第2話 対決
『プログラム1番、3年生による100m走です』
全校生徒が集まった校庭にプログラムを告げる声が響く。
「早速か……」
「だな。行くぞ」
今回の100m走は全5クラスの中から2人ずつ、つまり、計10人が同時に走りだす。
勿論、今回の3本勝負は相手よりも2回着順が速い方が勝ちとなる。
『On your marks……』
「全力で来いよ、光輝」
「あぁ、勿論だ」
『Set……』
─────パーン‼︎
銃声が鳴る。それと同時に駆け出す。
風の抵抗を減らす為、最初の方は身体を低めにした。
─────駆ける、駆ける、駆ける。
途中、隣のレーンで走る光輝の後ろ姿が俺の目に映る。
だが構わず駆ける。そして─────
『今ゴールしました! 一着は、2組の山波くんです! 注目選手はやはり速かったー!』
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
1戦目は残念ながら負けてしまった。
運動が平凡すぎる俺だが、結果は4着とまぁまぁだった。
流石に1ヶ月で短距離の記録を伸ばすのは難しいか……
「はぁ、ふぅ。お疲れ荒川。お前速くなったなぁ。結構危なかったぜ」
汗を拭いながら光輝が話しかけてくる。
「まぁ、俺にしては珍しく全力でやったからな」
「あぁ。練習の成果が凄く出てたぜ。まぁまずは俺の勝ちってことで」
「分かってるよ」
「あ、そうだ。お前もちゃんと水分摂っとけよ。ほらよ!」
そう言って渡してきたのは、某メーカーのスポーツ飲料、ポ○リスエットだ。
「ありがたく頂戴するよ」
俺は蓋を開けて一気に飲み干す。
汗で塩分と水分が抜けてった身体に冷たくてほんのり甘い香りが喉を潤す。
「ぷはぁ。やっぱり運動後のポ○リは美味いな」
「あぁ、そうだな」
俺らはまだ余韻が残る中、2人で笑い合った────
その後は、プログラムが進んでいく中、2戦目の障害物競走が行われた。
結果としては─────俺の勝ちだった。
光輝の方が身体が大きく、ネットを剥がすのに時間がかかり、俺が勝利を掴み取る事になった。
そしていよいよ最終戦、1500m走だ。
「これで決着だ。荒川」
「あぁ、絶対に負けないぜ。光輝」
パーン‼︎
再び銃声が鳴り、周りの人達が一斉に走り出す。
俺が集団に埋もれて中々抜け出せない中、光輝は200mを走った時点で集団から抜け出し、トップとなった。
皆がバテてきた中、俺はようやく集団を抜け出す。まだ背中は遠いが、追いつけない距離ではない。
距離が増える度、少しずつ少しずつ光輝に近づいていく。
遂に最後の150m。俺は最後の力をふり絞る。
「俺にだって……はぁっ、はぁっ、諦めきれないものが…………あるんだよぉぉぉぉ!」
だんだんと光輝の背中が近づいてきて─────
「はぁっ。はぁっ」
「はぁっ。はぁっ」
2人でトラック内に大の字になって寝転ぶ。
『なんと……最後の最後で2組の荒川くんが山波くんを抜き、1着となりました! 凄い熱い試合でしたね!!』
興奮気味に司会の人が話す。
だが、そんなことはどうでもいい。勝利の余韻に浸っていたかった。
身体中から汗が噴き出てくるが、自然と嫌な感じはしなかった。
愛の力なのか、それとも練習の成果なのかそれは分からない。だが言えることは一つ。
どうだ光輝─────
俺の……勝ちだ!
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