第884話 少し見ないあいだに、大きく見違えましたな
「ふむ、第3と第4小隊……既にどちらも揃っているようだ」
「ハハッ! こっちも準備万端ってトコだな!!」
「ほうほう、さすがメイルダント家の兵たちだ……皆、見事な面構えをしている」
「うん! なんたって、メイルダント領軍は精強だからねっ!!」
今回ワイズが指揮することになっている第3と第4小隊の皆さんが待機場で整列していた。
絶対ってわけではないみたいだけど、この王国の傾向として部隊名に小さい数字を冠しているほうが格上となっていくようだ。
というのも、宮廷とか王国の魔法士団や騎士団の団員の振り分け方で、実家が上位の貴族ほど一番隊とか二番隊に入れられるようで、その流れによって隊ごとの序列というかエリート意識みたいなものが形作られていっているようなのだ。
また、そうした中央部の形式に倣ってというべきか、それぞれの領地で組織されている軍でも似たような振り分けになる傾向があるらしい。
そんでもって宮廷とか王国の魔法士団や騎士団では、一番隊や二番隊に安全かつ見栄えのいい任務が与えられているのだろう。
まあ、そういう団員の振り分けを決めるのも上位貴族出身のお偉いさんだろうし、そりゃ自分らの身内に有利なように取り計らおうとするのは当然だろう。
といいつつ、上位貴族出身者に下手に殉職とかされると後が面倒になるだろうから、そういうややこしい連中には名誉を与えておいて、安全なところに隔離しておくって意味もあるのかもしれない。
だって……ねぇ?
ほら、超上位の貴族から「なぜッ! なぜ儂のかわいい孫が命を落とさねばならなかったのだッ!!」とかって団長や隊長さんたちが詰められている姿が容易に想像できちゃうもんね……
そしてこれが下位貴族や……もっというと平民出身者なら、団長や隊長さんたちとしても簡単に黙らせることができちゃうんだろうなぁって感じだ。
あと、こうした数字による序列もありつつ、専門性によって特化された部隊も組織されているようなので、そういうのは少し扱いが異なってくるようでもある。
というかこの場合は、むしろ専門家集団サイドのほうが序列を気にしないんじゃないかと思うね……なんというか、ゴーイングマイウェイ的な?
とまあ、そうしてワイズに預けられることになったのは第3と第4小隊である。
これは実にちょうどいいのではないだろうか。
おそらく第1や第2小隊の隊員は実家の爵位がそれなりだったり古参だったりという者が多く、現段階では正式な後継者となっていないワイズには扱いづらい小隊だろうからね。
というのが、いくらメイルダント家の長男でも、彼らは「若輩者」って目でワイズを見てくるだろうからさ。
そこで第3や第4小隊の面々を軽く眺めてみたところ、それなりに若そうな隊員が多く、それでいて身体から発せられる魔力の感じもなかなかのものがあって、確かな実力が期待できるわけだ。
それに何より、ワイズに対して親愛の念のこもった魔力を発しているので、かなり指揮がしやすいだろうと思われる。
要するに、ややこしい隊の管理はソニア夫人が引き受け、ある程度若手の部類に属する実力者たちを預けられたって感じだろうね。
まあ、もちろん第3や第4小隊の隊長など階級が上であろう人たちはそれなりに年齢を重ねているようだけどね。
そんなことを思っていると……
「ワイズ様……少し見ないあいだに、大きく見違えましたな」
「ええ、まさしく! これなら今日だけと言わず、そのままずっと我々の指揮をすることもできるでしょう!!」
「ふぅむ……風のウワサで『今年の1年生は優秀だ』と耳にしておりましたが、とても強力なライバルたちと切磋琢磨することができたご様子」
「そうさな! 実に頼もしい限りだ!!」
「おうとも! 学園卒業後が楽しみだよ!!」
「そして此度の領内に起こりつつあった危機を一早く察知なさったというご活躍……誠、お見事にございました」
「とはいえ……それは本来であれば我々が第一に気付くべきことであったろうに、面目次第もありませぬ……」
「いやいや、私も単なる違和感でしかなかったからな……こちらのアレス殿がおられなければ、おそらく見逃していただろう……」
「ほう! こちらが、あのソエラルタウト家のご子息であらせられるか……」
「おおっ! 王国一の勢いがあると名高いソエラルタウト家の……!!」
「そして何より、奥様が心酔なさっておられる……あのお方のご子息……」
「小官も腕には少々覚えがありましたが……こうして何気なく立っておられるだけで、小官とは隔絶した実力がおありなのだということがヒシヒシと伝わってきます……」
「な、なるほど……これは奥様が心酔なさっておられるのも納得というものですな……」
「ああ……若様も大変なお方と友誼を結ばれたものだ……」
「だが、それだけにメイルダント家の未来も明るい」
「うむ、違いない」
これでも一応俺は、普段から体外に放出される魔力の圧を抑えめにしている。
しかもこういう場面では、無用な威圧感を相手に与えないため特に気を遣うようにしている。
それなのに俺の濃密な魔力を感じ取ることができたということは、この小隊の皆さんもなかなかの実力者揃いということになるわけだ。
これは作戦行動を共にするにあたって頼もしい限りだね。
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