調査報告

地球とは違う『世界』だが、ゲームの様な感覚で生活していた。だから色々気にしない事にしていたけど、ここは今の俺にとっては現実だ。今後の為に幾つかの疑問を解消しておこうと思う。

調査の結果。

この『世界』の人間は肝臓の裏あたりに魔力袋とか言う魔力を溜める器官があるらしい。らしいって言うのは誰も身体の中をちゃんと見て無いからその存在を把握は出来てないという。扱える魔力の量が人によって違うからサイズにも個人差があるって言われてるらしい。俺には無いから余計に分からないけど。

アイリーンに聞くと腹筋を使い、声を出す要領で力を入れ魔力を使うと言う。慣れて来るとそれほど力を入れずに、呼吸する程度の自然な力加減で行使出来る様になるという。

呼吸する様に体内で魔力を集めて言葉、つまり呪文を唱える。その呪文は言霊となり、円陣を構築して魔法陣が完成する。完成した魔法陣の術式の通りに魔法が形作られ、唱えた魔法が発動するという仕組みだ。そんな器官1つで魔法が使えるとは何とも不思議だ。

さっきも言ったが場所は肝臓の裏だ。ボクシングのリバーブローなんかを喰らえばその刺激でしばらく魔力が使えなくなる。俺としては多少使える知識だから、生き残る為に何とか活用して行きたい。

因みに呼吸するくらい簡単に行使出来る様になれば次の段階に移行する。呪文を使わずにイメージするだけで魔法陣が形成出来る様になる。簡単に言うと無詠唱というやつが使える。ジンはまだ使えないがエレナは初級程度ならもう既に無詠唱で発動出来る。

無詠唱が出来る様になれば魔法を覚える事自体が楽になるらしい。

普通はどう覚えているのかと言う話になるけど、この『世界』でも普通に読んだり書いてみたりと、地球と同じ様に勉強が必要だった。そこで無詠唱って話になる。

その魔法がどういう物か、イメージさえ出来ればそれ程努力しなくても覚えられるという。まぁ、聞いた話だけど。

ゲームでは魔導書を使うだけで簡単に覚えた。その辺は、あの女神達が調節してたんだろうなと思う。

それと人には得意な属性がある。職業である程度の限定はあるけど、ジンは光系統で回復も多少覚える。だけど能力は僧侶に劣る。

エレナも初級の回復は覚えた。ゲームだとエレナはそれ以外の火や水、風と土などは超上級まで覚える。一応、分類的には最高ランクになる。どうなるかはこれからの努力次第って所だろうな。

ついでにこの際だから今まで気にしていなかった他の事にも触れておこう。由来は良く分からないが今いる大陸がバナートで、そのバナート大陸の約西側半分を領土にしているのがセントアース王国だ。

ジンが向かったのはその王国の王都アルゴスで、そこの王立騎士学園に入学した。そこで自分を鍛え、友を得て仲間を増やしいずれ魔王と戦う事になる。

そしてその王都アルゴスの周りに6つの大都市がある。北の位置にノードという都市がある。北西辺りにラクスと反対側の北東にフィーダ、南西の位置にメレス、先程と同じ様に反対側の南東にアスト、南にミルザというらしい。ゲームの時はイマイチ都市の名前は把握してなかった。ある程度位置が分かれば良いかくらいの感覚だったからな。

その大都市は公爵達、上級貴族が領主を務めていた。4つの大都市は4つの公爵家、また他の2つの大都市は侯爵家が管理している。その大都市の周りに公爵達から土地を買った他の貴族達が領主として街を持っている。

ジンの実家があるこの町は、近くの街で領主をしている子爵が管理している。子爵保有の土地をそれぞれの小さな町の町長が管理する形になっている。

大陸を真ん中辺りで半分に分けて東側は魔物の棲む森林が広がっている。その森林の近くに4つの都市が点在している。それぞれ魔物対策として高い壁に囲われた都市だ。以前言った魔族と小競り合いを起こす砦というのはこの4つの都市だ。ゲームの時は正確には知らなかったが、まさか砦が4つもあるとは。因みにその辺境都市は4人の辺境伯がそれぞれ領主として納めている。

辺境伯と言われてはいるが、元々は貴族では無く腕に覚えのある冒険者や傭兵だ。何しろ魔物の棲息地にわざわざ住む貴族はいない。辺境伯の4人の内、2人が元冒険者でもう2人は元傭兵だ。その地で代々戦い続ける事を条件に領地と爵位を得たと言う。

元々貴族では無いから私兵はいない。有事の際はその都市を拠点にしている冒険者や傭兵が兵士の代わりの戦力として対応させているらしい。

俺は元傭兵が辺境伯をしている都市に行こうと考えている。4つの都市で1番南側にある都市だ。今住んでる所から真っ直ぐ東に向かうだけだから、分かりやすいし楽だ。

因みにエレナは生まれ育った土地を離れ、南の大都市ミルザに拠点を移すと冒険者を始める。その後魔王との戦争が起き、戦いに参加していく。ジンはジンで学生中に戦争が発生。王都の騎士団が動く事態になるが、簡単には勝つ事が出来なかった。騎士団の負った被害は甚大で、結果人手不足となった騎士団の補強という形で学生達まで駆り出され、気が付けば最前線で戦うハメになる。

何とも酷い話だけど、これからこの国が辿る未来は大体こんな感じだ。

ついでに言っておくと魔王の城は話の途中に出た魔物の森の中心辺りにあり、この5年程の間に建てられるらしい。いきなりそんな物あったら気付くだろと思うが何でも隠蔽魔法なる物で隠しているらしい。怪しい城が見えなければ冒険者もわざわざ危険な森の奥まで調べには行かない。

そういえばよく歴史を変えるのはいけないと聞く。俺は結構好き勝手に動いてるが本当に大丈夫だろうか?元々神様から歴史の流れを変えてくれと頼まれた訳だが、本当に良いのか不思議でしょうがない。

今度確認しよう。

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