第11話 ぶっちゃけた奏とカリーナ
色々とぶっちゃけた私とぶっちゃけられたカリーナさん。私達は今、テーブルを挟んでソファーに座り紅茶を飲んでいる。そして疲れ気味のカリーナさんが満面の笑みをした私に色々と聞いてきた。
「昨晩は起きて行動する事は不可能な筈なのですが‥‥本当に4階の部屋に行ったのですか?それとなんでフリンデ子爵とステラ神官助手の名前を知っているのですか?それも違う国の人という事も知ってるみたいだし‥‥」
昨日の夕食に入っていた睡眠作用のある薬草の事をそれとなく話すカリーナさん。私は「あんな事しても無駄だよ」と薄ら笑いで答えた。
「ああ、あの睡眠作用のある草の事ね。あれ、食事の後にすぐ解毒剤飲んだから効かなかったよ。そのあとの質問についてはノーコメントでお願いします。絶対喋らないよ?」
私はポケットから解毒剤の入った小袋を出しフルフルと揺すって見せ、その中から小粒の錠剤を数粒取り出してテーブルの上に置いた。
「な、なんでスミーン草のこと知ってるの‥‥あれって希少植物なのに。それとなんで解毒剤なんか持ってるの?それに毒じゃ無いのに解毒剤が効くの?もう訳判んない‥‥」
テーブルの上に置いた解毒剤を手に取り調べるカリーナさんの問答は続く。(あっ、こいつポケットに仕舞いやがった。なんにでもよく効く貴重な解毒剤なんだから返してよね!)
「あの窓に引っ掛けていた道具はなんですか?なんであんな事出来るんですか?奏様は確か学生さんですよね?解毒剤もそうですが、奏様の世界ではあのような道具を常に持ち歩くのが当たり前なのですか?」
「あれは鉤爪ね。ロープは細いけど私くらいがぶら下がってもビクともしないマイクロコードってやつなの。私の世界でもこんなもの持ち歩いてるのは私くらいだよ。それと飛び降りたり出来るのも普通の事じゃないからね?」
私はカリーナさんに見てもらおうとテーブルの上に鉤爪とマイクロコードを置いた。(鉤爪は似たような物があると思うけど、マイクロコードは無いだろうな)
そのカリーナさんは鉤爪を少し見て、その後にマイクロコードを入念に調べている。私はそのカリーナさんに質問をした。(まさかそれもポケットにナイナイしないだろうね?)
「それでフリンデ子爵とステラ神官助手について教えてもらえますか?ああ、極秘なら言わなくていいですよ」
私は鉤爪とマイクロコードをカリーナさんの手から奪い取りナイナイし、そのカリーナさんは少し不満げな顔をしていたが、少し間を置いてからニヤリと笑い「お前も道連れだ!」といったような表情をして話を始めた。
「フリンデ子爵は奏様のいう通りバンデル王国から来た使者です。実は聖女様を召喚する儀式を行うには、その聖女の血を濃く受け継いだ家系の者からそれぞれ1人の血が必要で、その1人がバンデル王国の第3王女と結婚したダジール女王陛下の兄マジルート様なのです。
そしてその血をこの国に持ち込んだのが使者のフリンデ子爵で、7人の聖女様の事を知る数少ない1人となります。ステラ神官助手はザビル神官長と同じアリフェル教なんですが何故助手なのにフリンデ子爵と一緒に来たのかは判りません」
(私は知ってるよ‥‥‥禁断の恋ってヤツだね)
「そうなんですか。でもダジール女王陛下のお兄さんならこの国の王様になる筈じゃないの?それと7人の聖女の家系の血なら、わざわざ他所の国から持って来なくてもたくさん居るんじゃないの?」
私は疑問に思ったことを続きを話そうとしていたカリーナさんに聞いてみた。
「確かに遥か昔の伝説なので、その子孫は数えきれないほど居ます。ですがその中でそれぞれ聖女様の血を一番濃く受け継いだ者の血が必要なのです。そしてその者には聖女様と同じ紋章が体の何処かに発現しています。
そしてその1人が黄(恵み)の紋章を持つマジルート様なのです。因みにダジール女王陛下は赤(爆炎)の紋章を持たれています。
それでマジルート様はダジール女王陛下とは腹違いの兄なのですが、その‥‥性格に少し難がありまして‥‥‥。先代の王様が当時王国騎士団の団長を勤め国民や部下の兵士達から絶大な支持を得ていたダジール様を、一部の貴族が反対していましたがそれを押しきって女王陛下にしました。そして隣のバンデル王国に友好の証だと第3王女の夫にと紹介した次第です」
(ああ、ダメな兄を厄介払いした訳ね。それと各聖女の紋章を発現する子孫が居るんだ。それって白の紋章を持つ子孫も居るのかな?)
