第854話 時間との兼ね合い……かねぇ?
「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております」
「うむ、そのときはよろしく」
また1軒、調味料を購入してきた。
加えて、ここでもよさげなお茶を扱っていたので、併せて買うことにしたのだった。
そしてもちろん、今回買った品物に吸命の首飾りの反応はない。
まあ、ベイフドゥム商会の息がかかってなさそうな店だったので、ほとんど心配はしてなかったけどね。
しかしながら、ここの店主らしきオッサン……というにはちょっと若いかな? とりあえず、店の人から苦労している感じは滲み出ていたので、そういった観点からいたたまれない気持ちになってしまう。
うん……ひょっとすると、そういう苦労している感じが、老けて見えてしまった原因かもしれないな……
そんなことを思いつつ……今のところで、この街にある店はだいたい回ることができたかな?
となると……そろそろ次の目的地へ移動するとしようか……
そう思って、地図を改めて広げて見てみた。
「ふむ……街らしい街といえば……ここが最後だったと言っても過言ではない……かな?」
まあ、俺が進んでいる中央ルート上には、ほかにも人々が集まって生活を営んでいるであろう地域があるにはある。
とはいえ、地図で見た感じそこまで大きくはなさそうなんだよね……まあ、村にしては大きいかなってぐらいの印象だ。
それぐらいのレベルなら、調査対象から外してしまっても構わないかもしれない。
少なくとも、ベイフドゥム商会は出店していないだろうし……
「あとはそうだな……時間との兼ね合い……かねぇ?」
そして時間を確認してみたところ、午前11時半といったところだ。
「う~ん……急げば待ち合わせ時間に間に合うか……であるならば、行っとくのもアリかな……」
なんてことを思案しながら歩き……そうしているうちに街の正門に着き、外に出た。
「まあ……とりあえず、移動中にカッ飛ばすことは変わりないし……村が見えてきた辺りで最終的な判断をすればいいか……というわけで、またよろしく! フウジュ君!!」
そんな感じでウインドボードのフウジュ君に一声かけて、再び空の旅を始める。
まあね……このルート上にワイズの想い人であるミカルって子がいる村があれば、ちょっくら立ち寄ってどんな子か見ておいてもいいかもしれないけどねぇ……?
でも、ミカルって子がいる村は、今回の待ち合わせ場所より向こう……もっといえば、領都よりさらに北西側にあるらしいからね、ついでに寄ることはできないのさ。
となると、おそらくミカルって子より……領都にいるであろうトードマンを先に目にすることになりそうだなぁ。
なぜなら、ベイフドゥム商会の本店は領都にあるみたいだからね。
ただまあ、先ほど立ち寄った街の女子たちがウワサしていたように、トードマンの放蕩息子ぶりは領内でまあまあ知られていることのようだからね……もしかしたら領都にはおらず、どっかに遊びに行っていてもおかしくはないかもしれない。
なんたってトードマンは、でっぷりとしたトードボディに似合わずフットワークが軽いようだからね。
だって、そうじゃないと、領都にいないはずのミカルって子の存在をどうやって知ったんだってことになるわけだし? きっと、あっちこっち遊びに行っているあいだに見かけたに違いない……
ああ、いや……もしかしたら「ミカルっていうカワイイ村娘がいるらしい……」ってウワサが地味に男たちの間で広まっていたのかもしれないけどね……それで、「そんなにカワイイなら……どれ、ちょっくら見に行ってみっか!?」って感じでトードマンが行ってみたら、余裕で一目惚れ……みたいな?
あとは、そうだな……発想が全く逆で、実はミカルって子が親か誰かについて領都に来たことがあって、それをたまたまトードマンが見かけたって可能性もなくはないか……
まあ、なんにせよ……そう遠くないうちにトードマンの真実の姿を目の当たりにすることになるだろう。
それで本当にトードボディだったら……俺は笑わずにいられるだろうか?
そこで「予想どおりにも程があるだろ! 少しはヒネれよ!!」って、思わず吹き出してしまうかもしれない……
いや、トードマンサイドからしたら、「そんなん言われても、知らんがな……」ってなっちゃうかもしれないけどね……
とにかく、俺のクールなイメージを崩さないためにも、その辺のところは気を付けておかねばなるまい。
そんなことを考えているうちに、木や植物ばかりの風景から変化が現れ、建物らしき人工物が目に入ってきた。
「ふむ……そろそろ村ってところか……」
そして時間は……11時40分ってところか……
たぶん、あの村に立ち寄ったとしても、待ち合わせ場所に間に合うとは思うが……それでも、ギリギリにはなってしまうだろうな……
なんていっておきながら、きっかり12時じゃないとダメってわけでもないんだけどね……
どんなアクシデントが発生するかも分からないし、だいたい昼頃を目安にってぐらいの緩い決まりでしかないわけだし……
まあ、仮に遅くなったとしても、ちょっとぐらいなら許容範囲か……
それに、ワイズやケインも遅くなる可能性もあるわけだし……
そんなこんなで、この調査のラストとして街一歩手前ぐらいの村にも立ち寄ってみることにしたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます