいけど傭兵は今の所状況が分からない。とにかく舐められない様に何かすべきかな?そんな事を考えつつ東に向かっていると大都市の1つミルザが見えてきた。

俺が向かうのは更に東の辺境だ。とりあえず俺が真っ直ぐ東に向かっているのはこれで確認できた。けどやっぱり地図が無いとなぁ。でも正確な地図がじゃないから見ても当てに出来るか分からない。ほぼ道なりに真っ直ぐ進んで今日はこの都市に泊まり、後は野宿しながら東に向かうしかない。明日からはしばらくベッド無しだな。今後の予定を考えながら宿屋に向かう。

実は今まで特に話には出さなかったが、基本デカい街は魔力を使い生活するから魔力が無いと生活出来ない。家にいた時は皆が気を遣ってくれたが今は1人だ。というか戦いの事しか考えていなかった。生活に関して、物理的に出来る事はある程度何とかなる。だが他の人が普通に出来る事が俺には出来ない。現代社会の中で1人、取り残された原始人の様な生活していた。なんとか頑張ろうとは思うけど、自分の置かれている立場を考えると何故か涙が出てくる。そんな時スマホが動き出す。今はマナーモードだからバイブで着信を知らせている。


?「もしもし、元気?一応、迷惑かけてるからさ。何か困ってる事があったら言ってね?出来る限り手伝うよ。」


俺「・・・どちら様?」


?「そっか、初めて話すね。私はスクルドだよ。よろしくね。」


コイツがマシンを弄って俺に責任押し付けた元凶か。色々言ってやりたい。そもそもこんな生活せずに済んでいたし、今はもう家族に会えず声すら聞けない。あまり考えるとホームシックにかかりそうで思い出したくとも思い出さない様にしていた。

怒りも溢れそうになるが、さて何を言うかと考える。たがそれよりも生活が困窮している事を思い出し、気が付くと複雑な感情が溢れてくる。そして俺は無意識のうちに


俺「助け下さい。助け下さい!」


スクルド「え?何?何?どうしたの?大丈夫?」


気が付けば色々な思いを話していた。彼女は何も言わずに相槌は打っていたが静かに聞いていた。


スクルド「分かった。迷惑かけてる分きっちり返すよ。家族と電話とか家に帰すとかは出来ないけど生活環境の改善は私が何とかする!」


懸命に話たのが良かったのか助けてくれるらしい。


スクルド「要するに生活に直結する魔法や魔導具が使えないって事ね?分かった。任せなさい!全て纏めて解決するわ!」


何をするのか?頼んでおいて言うのもなんだけど、大丈夫だろうか?次の瞬間俺のスマホが光る。スマホが何の解決になるのか?


俺「スマホ?今更?」


スクルド「フッ、ただのスマホでは無いのよ。何と生活必須アプリを搭載したの。」


俺「生活必須アプリ?どう使うんだ?」


スクルド「アプリ自体の使い方は普通のスマホのアプリと一緒。火や水の絵が描いてあるアイコンをタップして、スマホを向けて画面の上の方にスワイプすると火や水が向けた先に出現するの。魔導具については先ず目玉のマークのアイコンをタップするの。するとカメラ機能が起動して、その画面でQRコードを読み込むのと同じように魔導具を画面に写す。すると操作法一覧みたいな画面が出るから、そこからどう動かすか決めて。」


何とこれだけで大分素晴らしい。彼女には思う所は沢山あるが、このスマホの機能だけで軽く崇拝してしまいたくなる程嬉しい。あ、何故か自然と涙が。


俺「ありがとう、何かこれでもう少し頑張れそう。」


スクルド「私の方こそごめんね。これからも大変だと思うけどよろしくね。」


俺「おう!ところで少し聞きたい事があるんだけど、ゲームのシナリオと進行が若干違う所が出てるけど大丈夫なのか?歴史が変わるみたいな事が起きるんじゃないか?」


スクルド「大丈夫よ。私達主導でその歴史の改変をしてるのよ。そもそもこの『世界』は、普通に行けば地球と同じ歴史を辿るはずだったの。でも魔法だの、魔物だの色々出て来ちゃったから地球と違う形になって、その上魔王まで現れた。この『世界』の人達は悪くないし、だからこそ全滅は避けたい。全ては救えなくても何とか助けたいの。と言ってもこの事態を引き起こしたのは元々私自身だし、あまり説得力が無いけど。」


俺「神様のお墨付きで歴史の改変か。幾ら変えても問題ないならこれで心置き無く行けそうだな。」


スクルド「うん!改めてこれからもよろしく!そろそろ仕事に戻らないとじゃあね。」


そこで電話が切れた。いや~これで幾つかの問題が解決した。女神様に感謝だな。と感じていた時、何かを忘れている事に気が付く。何だ?しばらく考え込んでいると思い出した。

この事態の元凶であるスクルドに文句を言ってやりたいと思っていた事を忘れていた。そしてワナワナと身体震わせながら搾り出したのは


俺「よろしく、じゃねー!」


1人寂しく叫んでいた。

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