「その紋章を持つ子孫は全員把握してるの?それとその子孫はなにか特別な力があったりするのかな?」
私の質問を聞いたカリーナさんは何故か襟元を緩めて左肩を私に見せるように近付けた。
「いえ、藍(洞察)の紋章を持つ者が判っていません。その他は赤(爆炎)のダジール女王陛下、黄(恵み)のマジルート様、緑(促進)と青(清涼)は王国騎士団の魔法部隊の各隊長、そして紫(紫電)の紋章を持つ私です。
そして紋章を持つ子孫はその聖女様が持っていた特殊能力の劣化番を授かっています。それは本当にほんの僅かな威力です」
そのカリーナさんの左肩にはうっすらと紫の紋章が発現しており、その左手の指先からは紫色をした雷花が静電気のようにバチバチと音を鳴らしていた。(スタンガンみたいだね)
「それで足りない藍の紋章を受け継ぐ子孫の血は、仕方なく私の血を代わりにしました。それも何故か2人分だとザビル神官長に言われ、私は計3人分の血を抜き取りました。
その1人分多く抜いたのは、白の聖女様の分だったのですね。お陰で私はその日、フラフラになってました。凄い量だったんですよ」
(なんで私を睨むの?お前らが勝手にしたことだよね?グーパしてもいいか?)
「おっと、色々とぶっちゃけ合って疲れましたね。奏様の城下町での一人暮らしについてはダジール女王陛下に確認します。それとフリンデ子爵には気を付けて下さい。マジルート様は王座を奪ったとダジール女王陛下を逆恨みしています。それで聖女様を奪いバンデル王国の王の座を狙う為に利用しようと考えているようです。どうも王になってこの国に戦争を吹っ掛けるつもりみたいですよ」
カリーナさんは私の膝の上にあるグーパン体制の握りこぶしを見たのか、慌てて喋り逃げ出すように部屋から出ていった。
「お前‥‥‥最後にとんだ爆弾発言して行きやがったな。ぶっちゃけすぎだよホント」
私はその数時間あとに夕食を持ってきたカリーナさんに気配を消して後ろに回り込み、膝カックンをして憂さ晴らしをしたのであった。
あっ、城下町での一人暮らしはOKだって。やったね!
ーーーーーーーーーー
【SIDE:春香】
時間は少し戻り召喚された翌日の昼過ぎ。ダジール女王陛下との謁見を済ませた私は忍の部屋にお邪魔している。(私の部屋は未琴達が来る可能性が高いからね)
「忍、昨日の夕食でのザビル神官長の話と今日のダジール女王陛下との謁見での話からすると、私達はしばらくの間はこの城でこの世界の常識などの勉強と聖女の能力を把握する事になったよね。忍にはその間、この城に居る人間関係をよく見ていて欲しいの」
私の話を眠たそうな目をして聞いている忍。
「判った。誰を見方にするのが一番いいか見定めてみる。そして敵が居るのかも気を付けておく」
(うん、さすがね。忍に話して良かった)
「話が早くて助かるわ。それじゃあ現状で感じたことを話し合いましょう。それでこれからどうするかの方向性も出せると思うから」
そして私と忍はそれから約1時間ほどかけて色々と話をした。その中には私が気付かなかった事も何件かあり、忍を引き込んだ事は正解だったと私は嬉しく思った。
その頃、春香を目当てに他のメンバーが次々に訪れ、部屋の主が居ないのにその部屋はとても賑やかだ。
その賑やかな部屋に来客が現れた。まるで春香が居ない隙を狙ったように。
「失礼します。聖女様と少し話をしたいという人物をお連れしました」
その来客は神官助手のステラ。そしてその後ろにはフリンデ子爵が居た。
「初めまして、7人の聖女様。私はフリンデと申します。是非とも聖女様とお近づきになりたくてご挨拶に伺いました」
そのフリンデとステラは愛想のよい笑顔でドアの前に立っていた。もし春香か忍が居たら気付いたであろう。その2人の笑顔の目だけが笑っておらず獲物を見る冷たいモノだった事に。
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