第845話 ひとつ試してみましょう……

「光属性の魔力を……イメージして……」

「う、うぅ~ん……たぶん、こんな感じ……かな?」

「よしよし、2人から光属性の魔力を感じることができているぞ……その調子でいこう」

「……はい」

「っしゃあ!」


 体内に取り込んでしまった吸命の首飾りの粉末を消滅させる作業に取りかかった2人。

 まあ、実物を肉眼で見ながらではないので、そのぶん難易度が高くはなってしまうだろう。

 それでも、これが2人の成長につながる機会となれば言うことなしだろう。


「消すべき物体の形状は、この小瓶の中に入っている粉末と同じもの……大丈夫、イメージはできている……」

「ああ、そしてどんなふうに俺たちからエネルギーを奪おうとするのかも、さっき理解した……やれるはず!」


 一応、2人が誤って内臓を傷付けてしまったとしても問題ないよう、回復魔法の準備だけはしておくとするか……

 まあ、それは杞憂に終わるだろうけどね。

 なぜなら、移動中に俺の光属性の魔力をたっぷり味わってきたんだからさ、それである程度は慣れているはず!!

 こうして、作業は進んでいく……


「……ふぅ……っ……おそらく……これで完全に消し去ることができたのではないかと、思われます……」

「ふぃ~っ……俺もだぁ! 身体の中で『コレは!?』って思うやつを1つずつ……マジで1つずつチマチマ消してったから、マジでしんどかったぜ……!!」

「おお、終わったか、ご苦労さん! そして、ふむ……どうやら2人とも、完璧にやりきったようだな!!」


 かなり真剣に取り組んでいたのだろう……2人とも汗びっしょり。

 まあ、それだけ集中力を要する丁寧な作業だったということだろうね。

 そんな2人に、清潔と浄化の魔法をかけてやった。


「おそらくですが……この清潔や浄化の魔法を見本として何度もかけてもらったのも、我々が今回の作業を上手くやれた理由の一つだと思います……」

「そうそう! なんつぅか、汚れをキレイにするってイメージで消してやったぜ!!」

「ほう……であれば、そろそろ2人も清潔の魔法を実際に使えるようになっているかもしれないな」

「清潔の魔法ですか……ひとつ試してみましょう……」

「んじゃ、俺も!」


 そうして2人は、適当にその辺の物品を見繕って清潔の魔法を試してみた。


「う、うぅむ……時間が……かかりますね……」

「俺もだ……一応、キレイにはなってると思うんだけど……メチャクチャ遅ぇ……もっとこう! アレスコーチみたいに、パパッとピカッとキメてぇんだけどなぁ!!」

「ふっふっふっ……俺レベルになるためには、まだまだ修行が必要ということだな! とはいえ、光属性が苦手で今まで使うことができなかった清潔の魔法を速度はともかく、発動させることができたのだ! 途轍もない進歩じゃないか!!」

「そ、そう……ですね……」

「へへっ、そう言われると……なんだか照れちまうぜ」

「それに! 形ができたなら、あとは何度も練習しているうちに慣れて、発動速度も上がっていくことだろう!!」

「あとは我々の練習量次第……か……」

「うぉぉぉっ! さらに燃えてきたぜぇぇぇぇぇっ!!」


 あと、もしかしたらだけど……体内に入った吸命の首飾りの粉末を消滅させるって作業の経験が遅さにつながった可能性もあるな……

 先ほどのじっくり丁寧に取り組んだ作業と同じような感覚で清潔の魔法を使った……それで過剰ともいえる丁寧さが遅さの原因になったって感じ。

 ただまあ、このことを指摘して、変に2人の魔法が雑になってもいけないだろうから、あえて今回は言わないでおこうかな。

 とかなんとかやっているうちに、だいぶ時間が過ぎていたようだ……


「ふむ……明日は調査で忙しくなりそうだし、話はこれぐらいにして、あとは魔力交流をして寝るとしようか」

「おっと、もうこんなに時間が経っていましたか……」

「おお、マジだ……まあ、今日は衝撃的な出来事が起こっている事実に気付いちまったし……俺ら自身の光属性のレベルアップなんかもあって、盛りだくさんな1日だったからなぁ……なんつぅか……ここ数日だけで、数年分の経験を積んだような気がしてくるぜ……」

「フッ……これから、まだまだたくさんの経験を俺たちを積んでいくことになるだろう……それをどんどん! 成長の糧にしていきたいものだな!!」

「ええ、そうですね……」

「そこでまずは、ここ! メイルダント領で起こっている問題をバッチリ解決しなきゃっすね!!」

「ああ、苦い経験にはしたくないからな」

「お2人とも、重ね重ねお世話になります……」

「ハハッ! 俺たちの仲だろ? そう畏まんなって!!」

「それにこの先、俺たちがワイズの世話になることもあるだろうからな……今回はたまたまワイズが世話になる番だったというだけのことだ」

「はい……そのときがきたら、今度は私がお2人の助けとなります」

「おう! そんときは頼りにしてるぜ!!」

「よし、ワイズの頼もしい意気込みを聞かせてもらったところで……魔力交流を始めるとしようか」

「はい! 今夜は光属性の魔力を強めでお願いします!!」

「そうだな! 俺もさっきので、光属性のいい流れがきてる気がするぜ!!」

「よしきた! 濃度アップで送ってやろうじゃないか!!」


 こうして、夜が更けていくのだった。

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