第837話 やっぱり関わりを自慢したくなりますって!!
宿屋、そして街から出て、ようやく出発といったところ。
「それでは、今日もお世話になります」
「俺らもできる限り頑張るんで、よろしくです! アレスコーチ!!」
「うむ、こちらこそよろしく」
そうして、今日も俺たちはウインドボードに乗り、空の旅を始める。
また、昨日話したとおり、今日はペースを優先しようということになっている。
……とはいったものの、光属性の扱いに慣れる練習もしておいたほうがよかろうということで、昨日と同等かちょっと少なめぐらいの割合で光属性も混ぜて俺からワイズとケインに魔力を送るってことに決まった。
まあ、あまり余裕はないが、それぐらいのペースで飛んでもメイルダント領内に着くことはできるだろうとの判断からである。
それに、「どうやら、このままのペースでは着きそうにない……」と感じた段階で無属性マックスに切り替えてもいいし、なんだったら風魔法を後方から吹かせて追い風にするのもアリだ。
そうした選択肢もまだある状態にして、可能な限り練習も両立した旅となるようデザインしているといった感じだね。
「フゥ……少しは慣れてきたつもりではありますが……それでもやはり、楽とは言えませんね……」
「だよなぁ……でも、一昨日に比べたら……精神的にはだいぶ元気に飛べている気がするぜ……」
「そうだな、俺から見ても、2人はしっかり成長していると言えるだろう」
「アレス殿にそう言ってもらえると……まだまだ頑張れそうな気がしてきます」
「おうよ! 俺たちの限界を少し……また少しと引き上げていってもらってるって感じがするぜ!!」
「フッ……それもお前たちの向上心、もしくは根性あっての成果だろう! 実に素晴らしいことだ!!」
まあ、俺が足りない魔力を補っているとはいえ、こうやって限界ギリギリでずっと空を飛び続けるっていうのはなかなか大変なことだろうからね……それに、この風景が流れ続けるだけって状況に飽きも感じてきちゃうだろうしさ……
そんな感じで飛行を続けるうちに昼の時間がきた。
「よし、そろそろ昼食としようか……向こうに見えている街で降りるとしよう」
「承知……しました……」
「もうちっと……頑張れ、俺……ッ!」
「……ほら、どんどん街が大きく見えてきたぞ? あと少しで昼休憩だ! それまで踏ん張れ!!」
「あと……もう少し……!」
「……行ける……ぞォ……ッ!!」
そして、なんとか無事到着。
「ほい、お疲れさん! 頑張ったあとの昼食はカクベツだぞ!!」
「ハァ……フゥ……な、なんとか……!」
「よっしゃ、今回も……へたり込まずに……済んだ……ぞッ!!」
「うむうむ、ナイスガッツ! そんな2人に惜しみない拍手を贈ろうじゃないか!!」
また、今回も汗だくな2人に清潔と浄化の魔法をかけてやった。
「毎度毎度……かたじけない」
「どうもっす! いやぁ、改めて思うことですけど……アレスコーチは俺たちに魔力を送りながらここまで来たっていうのに、全然余裕って感じで、ホント凄いっすね!!」
「まあ、俺自身の努力もそれなりにあるつもりではあるが……それでもやはり、この保有魔力量の豊富さは母上のおかげだな」
「私の母も世代が同じだったこともあって、アレス殿のお母上を慕っていたようです……そこでこの夏は、アレス殿のご活躍を耳にして懐かしさが強まったのか、母からよく思い出話を聞かされましたよ」
「そうそう! 俺んとこもそんな感じでしたね!!」
「そうか……母上のことを想ってくれて、息子として嬉しく思う」
「そして私も将来……母と同じように、自分の子供に『アレス殿と共に旅をしたことがある』と語る日がくるかもしれません」
「ハハッ、そいつはいい! 俺も思いっきり自慢してやろ~っと!!」
「自慢だと? おいおい、俺は中央のお偉いさん方に嫌われがちだし、学園でも陰口を叩かれている男なんだぞ? それで自慢なんかできるかねぇ?」
「フフッ……できますとも」
「そうですよ! アレスコーチは単なる才能だけの人なんかじゃなく、努力をできる人なんだから! これからさらにデカい男になっていくはず! であれば、やっぱり関わりを自慢したくなりますって!!」
「ふむ……それなら俺も将来、お前たちとの関わりを自分の子供に自慢させてもらうとしよう」
「えぇっ!? 我々のことを!?」
「そ、それは過剰な期待ってもんですけど……でも、そっか! こうやって旅をしながら鍛えてもらってるんですから、俺たちだって頑張んなきゃっすね!!」
「うむ、そういうことだ」
「アレス殿の期待に、どうにか応えたいものだ……」
「まっ! とりあえずワイズはミカルって子と上手くやるのが第一だな! そんでもって、アレスコーチの尽力のおかげでワイズたちは結ばれ、いつか生れてきた子供に『そうして生まれたのがお前だ』って語ることになるわけだ!!」
「……ッ!? お、おい! 気の早いことを言うものではないだろう!!」
「ハッハッハ! ワイズとミカルが結ばれた場合、確かに俺とケインがいくらか関わったことになるわけだもんな! これは面白い!!」
「ですよね! まっ、そんなわけでワイズは、こんなところで赤面している場合じゃなくて、明日か明後日か……とにかくしっかりキメるんだぜ!?」
「う、うむ……」
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