ミステリーアート
あるところに、絵を描くのが大好きな中年のおばあちゃんがいた。彼女の描く絵はオレンジ、赤、白、黒以外使わない油絵専門の絵師。彼女は元々美大生だった。大学生の頃はもっと色々な色を使って描いていたが、やはりこのころもオレンジや赤がベースだった。けどある日自分の描く絵に不思議な力が宿ることに気が付いた。その時は野外で絵を描いていて、学校の外の自然を模写していた時だ。
「はぁはぁ...。苦しい...。」
隣で書いていた人が片手を胸に当てて蹲っている。そして、もう片方の手に持っている筆をおいて口に手を当てた。吐き気があるのだろうか。私は即座に筆を置いてその人の背中をさすった。
「大丈夫?」
ふと蹲る背より向こう側を見ると、黒い靄が掛かる不気味な自分物がその場に立っていた。その黒い靄は何処から出ているのか分からなかったが、その人を全身に纏うから、その人が男か女かも分からなかった。その人がどんどん近づいてくる。私は怖くてその場から動けなかった。
「こ、こっち来ないで。」
怯えた声で言う自分は、正直目の前の辛そうにしている人を忘れかけていた。黒い靄を纏う人が自分の目の前まで来たとき、私はもうだめかと思ったが、その人は見る見る私の描き途中の絵に吸い込まれていった。私はそれをただただ茫然と立ち竦む。さっきまで苦しそうに汗をかいていた人は気づけば元気になっていて、
「ごめんね。心配かけて。もう大丈夫。ありがとう。」
としっかりと声を出していったのだ。さっきのはなんだったんだろうか。
そしてまた次の日、涙を流して私に話す友達がいた。
「昨日、彼氏に振られて...。」
私は「それは辛かったね。」
と言いながら綺麗なハンカチを差し出す。彼女の涙は一向に止まることがない。そう思ったとき、自分の絵が光った。そこまで神々しく光っていた刷毛ではない。豆電球のような温かく小さな光だった。
美大を辞め青いエプロンを身に着け全国を巡りながら絵を描いている
私の絵には傷ついた人の心を癒し時には何か魔のものを封じ込める力が持っていることに気が付いた
ある日ある公園で何日も住み着いて絵を描いていると近所の子供から「あおちゃん」と呼ばれるようになっていた
いつものように鼻歌を歌いながら絵を描いていると女の子が毎日絵を見に来るようになった
ファンができたみたいで嬉しかった
しばらくしていつもの女の子が公園にやってきた
その後ろから「リ” ガちゃあああ!」とこの世の者とは思えない女が物凄い勢いで走って来た
少女が危ない!思いとっさに書きかけの絵を持ち女の元へ駆け出した
血みどろの死闘を広げた末私は右手を犠牲にしなんとか女を封じることができた
一部始終を見ていた女の子は酷く怯えて逃げて行った。
良かった少女が無事で・・・
あれから不思議な力は失ったが
今でも公園で絵を描き続けている
あれ以来、少女は見ていない。
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