第851話 抜群の効率性で

 早速、ベイフドゥム商会の支店に足を踏み入れてみたところ……うん、当然というべきか、やっぱり店内も活気があるね……

 俺がここまでに回ってきた店では、ここまでの活気はなかった。

 まあ、「常連の誼で来てます……」みたいなお客さんがちょびっといたかなって感じだ。

 それから、内装自体も比較的新しく、売り場の面積も広めな気がする。

 こういったところからも、ベイフドゥム商会に勢いがあるってことがよく分かるといったところだろうか。

 そんな感じで店員たちも忙しかったのだろう、入店時に声をかけられることもなかった……ていうか、たぶん俺の存在に気付かれてすらいなかったんじゃないかと思う。

 ……なんてことを考えていると、「クレーム気質」って言われちゃうかな?

 とりあえず、俺は店員の接客態度を採点しに来たわけではないので、さっさと目的の物を購入して店を出るとするかな……それにこの様子だと、のんびり店員と世間話をする余裕なんてあるはずもないだろうしさ。

 そうして、一際お客さんが集まっている調味料コーナーに向かう。

 そしてそこには、「皆様の暮らしを価格で応援!」とかそれっぽい文言が貼り出されながら、砂糖とか塩みたいな基本的な調味料がズラリと並んでいる。

 まあ、その中でも塩は不作とあんまり関係なさそうだけど、それはそれって感じだろうかね……

 それでまあ、価格は確かにほかの店より安い。

 さすがに半額とまではいかないようだが……それでも、3割ぐらいは安いんじゃないかと思う。

 そこで、メイルダント領では調味料の消費量が多いという話だったが……それは確かなようで、こうして見ているあいだにも次々と売れていく。

 とりあえず、ほかのお客さんたちをイラつかせないよう、俺もさっさと手に取るとしますかね……

 こうして調味料を手にしつつ、会計へ向かう。

 というのも、この店は客の多さもあってか、商品は自分で手に取って会計に来いってシステムのようだからね。

 ほかの店だと、店主らしきオッサンに「あれが欲しい、これが欲しい」って会話しながら購入って流れが基本って感じだったからねぇ……

 この辺のところは、前世のコンビニとかスーパーを思い出すって感じかなぁ?

 ああ、でも……俺が転生する頃ぐらいになると、前世ではセルフレジとかがどんどん導入され始めてたっけ……

 俺がこっちに転生してきてから多少時間も経ったことだし、今はそれがさらに進んでたりするのかなぁ?

 といいつつ……こっちと向こうで、時間の流れが同じかどうかは分からないけどさ……

 そんなことを適当に考えているうちに、俺の会計の番がきて……


「ありがとうございました~次にお待ちのお客様、どうぞ~」


 抜群の効率性で支払いが終わった。

 まあ、無駄話なんかしてる余裕はないもんね。

 そんな感じで店を出た。


「さて、これがベイフドゥム商会で扱われている調味料か……」


 そうして、ある程度進んだところで、買ったばかりの調味料を魔力で調べてみると……


「ふぅむ……アタリだな……」


 吸命の首飾りらしき反応があった……

 まあ、この街の支店だけが……って可能性もなくはないけど、たぶん全店アウトだろうなぁ……

 とりあえず、これだけでトードマンの件は吹っ飛ぶことが確実だといえるだろうと思う。


「ハァ……喜んでいいやら、悪いやらって感じだなぁ……」


 思わずそんな言葉も漏れてしまった……

 だって、これでワイズの恋路の問題がひとつ解決できるとはいえ、別の問題が浮上したってことになるわけだからなぁ……

 そして、これだけガンガン吸命の首飾りの粉末入り調味料が出回っているとなると、そうかからないうちに健康被害も表面化してくるだろう……

 そうなる前に、光属性の得意な魔法士を集めて領民の体内に溜まってしまった粉末を除去しなければならない……こりゃなかなか大変だぞ……

 しかも、領主の権限でベイフドゥム商会が扱っている調味料の販売を停止したとなると……経済的な事情から、それなりに領民から文句も出てしまうだろうしなぁ……

 ああ、そうか……マヌケ族の奴ら……仮に吸命の首飾りによるエネルギー収集が失敗に終わったとしても、そうやって領民の不満を溜めて、反乱を煽るって二段構えの作戦を計画していたってわけか……まったく! なんてクソ野郎共なんだ!!

 こうしてマヌケ族の卑劣な作戦に憤りを覚えつつ……この街でやることは完了したので、そろそろ次の街へ移動しようと思う。


「それにしても……やっぱり、ちょっとゆっくりし過ぎたかもしれんね……」


 そんな独り言を呟きつつ中央通りを早歩きで進み、そうして街を出た。


「さて、フウジュ君……今日もよろしくね!」


 なんてウインドボードのフウジュ君に一声かけて、空に舞い上がった。

 そして、この移動は俺1人だけだし、特に気を遣うこともなくスピードを出すことができるだろう……ああ、いや、飛んでる鳥にぶつからないようにだけは気を付けなきゃかな?

 まあ、そこは注意しながらでも、思いっきりカッ飛ばせば、次の街にアッという間に着くことができるだろう。


「てなわけてで、レッツ! ゴー!!」

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