第883話 どうだ、準備に抜かりはないな?
「装備、装備、装備~っ! 装備を固~める~っ!!」
メイルダント家の皆さんが俺に用意してくれた部屋にて、ゴキゲンで着替え中の俺であった。
まあ、客観的に見れば、戦闘を生業にしていない民間人の集まりであろうベイフドゥム商会の一斉摘発に対し、「ここまでの準備は過剰だろうに……」って思われてしまうかもしれない。
でもね、マヌケ族の影がチラついているからには、こちらも準備を怠るわけにはいかないのさ!
ただまあ、メイルダント家は武門のお家柄ゆえか、その辺に関しての甘さはないといえるだろう。
そんなわけで、今回俺たちと作戦行動を共にするメイルダント領軍の小隊の皆さんもガッチガチに装備を固め、甘さの一切ないブラック無糖な集まりとなっているに違いない。
あと、ついでにいうとすれば今回はワイズが指揮をし、タム君まで同行するという状況……これはつまり、将来のメイルダント子爵の前で活躍を見せる大きなチャンスでもあるわけだ、ここで燃えなきゃウソでしょって感じである。
といいつつ、張り切り過ぎるあまり空回りしなければいいのだが……
いやまあ、その辺のところについても日頃から訓練しており、メンタル的に整えられているんじゃないかとは思うけどね。
なんてことを頭の片隅で考えながら、平静シリーズのインナーウェアとジャージをを身に付け、その上に鎧を重ねていく。
また、常に手入れは欠かさないようにしているが、今回は出番があるかもしれないトレントの木刀……略してトレン刀のミキオ君と、トレントのマラカスであるミキジ君とミキゾウ君をひと磨きしておく。
まあねぇ……最近は武闘大会とかで忙しくてさ、あまり派手に暴れ回ることができるような機会がなかったもんねぇ……
いや、そうはいっても、時間を見つけてモンスター狩りなんかもしてはいたけどさ……
ただし、仮にマヌケ族が出てきたとしても……ミキオ君のフルパワーで戦うのは、ちょっと無理かもしれない。
だって、本気で蹂躙モードを使うとさ……きっと、問答無用でマヌケ族を霧状にして終わりになっちゃうだろうから……
それだと、捕まえて情報を吐かせるってことができなくなってしまうもんね。
いやまあ、このタイミングで出て来るのはどうせ末端の奴だろうから、大した情報も持ってないとは思うけどね。
加えて、自滅魔法で縛られてもいるだろうから、マジで情報を吐かせるのは至難の業となってしまうだろう。
とまあ、情報がどうのこうのといっておきながら……俺自身、正直なところ以前失敗した自滅魔法の解除に再チャレンジしたいって気持ちのほうが強いかもしれない。
いやぁ、手応え的に「あとちょっとなのに……!!」って感じがあったからさぁ?
まあね、そのあとちょっとが一番の難所なのかもしれないけどさ……
ただ、だからこそ挑戦し、見事達成したいって思わずにはいられないんだ。
やっぱりね、この挑戦者マインドっていうのは、とっても大事なものだと思うんだよ。
これがなければ、俺は現状で満足して終わってしまうかもしれないし……そんな未来はノーサンキューなんだ。
「フッ……我は偉大なる挑戦者たらんと欲する者なり……」
そんな呟きを一つしながら、ついに俺の準備は整った。
ポーションなんかもすぐ使えるようベルトにセットしてあるし、当然マジックバッグ内のストックぶんについても確認済みである。
これで自分はもちろん、味方の緊急事態にも対処可能であろう。
「さて、それでは行くかね……」
そう言って俺に用意された部屋から出て、ワイズの部屋へ向かった。
「おお、アレス殿も準備が整いましたか……」
「学園都市からの移動中も同じように装備自体は固めてましたけど……やっぱ『これから実戦だ!』って思うと、心身ともに引き締まる感じがしてくるってもんですよ! まっ、相手がベイフドゥム商会の連中なんで、そこまで荒っぽいことにはなんないかもしれませんけどね!!」
「うむ……捕まえられるとなったら、彼らも抵抗を試みてくるかもしれんからな……ただ、なるべくなら穏やかに済ませたいものだ……まあ、穏やかに済めばいいが……」
「ええ、我々としても余計な戦闘は極力避けたいところですからね……」
「まっ! 任務完了まで気を抜けないってことっすね!!」
「うん! 気を抜けないっ!!」
俺たちの会話の中に、最後に到着したタム君が加わってきた。
「タムも来たか……どうだ、準備に抜かりはないな?」
「うん! バッチリだよっ!!」
「ほ~う? まだまだちっこい割に、タムもなかなか様になってんじゃねぇか、このこの~」
「あったり前でしょ! 僕だってメイルダント家の男子なんだからねっ!! それから……痛くはないけど、音がガシャガシャ鳴ってうるさいから、背中を叩くのやめてもらっていい?」
「あぁ~? お前の鎧に不具合がないか確認してやってんだ、ありがたく思いな!!」
「えぇ~っ!? ウソっぽ~い!!」
「ふむ……見た感じも、鎧が奏でる音色的にも、なんら問題はなさそうだね」
「ですよね、アレスさん! ほら~っ、だからさっきバッチリだって言ったんだよ~っ?」
「あ~はいはい」
「さて……これで4人揃ったことですし、そろそろ隊の者たちと合流しましょうか」
というわけで、これから小隊の皆さんの待機場に向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます