この素晴らしい探索者がおしおきを!

 私がギルドで頭を抱えながらうごーと唸っていると、いつものおっきい人が慌てた様子でギルドに駆け込んできた。


「冒険者の皆さんは今すぐ武装して正門に集まってください!!!!」


 はぁ、今度は何? 白菜でも飛んでくるの?


 みたいにアホなことを考えてた私の期待は裏切られることとなった。


 正門に集まった私たちの前には、首なしの暗黒騎士みたいな人が同じく首なしの馬に乗ってたたずんでいたのだ。


 ……そして


「わ、わた……私の城に毎日爆裂魔法を打ち込んでくる頭のおかしいヤツはどこ だぁ!!!」


 そしてその人は、ずいぶんとお怒りのようだった。


□■□■□■□


 まぁその人(ベルディアというらしい)の話を3行でまとめるとこうだ。


①最近城に毎日爆裂魔法が飛んできて困っている。


②それをしてるのはどこのどいつだ!?


③バクレツ スルナ。 以上。


 んで、この町の人に爆裂魔法なんてまず使えないので犯人はほぼ1人にしぼられてしまう……


 そう、私の愛するめぐみんに……!


 今はみんなの視線がめぐみんに集まっている。


「めぐみん、大丈夫?」


「え、えぇ。もちろんです……ちょっと行ってきますね」


 そういうと、ローブの裾を翻しながら悠然とベルディアの所に向かっていった。


「俺を攻撃したいなら正面から城に攻めてくればいいだろ!? なのになんでこんな陰湿なやりかたするの?」


 それはまぁ知らなかったってことで許してもらえないかな?


「駆け出し冒険者しかいない町だと見逃してやってれば、調子に乗ってポンポンポンポンポンポンポンポン……」


 それに関してはホントすんません、まぁ知らなかったってことで(以下略)


「あ、ああ……頭おかしいんじゃないの!? お前」


 ムカッ、私のめぐみんを頭おかしいとはどういうことだ……ちょっとネジ外れてるぐらいの方がかわいいだろうが。


「むぅ……我が名はめぐみん! アークウィザードにして、爆裂魔法を操るもの!!」


 瞬間、ここら一帯を静寂が包んだ。え、なんで? かっこかわいいじゃん普通に。


「めぐみんってなんだ、バカにしてるのか?」


「ち、ちがわいっ!」


 あぁそこか。私にとっては前世からキラキラネームな人にいっぱいあってきたからめぐみんぐらい普通だけど確かにおかしいよね。


「私は紅魔族にしてこの町随一の魔法使い。私が毎日爆裂魔法を打ち込んでいたのはあなたをここにおびき出すためだったのです!」


「な、なんだってー!」


「ヒューヒュー! めぐみーん! カッコいいよー!!」


 たまらず歓声を上げる。私が。


 あ、聞こえたみたい。ピースサインくれた。かわいい。


「ふっ、威勢がいいのは結構だが、別に俺は雑魚にちょっかいだしたくてここに来たのではない。しばらくはあの城に滞在するから、爆裂魔法は使うな。いいな」


「無理です」


 即答! まぁ無理だろうね。めぐみん爆裂中毒だし。


「紅魔族は一日一度爆裂魔法を撃たないと死んでしまうのです」


 あ、なんかそれっぽい理由つけたぞこの娘。


「そんなバカな……マジか?」


「マジです」


「そ、そうか」


 信じちゃったよこっちも。


「ならばせめてあの城に撃つのをやめてもらおう」


「無理です」


「な、なぜだ」


「紅魔族は一日一度城に爆裂魔法を撃たないと死んでしまうのです」


「流石にそれは嘘だろ! だまされんぞ俺は!」


 いや、もうだまされてます。大分あっさり。


「では爆裂魔法を撃つのをやめる気はないと?」


「えぇ」


「ふっ、俺は魔に身を堕としたとはいえ元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味はないだが……」


 くっそどうでもいいことだけどあの目がキラーンって光るのカッコいいな。再現したい。


「余裕ぶってられるのも今の内ですよ……せんせー! お願いしまーす!!」


 お、これはもしやこっちに来てから初めてアクア様が役に立つチャンスじゃない?


 多分先生ってアクア様だろうし、ベルディアもみたところアンデットっぽいから流石に勝てるでしょ。あれでも一応女神なんだし、


「魔王軍幹部だかなんだかしらないけど、私がいるからには好きにはさせないわ!」


 おぉ! アクア様がカッコよく見える! もしやこれは夢か?


「ふん、こんな駆け出しの町にいる低レベルなアークプリーストなどに浄化はされぬわ」


 ふふーん、これは勝ったな、風呂入ってくる。


「どれ、ならばそこの紅魔族の娘を苦しめてやるとするか……」


「……あ‘‘?」


 今こいつなんつった? めぐみんを……苦しめる?


