ラバニエル王国編
第10話 私、一人暮らし始めるの
お風呂場でダジール王女陛下と謁見を行いラバニエル王国の現状を知った私。そして伝説の7人の聖女を国の活性化に利用する為、8人目の聖女となる私は秘密の存在として扱われる事になった。(謎の女って訳ね)
その私はカリーナさんに連れられて自室に戻ってソファーに座り、今までの事を脳内で回想し問題点を洗い出す。
(まず朝比奈さん達とどんな関係、付き合い方をすればいいかだね。ダジール女王陛下は私の事をどんな風に話してるのかな?)
「カリーナさん、ダジール女王陛下と7人の聖女はどんな話をしたんですか?私の事についても話をしてるんですよね?」
私の前に紅茶の入ったカップを置きながら話し始めるカリーナさん。
「謁見は王座ではなく特別室で行われました。そしてその謁見はダジール女王陛下とザビル神官長のお二人と聖女様だけです。これはまだ7人の聖女様の存在を貴族も含め公表していない為、秘密裏に行いました。
話の内容は奏様に話した我が国の現状と聖女様へのお願いがメインとなり、その中で奏様の話も出ております。なので当面の間は7人の聖女様と奏様は接触禁止となりました」
(ああ、やっぱり私の学生生活は友達も出来ずに終わったんだ‥‥‥少し悲しいの)
私は瞳をウルウルさせてカリーナさんを見つめながら言った。
「はぁ、判りました。でも7人の聖女の部屋はこの部屋の隣からズラッと並んでるので偶然出会うこともあるよね?その場合はどうするのかな?もしかして私は無視されるの?それはちょっと私の乙女なハートがブロークンしそうなんだけど‥‥‥」
そのカリーナさんは私の潤んだ瞳から目を反らし、窓の外を眺めながらこう答えた。
「あの‥‥奏様には誠に申し訳ないのですが、7人の聖女様のパレードが終わり落ち着くまで城下町の宿に滞在して頂きたいのです。
もちろん私もお供しますし最上級の宿を準備致します。どうでしょうか?」
(お前、私の目を見て話せよ。私はそんなことで機嫌悪くならないから。むしろ憧れの城下町で暮らせるんだよ?私、喜び満点だ!)
「マジですか!それなら今からでも大丈夫ですっ!出来れば私1人だけを希望します!」
せっかく自由の身になるんだ。チチでか女の監視付き生活なんて真っ平ゴメンなのだ!
「えーと‥‥なんでそんなに嬉しそうなんでしょうか。それとまだこの世界の事をよく知らない奏様を一人にするのはどうかなと‥‥‥」
そりゃそうだ。まだこの世界に来て2日目だからね。でも私は負けない!
「それなら大丈夫。判らない事があればカルビーンお爺さんに聞くから。仕事中ならサーシャさんに聞けばいいしね」
それを聞いたカリーナさん。外の景色を見ていた視線を私に向け目を細めて言った。
「奏様?なんでカルビーンさんを知っているのでしょうか?それも奥様のサーシャさんの事まで。カルビーンさんと会ったとしたら私が朝、奏様を起こしたあと服の準備で部屋を空けていた時間帯しかありませんよね。それとここは3階ですからずっと大声で話し合っていたのですか?そんな訳ないですよね?」
(あちゃー、つい嬉しくてカルビーンお爺さんのこと話しちゃったよ。でもまあいいか。これから城下町で暮らせるんだし、もう秘密の通路を使って抜け出す必要も無くなったからね)
「ははは、実はカリーナさんが起こしてくれたあとに外を見てたら声を掛けられて、色々と聞いてみたかったから飛び降りて話を聞いたの。カルビーンお爺さんって面白いね」
(面白いのは顔と名前だけどね。あっ!病気治したのバレるかな‥‥‥‥カリーナさんより先に会ってお爺さんに喋るなって言っとかないと)
「あの‥‥飛び降りたって‥‥‥ここ3階ですよ?仮にロープがあったとしても普通の女の子には無理な高さです。あと戻って来るのはどうしたんですか?ダジール女王陛下の正体をすぐに見破るし、気配を完全に消し屋根裏に居た私を見付けた事といい、奏様は何者ですか?」
カリーナさんは嘘や誤魔化しは許さないぞと私を睨む目に静かな殺気を込める。さすが隠密部隊の隊長、騙すことは難しそうだ。
私は仕方ないとソファーから立ち上り窓際まで歩き窓を開け、カリーナさんの見ている前で窓から飛び降りた。
「奏様!なにをしてるんですか!」
突然の私の行動に唖然として固まっていたカリーナさん。すぐに再起動し窓から体を乗り出し下を見て叫び声をあげた。
そのカリーナさんに下から手を振り、私はバックルから鉤爪を取り外しマイクロコードに結び付けて2階、3階と窓枠へ引っ掛けて、自室までスイスイと登って行った。
そして再び固まっているカリーナさんの横を通り部屋に入るとソファーに座り紅茶を飲んだ。(一仕事後の紅茶は美味しいな。もう時間が経って冷たくなってるけどね!)
「ちょっとした道具があれば3階でも大丈夫なんだよ?昨日の夜は4階に行ってたし」
私はもうこの際だと昨日の事もバラし、気になっている事を聞くことにした。
「それでフリンデ子爵ってどんな人?ザビル神官長と一緒に居たステラ神官助手と内緒話をしてたけど、二人とも違う国の人だよね?」
驚き固まっていたカリーナさんは私の2つ目の爆弾発言に、驚き疲れ果てた顔になっているのであった。
「はぁ、今日はホントに驚いてばかりだわ。白の聖女奏様。いったいあなたは何者なの?」
私はその言葉にニヤリと笑みを返した。
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