第882話 万全を期して平静シリーズは2つまで
「さて、朝食はこれぐらいとしましょうか……」
「おっ! ついにって感じだな!?」
「ドキドキしてくるよねっ!!」
「装備をしっかり整えて万全の状態で作戦行動に当たろうじゃないか……そこでタム君、鎧等はタム君専用に作られたものを装備すればいいと思うけど、インナーウェアなんかは平静シリーズを身に付けたらいいと思うよ。というのが、平静シリーズは2つまでなら魔力操作に影響しないし、防御力はなかなかのものがあるからね」
「そっかぁ! 2つまでは大丈夫なんだぁ~っ!!」
「普通のインナーウェアを身に付けるより安全性がぐっと高まりますからね……我々も2つまでは平静シリーズのお世話になりたいと思います」
「まっ! アレスコーチなら3つやそこらじゃなんの影響もないレベルだとは思いますが……今の俺らだと魔法の発動に手間取るわけにはいかないんで、やっぱ2つまでになっちまいますね!!」
「いや、どんな強敵が現れるか分からないからな……俺も万全を期して平静シリーズは2つまでにするつもりだ」
実際にいるかどうかは分からないけど、マヌケ族の工作員がベイフドゥム商会に紛れ込んでいないとも限らないからね。
いやまあ、工作員レベルの奴だとマヌケ族の中でも実力下位とか、戦闘能力より隠密能力のほうが高いってタイプのようだから、そういう奴を相手にすることを考えれば、3つや4つぐらいのシリーズ効果ではそこまで戦闘の足枷にならないとは思うけどね。
ただし、そうやって舐めてかかって痛い目を見るのは、まっぴらごめんだからさ……
そんなわけで、俺にとって一番向いている魔法戦闘を阻害するようなことは避けようってことなんだ。
それに、タム君の身の安全をソニア夫人と約束しているからね、なおさらなんだ。
「……えぇっ! アレスさんですら、そこまで慎重になるものなのっ!?」
「確かに……我々と比べて、アレス殿には余裕があるだろうと思っていましたが、そうですか……その心構え、誠にお見事です」
「たぶん、普通の奴なら『たかが商会ごときに、何をそこまで……』なんて思っちまうところなんだろうけど……実はアレスコーチの一番恐ろしいところは、そういう慎重さなのかもしんないっすね!!」
「いやいや、俺も抜けているところが多いさ……まあ、だからこそ自分で気付くことができている部分については事前に準備しておこうと思うわけだ」
「なるほど、自分で気付くことができている部分には事前に対処しておくぐらいでちょうどいいというわけですか……」
「ふぃ~っ……アレスコーチに置いて行かれないようにするためには、慢心している暇なんてなさそうっすね!!」
「そっか……うん! 僕もそういう慎重さを持ってこれからやっていくことにするっ!!」
「まあ、それだけ慎重にやっておいてすら、不測の事態というのは起こるものだからね……そのときはそのときで、淡々と対応していくしかないのだろう……」
といいつつ、その淡々と対応することこそが難しいんだろうとは思うけどねぇ……
やっぱり、感情ってものはどうやったって影響してくるものだろうし……
まあ、だからこそ合言葉は「平静」ってなるわけなのさ!!
「それで、身体の中心部を守ることを考えれば、やはりインナーウェアは確実として……あともう1つは何を選ぶかですね」
「そうだなぁ……やっぱ首の隙間をガードするためにも、ネックウォーマーが一番なんじゃねぇか? まっ、季節も冬に入ってきたことだしな、寒さ対策の面でもアリだろ」
「う~ん……インナーウェアの上にジャージを重ねて、その上に鎧っていうのも防御力が高そうだよねっ?」
「ふむ……確かに首を刎ねられたら行動不能に陥ってしまうからな、ケインの案も納得だ。そして魔臓を一番に守ることを考えれば、タム君の組み合わせも正解だろう」
ただまあ、この世界では仮に首と胴体がサヨナラしてしまっても、魔臓が無事で完全に昇天してしまう前に最上級のポーションが間に合えばギリギリセーフの判定にしてくれるみたいだけどね。
それから、どうやら男はだいたい魔臓の位置が下丹田にあるみたいなので、防御力の高い平静シリーズのインナーウェアとジャージで二重に守るのはナイスな選択といえるだろう。
「そうですね、ジャージの襟を立てれば多少は首のガードにもなるでしょう……そう考えると、やはりタムの案で行くべきか……そして、兜の下にニット帽を重ねるだとか、フットワークのために中敷きを入れるなんて選択も魅力的だとは思うのですが……うぅむ、2つだけというのもなかなか厳しいものですね」
「まあ、味方がいるんだったら、魔臓さえ無事ならポーションでどうにかなるっちゃなるかもしんねぇもんな」
「俺もしっかり武器を持っていられるよう、手袋を選びたい気持ちもあるにはあるんだがなぁ……」
「でも、魔臓を守るのが一番大切だもんねっ!!」
とまあ、そんな感じで俺たちは今回、タム君の考えた組み合わせで行くことで一致した。
いや、別に全員で揃える必要もなく、それぞれ好きに選んでもいいわけだけど……やっぱり、魔臓の防御を蔑ろにはできないもんね。
そんなこんなで朝食を終えた俺たちは、出撃の最終準備をするためにそれぞれの部屋に戻ったのだった。
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