 これは聞き捨てならないことを聞いた。もう生かしちゃおけねえ。


「ダクネス、ここでもしものためにみんなを守ってて」


「? あ、あぁ。わかった」


 他のみんなをダクネスに任せ、ベルディアの方へ歩いていく。


 その途中、やつがしてはならないことをしてしまった。


 やつの腕に禍々しいオーラが纏わりついていく。


「汝に、死の宣告を……お前は一週間後に、死ぬ!」


「っ!? あぁぁぁぁぁぁ!!」


「めぐみん!?」


 そのオーラがめぐみんの体に吸い込まれ、絶叫を上げさせた。


「めぐみん、大丈夫!?」


「え、えぇ。体はなんともないようです……」


「ふっ、そいつはまったく苦しみなどは伴わない。だが、一週間後に確実に死ぬ」


 は? めぐみんが……死ぬ?


「精々後一週間、自分がしてしまったことを後悔し反省するんだな」


「っ!? ……」


 めぐみんは自分の死を想像したのか、真っ青になり震えている。


「大丈夫だよ、私がなんとかする」


「サ、ツキ……?」


 ぎゅっと、強く強くめぐみんを抱きしめる。不安にならないように、恐怖に押しつぶされないように。


 こういう呪いは術者が死んでも解けることは無いことが多いけど、恐怖で屈服させて解除させればそれでいいか。まぁ最悪殺しちゃっても別にいいよね。


「もう大丈夫、落ち着いて。私が付いてる」


「わ、私は……死ぬのですか?」


「そんなわけないじゃん。だから大丈夫だよ」


「そう、ですか……ありがとうございます」


 呪文『癒し』を改良して自作したオリジナル呪文『快眠』を使ってめぐみんを眠らせる。


 これでとりあえず、恐怖からは逃れれるだろう。


 さぁ、こっちの番だ。


「おいベルディア」


「なんだ」


「死ね」


『クトゥルフのわしづかみ』を使用。まずはベルディアを拘束する。


「な!? なんだ……これは」


 これは相手を拘束すると同時にSTRを盗み取れるという大変便利な呪文で、唯一の欠点はMP消費が半端ないだったけど、それも無限にあるから完全に克服。つまり最強。


 これによりSTRを20ぐらい吸ったところでベルディアを地面にたたきつける。


「がはっ!」


 自慢の脚力で即座に肉薄しヨグパンチ。使うMPは30。


 ベルディアももの凄い反応速度で剣を使いガードしたが、そんなの関係なしとばかりに殴り飛ばす。


 そしてこいつが吹き飛んでいく先に門を創り、転移先を自分の目の前に設定する。それも地面向きに。


 次の瞬間、門からベルディアが出てきて地面に小規模のクレーターを作った。


 仰向けに倒れているベルディアに近づいていき、話しかける。


「貴様は……一体」


「とっととめぐみんに掛けた呪いを解け、首なし」


「断る」


「あっそ、なら殺す」


「残念だったな、俺を殺してもこの呪いは消えん。それどころか解呪の可能性が完全に消えるだけだ。まぁ俺は魔王軍で最も硬い、殺すことはできないだろうがな」


「知ってる、だから……」


 めぐみんに手を出した罪、万死に値する。


「死ぬより後悔させてやる」


 『深淵の息』を使用。これは相手の肺を海水でみたして溺れさせる呪文……と魔導書には書いてあるんだけど、正確には「相手を溺れさせる」という結果そのものをもたらす呪文だった。


 そのためアンデットで本来呼吸を必要としない(と思われる)ベルディアを窒息という私の経験した中で最も苦痛が大きい状態にすることができる。


最初は特になにも感じていなかったようだが、次第に息苦しさに気付き今では酸素を求めてもがいている。


 1分ほどしたら呪文を解除し、ベルディアを開放する。


「かっ……ハァ、ハァ……」


 四つん這いになり息切れしているベルディアを下から蹴り上げる。


 クトゥルフのわしづかみでSTRを約20吸っているためかよわい私でも鎧を蹴り上げることができる。


 そして呪文『視覚を奪う』を埋め込んである石をベルディアに当てる。


 この呪文は本来丸一日の儀式を必要とする呪文だが、それも先に儀式をして使い捨て魔道具みたいにすればすぐに使える。


 まぁ石とかに呪文を埋め込むなんて普通はできないんだけどね。


 そんで、視覚を奪ったら落ちてきた所に門を創ってワープする。


 行き先は海。アンデットって水が苦手な場合が多いし何より鎧じゃ絶対沈むからね。


 勝ったな! ガハハ!


 え、何? フラグっぽいって? いやーないない、だって今ベルディア絶賛沈み中だし流石に殺せるでしょ。


 あれ? なんか忘れてるような…………はっ!? そうだよ! 殺したら呪い解けないじゃん!!


 え、ちょ、やば……めっちゃ沈んでるんですけど!?


 どこー!? 首なしどこー!?


 イルカを召喚&仲良くなって探しにいかせる。


 十数秒で首なしが浮いてきた。


「よ、よかったぁ……ありがとね、君たち」


 キュイキュイとイルカたちが返事をする。かわいい。


 お礼に呪文『魚を引き付ける』っていうのを使う。


「みんなー、餌だよー」


「「「きゅいー♪」」」


 うんうん、喜んでくれたならよかった。


 さてと、みんなの所に戻ろっか。


 あ、よく考えたら首はあっちにあるしそこまで急がなくてもよかったかも。


 まぁいっか。気絶はしたみたいだし。

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