第15話 花売り幼女再び
サーシャさんの病気は聖女の治癒魔法で治すことが出来た。これで不治の病は7人の聖女が治してくれるだろう。私はあくまでもプラス1。だから私は大切に思う人だけ治して後はのんびり異世界生活を楽しもう。
だけどその前にもう1つだけやることがある。それはこの不治の病の原因を取り除くこと。じゃないとせっかく治した病気が再び襲い掛かってくる。それだけは絶対に許せない。
(まぁそれも7人の聖女のお披露目が済んでからだね。出来れば西にある『聖女の森』に朝比奈さん達も向かってくれれば助かるんだけど、て言うかもちろん行くよね?)
「判らないことを悩んでも仕方がない。取りあえずお腹空いたからご飯を食べて、その後に泊まる場所でも探そうかな」
私は商店街までひたすら歩く。テクテクと。
「あっ!小さいのに大人買いしてくれたお姉ちゃんだ!」
「ん?いただけないコメントだが発する声の質はいただきたい感じだな」
私はそのいただきたい声がした斜め後ろ方向10m先にピントを合わせる。そして見付けたのは商店街で出会った花売り幼女だった。それもあと5人ほど子供が居るではないか。
(くふっ、これはまたお楽しみの時間がやってくるのか?どれどれ見てやろう)
喜び溢れる私は花売り幼女から隣の5人組へとピントを合わせた。そして私が見たものは10歳前後の男女だった。
「射程外だ。残念無念‥‥‥‥だが花売り幼女が居るから許してやろう。さあ、おいで」
私は片膝を地面につけて両手を広げた。(これでサーシャさんみたいに優しく包み込んであげようではないか。ほれ、ほれ)
そして花売り幼女はニパッと笑い私目掛けて走ってくる。(キター!包容たーいむ!)
「チッチェ、近づくな!なんかコイツ危ない感じがするぞ!」
包容タイムまであと2mの所で射程外5人組の1人が走って追いつき花売り幼女の手を掴んで止めた。そして私に疑いの目を向ける射程外は5人組の中でも一番年長に見える男の子。大気圏外であった。
(ぐぬぬ、あともう少しだったのに‥‥片膝に道の小石が食い込んで痛いの我慢して笑顔で両手広げてたのに‥‥この大気圏外が!)
私は怒りを静める為にゆっくりと立ち上がる。膝にめり込んだ小石を右手でほじくり出しながら。(落ち着け、相手は子供だ)
「なんだ、よく見ると俺達と同じくらいの子供じゃん。チッチェとちっちぇ女の子か。ぶはっ!我ながら面白いこと言うな!」
その大気圏外はしょーもない事を言って私を指差し笑っている。私がせっかく怒りを静めようとしてたのが無駄になった。
「怒りのグーパンチ!は可哀想だから、しつけの為のパーチョップ!」
私は大気圏外の頭を軽めに叩く。ついでに花売り幼女の手を掴み奪ってやった。
「初対面の女性に失礼ですね。私は背は低いですが立派な大人ですよ?」
私は嘘は言っていない。この異世界では13歳から大人として認められるのだ。ギリギリセーフなのだ。あえて13歳とは言わないが。
「コンブ、あんたなにしてんの!この人、チッチェ達から花をたくさん買ってくれたんだよ。お礼を言わないといけないのに失礼な事言ってどうするの」
大気圏外の頭をグーパンチして説教を始めたのは射程外5人組の1人の女の子。短い説教が終わると私の前に来て頭を下げた。
「私はランカと言います。コンブが失礼な事をしてごめんなさい。あと、花を花籠ごとたくさん買ってくれてありがとうごさいます」
(うん、いい子だね。射程外だけど)
「私は奏。私も鉄拳制裁したからもう気にしてないよ。それから買った花だけど綺麗だった。丁寧に育ててるから葉っぱも綺麗な緑色をしてたしね。あと花籠も上手に作れてたね」
私は隣に居る花売り幼女の頭を撫でながらランカに向かって返答をした。
「そう言っていただけると嬉しいです。あの花は孤児院の幼年組が毎日丁寧に手入れをして大切に育ててるんです。それと花籠は年長組が作ってるのですが最近チッチェも手伝うようになったんです」
そのチッチェは自慢顔で私を見ている。そしてその目は「誉めて、誉めて」と訴えていた。
私は頭を撫でる速度と範囲を2倍にして「チッチェは偉いね」と誉めてあげた。そして喜び顔のチッチェが私に言ってくる。
「あのね、お姉ちゃんがお花を全部買ってくれたら、ランカお姉ちゃん達とお外に行けるようになったの。だからお姉ちゃんありがとう」
「ん?街の外に行くの?子供達だけで危なくないの?」
(この王都の周りには深い森は無いから狂暴種も出なくて安全とは言ってたけど普通の動物や魔物は居るんじゃないの?)
私の疑問に答えてくれたのはランカ。
「奏さん、この王都は城を囲む第一城壁、城下町を囲む第二城壁、外敵の侵入を防ぐ第三城壁があるんです。私達は第二と第三城壁の間にある畑の手伝いに行くんです。それでチッチェは畑の周りに出る角無しウサギを見るのを楽しみにしてるんですよ」
「そうなんだ。でも外敵の侵入を防ぐ第三城壁の中にも魔物や動物が居るの?」
「ああ、それはワザと入れて繁殖させてるんです。この第三城壁の内側は広大で、一部に植林して人工的な森を造り草食動物や危険性の低い魔物の繁殖の場を設けてます。外敵が居ないのでよく繁殖して美味しいお肉になってくれるんです。私達も畑の手伝いが終わったら角無しウサギかスモールボアを狩る予定なんですよ。今まで狩れたこと無いんですけどね」
「仕方ないだろ。大人にならないとナイフ以外の物を使っちゃいけないんだ。あんな素早い動きにナイフじゃ無理だ」
ランカの狩りは無理発言にムッとして口を挟んできたのはコンブ。男のプライドを傷付けられたのだろうか。
「ふふ、それじゃあ私達は早く狩りが出来るように急いで行ってきますね。チッチェ、奏お姉ちゃんに挨拶して」
「奏お姉ちゃん、行ってくるね!」
そして花売り幼女チッチェは私のもとを去って行った。
「よし、私もご飯を食べに行こう!」
幼女成分を十分に補充した私の足取りはとても軽快であった。
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